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[新Vol.15] 神奈川大学

初年次教育から「学びて問う」「考える力」を身につける

2018/09/07  タグ:  

神奈川大学基礎DATA

本部所在地 神奈川県横浜市
設置形態 私立
学部 法学部/経済学部/経営学部/外国語学部/人間科学部/理学部/工学部
学生数 18431名(2018年5月1日現在)

大学は、最終学歴となるような「学びのゴール」であると同時に、「働くことのスタート」の役割を求められ、変革を迫られている。キャリア教育、PBL・アクティブラーニングなど座学にとどまらない授業法、地域社会・産業社会、あるいは高校教育との連携・協働など、近年話題になっている大学改革の多くが、この文脈にあるといえるだろう。
このシリーズでは、「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目し、学長および改革のキーパーソンへのインタビューを展開していく(リクルート「カレッジマネジメント」誌との共同企画)。各大学が活動の方向性を模索する中、さまざまな取組事例を積極的に紹介していきたい。
今回は、全国23自治体と連携協定を結んで地方出身者のUIターン就職をサポートする神奈川大学で、兼子良夫学長にお話をうかがった。地元地域のニーズに応えつつ、戦前から地方入試を行って全国から学生を受け入れてきた歴史がその背景にはあった。

1.「横浜の大学」として地域人材のニーズに対応

神奈川大学の特性は、創立の地である横浜と密接に関わっている。兼子良夫学長は「勤労青年や地方出身者に対するケアを中核として、京浜工業地帯の人材育成を担ってきた。日本の近代化・国際化の窓口という土地柄、グローバル人材育成のDNAもある。『横浜の大学』として地域に貢献してきました」と語る。
「本学は、京浜工業地帯に働く人が地元で学べる夜間部を持つ専門学校として、90年前にスタートしました。創立者の米田吉盛先生自身が地方出身で苦学したことから、学費を全額免除し生活費も支給する給費生制度、仙台や福岡での地方入試などを実施。貿易科では語学教育として英語で授業をしていました」。
戦前に築かれたこれらの骨格は、二部(夜間課程)や給費生制度が形を変えながら続くなど、戦後に新制大学になってからも受け継がれた。1965 年には、貿易学科から独立する形で外国語学部を開設した。このとき英語英文学科と並んで設置されたスペイン語学科は、貿易商務にスペイン語を使う横浜の地域人材ニーズに応えるものであると同時に、グローバル人材育成でもあった。「開設以来4000人以上の卒業生を出しており、スペイン本国を含め世界各国で活躍しています」。

2.キャリア教育は、「学問」を通して「考える力」を身につけること

キャリア教育について兼子学長は、「専門的・技術的なものよりも、『学問』を通して『考える力』を身につけることが大切」と言う。
「学問」においては一般に、学者が自由に課題を発見し、仮説を提示し、独自の結論を出す。また、知識をただ学び取るのでなく、文字通り「学びて問う」ことが求められる。それが高校までの「勉強」を超えた大学の「学問」だと兼子学長は言う。
「一つの学問にきちんと取り組むことは、課題を見つけ、検証し、解決することをそのままパッケージで学ぶこと。それは、何が問題なのだろう、どう考えていけばいいだろう、というときの具体的な思考サイクルが身につくことであり、さらには『考える力』につながります。この『考える力』が、社会に出たとき一番ものをいう力であり、キャリア教育の根幹と考えています」。

「学問」こそキャリア教育という考え方をとる神奈川大学では、大学教育の入口と出口、教学と就職支援とが一体であるという意識が強い。そしてその延長線上に、高大接続があり初年次教育がある。
「87の高等学校と神奈川県立総合教育センターが加盟している高大連携協議会で、高校と大学を接続するような正式な授業を大学で開講してほしいと、高校の先生方の強い要請がありました。それを受けて、我々大学として正課でどのようなことが必要かと検討し、ファーストイヤーセミナー(FYS)という初年次教育を2006年に始めました」。
1年次前期の必修で、図書館の利用の仕方、授業の受け方、レポートの書き方など、「大学流の読み書き算盤」を教える。「勉強から学問へ進化すること、先生の言葉通りのレポートを出しても0点、正答は一つではない、ということも、きっちり教えます」(兼子学長)。

