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学ぶと働くをつなぐ授業拝見[Clip Number 004]福岡工業大学×学内各研究室

福岡工業大学全1年生必修科目「キャリア形成」

2017/02/01  タグ: ,  

社会での実践力に焦点を当てたアクティブラーニング

福岡工業大学では、「実践型人材〜自律的に考え、行動し、社会で活躍することのできる人材」を人材育成目標に掲げている。そのためには、下記の図のように、6つの要素が必要だとしている。FIT_1
そして、この6つの要素をまんべんなく体験、学習していくのによい機会が、アクティブラーニング(以下、AL)であるという。そこで、福岡工業大学では、1年生の前期に必修科目「キャリア形成」という授業を設置し、さまざまな体験のできるALを提供している。

研究室訪問、身近でありながら最重要なリソースを活用

「キャリア形成」では、授業の一環として「研究室訪問」を課している。4~5人のグループで、教員にアポイントメントを取り、期間内に訪問して教員にインタビューしてくるというものだ。学生に、学科の先生方や専門的な学問への興味や関心を広げるとともに、メールや訪問のマナーを実践的に学ばせることを狙いとしているという。全ての学生が取り組むこの課題を受け入れる側も全ての専任教員であり、大学総動員での教育機会である。
今回の訪問させていただいた授業は、1年生の前期に展開される必修科目「キャリア形成」の13コマ目、「大学での学び方(4)研究室訪問の成果発表」だった。
5分間のプレゼンで、各研究室の教員へのインタビュー結果を発表する。「なぜ、教員になったのか」「研究分野の概要」「大学生活での学びに対する応援メッセージ」などが、主だったインタビュー項目である。いずれも興味深い内容だが、中でも、各教員からの「大学生活での学びに対するメッセージ」は、とても重みのある内容であった。現時点では、学生はよく理解できなくとも、近い将来、そのメッセージの深み、温かみを実感する時期は必ず来るであろう。

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教員からの応援メッセージは、生きていく上で必要な知識、心構え、スキルを問うものである。これこそ、文科省の推し進める「生き抜く力」に資するものとなるだろう。
あるグループの発表では、「ちょっと変わった先生で、私たち学生の質問に答えるのは面倒くさいなあ、、、と言われながらも、先生の専門分野についての質問をしたとたん、目の色と口調が一変し、ずっと熱心に話してくれた」という。このことだけでも、実に多くのメッセージを学生たちは受け取ったことだろう。
企業からの課題に取り組んで、課題解決をしていくALだけでなく、研究室という大学内にあるリソースを活用して、実践する力を身につけていくALを、積極的に活用してみるのもよいのではと感じた。

大学生のジェネリックスキル(汎用的能力)を測定する「PROG」を用いた分析では、「教員に親近感を感じた」「大学教員と顔見知りになった」などの学生は、「対自己基礎力」の伸びが大きいことが示唆されている(詳しくは『PROG白書2016』)。ジェネリックスキルの3分野「対人」「対自己」「対課題」のうちでも大学時代に最も伸びるのが「対自己基礎力」であり、その伸長という観点でも、教員との距離を縮める研究室訪問の効果は大きいといえるだろう。

教員の受入れ態勢

1年生前期の必修科目「キャリア形成」は、平成24年度に開始された。きっかけは、「平成22年度大学生の就業力育成支援事業」および「平成24年度産業界ニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業」に選定されたことである。
この科目は初年次教育でもあるので、社会で活躍できる実践型人材を念頭に、「大学での学び」と「キャリア」を柱とし、「志向する力」「共働する力」を育む。

FD推進機構特任教員の小田部貴子先生(写真左)、宮本知加子先生(写真右)によると、今年で5年目を迎えた「キャリア形成」の授業だが、常にバージョンアップをしてきたそうだ。特に、「研究室訪問」の変化は、大きいという。

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実は、この取り組みを導入する前、教員の反応は、「なぜ」「負担を感じる」という内容も少なくなかったらしい。受け入れる側の教員は、学生に対する説明資料などを準備しなければならないと思ったり、1年生に対して専門的な内容を話しても伝わらないことを危惧したりしたからだ。
しかし、実際に受け入れてみると、1年生との会話を楽しみ、熱心に語る教員が多い。しかも年を追うごとに、協力する教員が増えているそうだ。
所要時間の目安は20〜30分間となっているが、実際には、それ以上の時間がかかることもしばしば。また、中には時間にルーズな学生もいたりと、教員側のストレスになることもある。しかしそれ以上に、学生と話をすることだけで刺激になる、という理由を挙げる教員もいれば、自分の研究分野について興味を持つ学生が増えることはいいことだ、はたまた、人生の先輩として一言「送る言葉」を表明したい、など、育てる者としての思いが協力体制を後押ししている。

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