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大学生の就職率改善への政策提言:企業・行政への提言

新卒の就職実態と課題への対応策(4)

2013/07/01  タグ: ,  

角方正幸(リアセックキャリア総合研究所所長/「就業力の広場」責任者)

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企業への提言

企業側の対策としては、特に中小企業に採用の動機付けを与え、採用枠を拡大させることが何よりも大切である。経営者(採用計画の意思決定者)をその気にさせる仕掛けが不可欠であり、それには、単に採用枠の拡大を呼びかけたり、補助金を与えたりするだけでは不十分といえる。中小企業にとっての最大の採用リスクが、採用した大卒者の能力不足や不適性であることを考慮して、「大卒者を採用して見立てが違っていた場合、1年以内なら解雇できる」ようなトライアル雇用的なルール導入が重要である。もちろん、それによって解雇された大卒者への対応は別の施策として必要になるだろう。

①採用実態の情報公開を徹底
大学別採用数、男女別、学部別採用数、3年以内の早期離職率など、採用実態の情報の公開を企業に義務づけることが必要である。

②採用手法の多様化
倫理綱領や就職協定といった一斉主義にとらわれず、各企業が独自に採用活動を行うことが必要である。採用手法を変え、採用基準を見える化することで、学生の各企業に対する求職意識にも変化が起こる可能性がある。

③中高年から若者採用へのシフト
団塊世代・高齢者の就労確保のために、若者の就職が難しくなっているとすれば問題である。これについては企業の経営に何らかのインセンティブが必要かもしれない。

④若者を大学と連携して育てる企業風土の醸成
企業は「即戦力になる」学生を求める傾向が強いが、大学と企業が連携してともに若者を育てるという意識改革を進め、人材育成にかかわっていくべきであろう。具体的にはインターンシップへの積極的関与がその一つである。

⑤早期離職者を出さない対策の強化・工夫
3年以内離職者を出さない組織風土や制度の研究によって、早期離職を縮減する仕組みを構築することが望まれる。
参考例として、イギリスのIIP(Investors In People)制度をあげておく。「インベスターズ・イン・ピープル」とは「人に投資している会社」の意で、若者の人材育成に力を入れる企業を表彰する仕組みである。

行政への提言

①地域キャリア教育支援協議会の設置
政府の若者雇用戦略に、文部科学省の地域キャリア教育支援協議会が盛り込まれた。就職問題は大学個別の問題ではないと捉えて地域での大学連携を強化し、さらに産・官・学の連携によるキャリア教育の推進体制を整備するこのような施策は今後とも必要である。

②内定率調査、卒業後の進路状況把握を全数調査に改める
「学校基本調査」や「就職内定状況調査」はいずれもサンプリング調査であり、全大学生の進路状況データは存在しない。各大学が卒業証書と引き換えに調査するなどの方法で就活プロセスと結果をなんとか捕捉している現状である。有効な就業支援施策などのために、ベースとなる全数調査の必要性は高い。

③卒業後3年間は大学の責任で、学生の就業状況把握と支援を行うことを義務化
第2新卒の就職支援は空白地帯となっているので、大学の責任を明確化する必要がある。

④行政の縦割りの弊害を改め、総合対策の徹底
大学教育から企業などでの就業へ、一貫したキャリア支援を行うには、文部科学省、経済産業省、厚生労働省、内閣府といった関連省庁が密に連携することが重要なのは言うまでもない。

⑤高等教育行政の大半を都道府県に移管
大学の機能分化で「世界的研究・教育拠点」に該当するごく少数の大学を除き、多くの大学は地域の人材養成がミッションの一定部分を占めている。雇用は地域特有の問題なので、大学が地域に人材を送り出すにあたっては、国ではなく地元の都道府県が所管するのが適切だと考えられる。高大連携の教育プログラム実施などについても地元自治体が関与するのがスムーズであるし、それによって地域の活性化を促進していくことがこれからは大事だと考える。

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