3.自治体との連携や各地卒業生団体との連携を強化

キャリア支援の施策としては、自治体との就職支援連携協定の充実が際立つ。締結済みと学内手続中を合わせて23件(22府県・1市)に及ぶ。
もとより神奈川大学では、下宿生が4割を超えるなど、地方出身者が多い。「全国から人が集まるのは、教育プログラムを超えて人間形成に良い影響を及ぼすと我々は認識しています。留学生を増やすといった国際交流も大事ですが、日本においても多くの地域から人を呼ぶのはとても大事だと思っています」。
戦前からある地方入試を現在、全国20会場(横浜を含む)で実施、100以上の支部をもつ卒業生団体・宮陵(きゅうりょう)会にも、学生募集への協力を呼びかけている。

「ただ今は、少子化で一人っ子が多くなっているので、地元に戻ってほしいと希望する親御さんが多い。自治体の方々も、地方創生の担い手として一人でも多く地元に戻したい。卒業後の地元回帰を視野に入れてこそ、全国から学生を集める大規模大学の責務を果たせます」。営業戦略ともいえる施策の一つが自治体との協定というわけだ。「各県の東京事務所が毎月情報を提供してくれ、学生の相談にも乗ってくれる。学生は安心ですよね」。
公的な情報ルートのほか、卒業生からの情報も重要だ。「例えば私のゼミ生で、有名大手企業に受かったにもかかわらず、地元企業に就職した学生がいました。理由を聞いたら、『本学の先輩方が生き生きと活躍している』と、働き方を含めリアルな企業情報を得ていました。今の学生は、有名企業だから行くというステレオタイプではない、多様性に基づいた選択をする。それに対応するためにも、しっかり地方の情報も提供するということです」。

ただし、それだけ手厚くしてもまだ、「本当は地方に帰りたいが、帰れない」実態もあるという。本人が決めても親が反対するケースもある。「地元に帰ってくるなら公務員か教員か金融機関、そうでなかったら東京で有名企業に行ってほしいという親御さんも少なからずおられる」と兼子学長は言い、「地方にも立派な会社があると我々は知っているのですが」と残念がる。
「山形県米沢の商工会議所では、会頭が本学のOBですが、親御さんをバスで中小企業の現場に連れて行くといった努力をされています。難色を示していた親御さんでも、丁寧な情報提供で、『大企業と同様に福利厚生もしっかりしている』『工場も近代的で将来性がある』と認識が改まる。
こういう試みをモデルケースとして広めるなど、地方の就職には卒業生団体である宮陵会を含め『オール神大』で対応していきます」。

4.世界のビジネスを体感する、みなとみらいキャンパス

神奈川大学は2021年4月にみなとみらい(横浜市西区)に新キャンパスの開設を予定しており、外国語学部と2020年新設の国際日本学部(設置構想中)が横浜キャンパス(横浜市神奈川区)から、経営学部が湘南ひらつかキャンパス(平塚市)から移転する。さらに2023年には理学部が湘南ひらつかキャンパスから横浜キャンパスに移動。学部教育は横浜市内の2キャンパスに再編される。
経営学部は国際経営学部になり(名称変更構想中)、みなとみらいキャンパスは留学支援や英語教育のプログラムを強化して、グローバル人材育成の中核にしていくという。

兼子学長は「新キャンパスには、横浜駅から歩いて通ってほしいと思っている」と言う。横浜駅から日産グローバル本社のビル内歩道を通り、資生堂のグローバル研究拠点の前を歩いて、キャンパスに至るみなとみらい地区は、「世界標準を常に感じる場所」だからだ。「グローバルなビジネスが動いていると直接感じながら通学することは、みなとみらいの教育プログラムの一つといっていいほどの特別なものです。この素晴らしい環境にキャンパスを打ち出す意義はまず、みなとみらいにほど近い桜木町で開学したグローバル人材育成のDNAを受け継ぎ、新たな世界標準の人材育成に尽力することだと思っています」。
キャンパス再編のもう一つの意味は、「全学部が近接し、未来社会を見据えた人材の育成に不可欠な、学際的取り組みや連携・融合が可能となること」と言う。目指すのは、神奈川大学が「文理を超えて学びたいことは何でも学べる、横浜の総合大学」になることだ。その第一歩として教養教育を、重層的できめ細かなものへと再構成するという。全学生がみなとみらいキャンパスの講義を受講可能となり、「世界標準を感じる」効果も全学生に及ぶと期待される。

「大学には、社会を追走するのではなく、先導する責務があります。社会を先導する研究と教育とは何か、全学部が、新しい立地とその環境を生かすべく、研究組織、教育組織、教育プログラムを大きな視野で再検討し、充実・強化していく。それが、世界標準の良識ある人材育成につながっていくと思います」。

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