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部下が育つ1on1 ─ ネタに困らず、能力開発につなげる対話のコツ

 

 


更新日:2025年5月9日

 

 

 

前回の記事では、1on1の最大の目的である「部下の成長支援」を実現し、現場に定着させるためのアプローチについてご紹介しました。

 *前回の記事:“育てる1on1”を現場に根づかせるには?部下も学ぶことが解決のヒント

 

今回は、1on1を実施する現場上司の方々からよく聞くお悩みと、その解決策についてご紹介します。

 

 

目次


 

 

①1on1でよくあるお悩み

 

1on1を実施する上司の方々から、「ネタ切れしてしまい会話が続かない」「どうアドバイスしたらよいかわからない」といった声を多く伺います。部下が話したいことを話すのが理想的ですが、「特にない」と言われてしまうケースもあるかと思います。

話すネタがないという方については、「部下のことを理解する」という観点を持ちながら、以下のような話題を取り上げてみることをおすすめします。

 

 

●意欲や職場への満足度を探るテーマ

日々の仕事に対する意欲や、働く環境に対する感じ方を共有することで、必要なフォローや改善につなげることができます。
例: 最近達成感を得られた仕事、やる気を下げる要因とその対処、チームの雰囲気や働きやすさについての意見

 

●健康状態や働き方のバランスを確認するテーマ

無理のない働き方ができているか、心身の調子に問題がないかを確認することで、パフォーマンスの安定を支援できます。
例: 最近の体調の変化、業務量に対する負担感、仕事と私生活のバランスがとれているかどうか

 

●キャリアの方向性や成長に関するテーマ

中長期的な視点で、どんな力を伸ばしたいか、どんな仕事に挑戦したいかを確認することで、成長の後押しにつながります。
例: 将来的に挑戦したい分野やポジション、今強化したいスキル、目指しているキャリア像

 

 

また、1on1の最大の目的は「部下の成長支援」であり、部下が主体となる時間であることが理想的です。そのため、部下が話したいことを準備できるよう、事前にヒントを与えるという方法があります。こちらについては以下の記事でご紹介しておりますのでぜひご覧ください。

 

“育てる1on1”を現場に根づかせるには?部下も学ぶことが解決のヒント


一方、「どうアドバイスしたらよいかわからない」という課題について、
部下の志向やキャリア観について聞き出したり、深掘りや助言をしていくことに難しさを感じている上司の方も多いかもしれません。次の章では、コーチングやカウンセリングなどの面談に関する技術的なスキルがなくても、部下の考えを深掘りできる方法についてご紹介します。

 

 

②アセスメントツールを活用し、対話的な1on1を実現

 

1on1に関するお悩みを解決する方法として、今回は「アセスメントツールを活用した1on1」の例をご紹介します。

 

<アセスメントとは?>

アセスメント(assessment)とは、対象となる人や物事を評価・分析し、現状をありのままに把握することです。アセスメントツールは人材マネジメントの領域でも用いられており、個人の能力や適性を測定し、適切な配置や育成等に活用されています。

 

1on1にアセスメントを取り入れることで、部下の強みや課題を把握することが可能です。具体的には、次のようなツールが効果的です。

 

● カードソート
価値観や志向性を明らかにするためのツールです。部下が大切にしている価値観や行動原理を「カード形式」で手軽に可視化でき、対話のきっかけを自然に作ることができます。この手法は、キャリアカウンセリングでもよく用いられており、部下本人の自己理解にもつながります。

 

● アセスメントテスト(心理・性格・能力系など)
価値観や性格傾向、仕事上の強みやモチベーションの源泉などを可視化するアセスメントテストも、1on1において有効です。こうしたテストを通じて部下自身が「自分はどのようなタイプなのか」「どんな場面で力を発揮しやすいか」といった自己理解を深めることができ、対話のきっかけになります。また、上司にとっても部下の思考の傾向や得意・不得意の把握に役立ち、より的確な支援や関わり方を考える材料になります。対話が一方通行にならず、相互理解を深める1on1が実現しやすくなる点が大きな利点です。

 

1on1では、まずアセスメント結果をもとに「どこに伸びしろがあるか」「どのような行動傾向があるか」を上司・部下で共有し、部下の気づきを引き出します。その上で、日々の業務やキャリアにどう活かすかを対話し、成長支援につなげていきます。アセスメント結果を起点にすることで、感覚的な話ではなく、事実ベースの対話ができるため、納得感や信頼関係の構築にもつながります。アセスメントは単なる評価ではなく、「対話のきっかけ」として捉えることがポイントです。

 

また、1on1での活用に適したアセスメント選びも重要です。以下の条件を満たしたアセスメントの活用をおすすめします。

 

