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キャリア教育とリカレント教育に共通する「多様性」

文科省中教審、高等教育の将来(2040年頃)構想を総合的に検討

2018/06/21  タグ:  

角方正幸(「キャリアの広場」責任者/____
リアセックキャリア総合研究所所長)

文部科学省中央教育審議会では、「我が国の高等教育に関する将来構想について」の議論が、2018年秋の答申予定に向けて行われている。2040年頃を見据えた高等教育の将来構想についての総合的な検討である。

議論の前提としてまず指摘されているのが、日本の少子高齢化が今後いっそう顕著になり、高等教育機関への主な進学者である18歳人口が、2016年の約119万人から2040年には約88万人へと大幅に減少することだ。同時に社会全体の構造変化(第4次産業革命、Society5.0、人生100年社会、グローバル化の進行、学術研究や教育の発展等)で、社会人に対するリカレント教育の推進が求められるとしている。
このような背景のもと、2040年に向けて必要とされる高等教育機関の教育体制は、
-予測困難な中で、変化に迅速かつ柔軟に対応できる教育研究システムの構築
-多様な価値観が集まるキャンパスから新たな価値を創造
-自前主義から脱却し、学部を超え、大学を超えて多様な人的資源を活用
だとし、社会の変化に共通するキーワードとして「多様性」が挙げられている。それに対応して「多様な学生」、「多様な教員」、「多様な教育研究分野」、「多様性を受け止めるガバナンス」等々の方向性も示されている。

この内容については、「文部科学省における今後の具体的施策」(平成30年3月15日、政府の日本経済再生本部が開催する未来投資会議の会合に文部科学省から提出された資料)が分かりやすいので参照されたい。

私はこの「多様性」というキーワードに注目し、高等教育の将来構想に組み込まれるリカレント教育を、キャリア教育の視点からも捉え直してはどうかと考えている。

キャリア教育に求められる多様性

「多様性」については、大学におけるキャリア教育の黎明期のある分析が思い起こされる。R-CAP「大学生の適職診断プログラム」の結果から、就業力の育成つまりキャリア支援には、学生の「多様性に対する志向」を育てることが最も大切だと判明した。

「多様性に対する志向」とは、他者の多様な価値観に興味・関心をもって受け入れようとする志向であり、この志向が高いと、自分に対する意見を恐れず受け入れようとする態度が生まれる。
このような「多様性に対する志向」を高める学習環境は、同質な集団よりも異質な集団が望ましい。一例として、初年次教育を同一学科内から学部学科横断に切り替えたところ、専門分野の異なる学生同士の交流が刺激となり、プラスの効果が生まれたとの報告がある。

リカレント教育の主体はもちろん社会人だが、その社会人と一緒に学ぶ同級生、つまり若者も受益者といえるのではないだろうか。
日本の学生は、多くが大学卒業まで同年代の人たちとだけ過ごし、社会人との接点がほとんどない。そのため、就活を始めるまで仕事やキャリアについて関心を持たない。これはキャリア支援の一番大きな問題だ。リカレント教育の普及で、多様な年齢層の学生による学習環境に変化すれば、学ぶと働くをつなぐ絆は自然と強くなる。大学の4年間、社会人学生と授業や課外活動を共にすれば、仕事や就職に関する話題の機会は自ずと増え、問題意識が確実に高まるだろう。さらに、留学生など外国人が増えれば、年齢層の多様性に国籍の多様性が加わり、大学の学習環境として申し分ない。効果的なキャリア教育プログラムの開発も重要だが、最も効果的なのは環境作りだろう。

この環境の実現に向けてはもちろん様々な課題がある。例えば社会人(社会経験のある相手)に教えるのは、20歳前後の若者を相手にするのとは勝手が違う。教員の力量がいっそう問われるだろう。問題の解決は容易ではないが、キャリア教育の充実という視点で日本型リカレント教育への新たな取り組みが出てくることを期待したい。

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