(1)測定する能力の成長が期待できる

 一般的な適性検査のようなアセスメントは、可変しづらい性質(性格傾向、認知スタイルなど)を測定しているものが多くあります。1on1のねらいである部下の成長支援を見据えると、本人の意識や行動によって可変するスキル(コンピテンシー)を測定できるものがベストです。

 

(2)本人にフィードバックできる

 企業が利用する適性検査において、組織判断(配属・選考等)を目的として設計されており、個人には結果を開示しないケースが少なくありません。1on1に活用するには、受験者本人に結果が返却され、自身の成長や課題に気づくことで、成長プロセス(自ら成長のための行動計画立案、実行、振り返り)を踏めるような設計であることが重要です。

 

アセスメントを1on1で活用する上での留意点は、活用の目的を丁寧に伝え、本人の同意を得てから使うということです。
アセスメント=評価テストという印象を持たれることも多いため、結果を人に見せたくない、アセスメント結果が自分の評価につながるのではないかと疑う方もいらっしゃいます。そのような疑いをもたれないためにも、「評価ではなく、キャリア・能力開発のために使う」ということを事前にしっかりと説明しましょう。そして、面談者が開示しても良いと思う部分だけを開示するでも良いことを伝え、安心してアセスメント結果を活用してもらえるような配慮することも重要です。このように安心感を持ってもらいながら使用することで、効果的にアセスメントを活用することができます。

 

 

③対話的な1on1を助けるアセスメントツール「PROG@Work」とは?

 

上記でご紹介した手法の具体例として、キャリアアセスメントツール「PROG@Work」を活用した1on1についてご紹介いたします。

 

 

PROG@Workとは Progress Report On Generic skills

 

どの仕事にも共通する成果をあげるために活用している”基礎力”を測定できるアセスメントツールです。

この基礎力は、性格傾向などの変化しづらい特性とは異なり、意識や行動変容によって可変するスキルで、リテラシーとコンピテンシーに区分しています。PROG@Workでは基礎力を科学的根拠に基づいた手法で客観的に測定することで、部下の基礎力の現状を把握することができ、今後の能力開発・キャリア開発に向けた支援材料として活用することができます。

 

PROG@Workの概要はこちら

 

 

1on1でPROG@Workを活用するメリット

 

Ⅰ. 意識や行動によって変化する基礎力を測定

基礎力は “伸ばすことができる力”で、この力を可視化することで、1on1では「今後どこを強化すべきか」「そのためにどのようなことを意識するか」といった具体的な対話が可能になります。部下の成長に向けたフィードバックや支援につなげるために、可変性のある指標は非常に有効です。

 

Ⅱ. 自身の基礎力を世の中と比較できる

個人の基礎力を数値化するだけでなく、全国の社会人のベンチマークと比較することができます。これにより、単なる自己評価ではなく、より客観的な視点から自身の強み・課題を捉えることが可能です。1on1の場では、この比較データを活用して、建設的な対話や支援の材料とすることができます。

 

Ⅲ. 受験結果を本人に返却できる

受験後、結果報告書を本人に返却でき、上司と部下の対話材料として直接活用できます。部下の成長支援をねらいとする1on1においては、本人が自分の強みや課題を正しく理解し、成長の方向性を自ら考えることが重要です。可視化されたスコアに加えて、各能力項目の定義や行動のヒントが記載されたハンドブックも提供され、自己理解を深めながら、成長に向けた建設的な対話を行うことができます。結果をもとにしたフィードバックは、部下の内省を促し、行動変容へとつながりやすくなります。

 

受験者にお渡しする個人結果報告書・PROGの強化書(成長支援ハンドブック)が、1on1における対話的な能力開発のサポートツールになります。

上司の方も事前に受験し、結果やハンドブックを確認しておくと、より実感や納得感を持ってフィードバックができます。

 

■個人結果報告書の活用ポイント

・強みの力:相対的にスコアが高い力、全国平均と比較してスコアが高い力をチェック

・課題の力:相対的にスコアが低い力、全国平均と比較してスコアが低い力をチェック

 

 

■成長支援ハンドブック「PROGの強化書」の活用ポイント

・強みの力の定義・強みの力を持っている人の特徴

 *部下がその力を発揮している場面を伝えられるようにしておくと、部下の自己肯定感や自信につながります。

・課題の力の定義・能力UPのための方法

 *部下が伸ばしたいと感じている力を開発できる場面の例を提示できるようにしておくと、部下の成長のためのヒントになります。

 

 

<対話の例>

 

・結果から見える「強み」を深める

「これまでどんな場面で発揮できていたと思う?」
「他の業務や役割でさらに活かせそうな場面はある?」
「自分のこの力が役立ったと感じた出来事はあった?」

 

・結果から見える「課題」を深める

「スコアが低い能力について、どう受け止めた?」
「日々の業務で“難しいな”と感じる場面はある?」
「自分でも伸ばしたいと思っている力は?」

 

・課題のすり合わせ

「今の業務ではどの力が必要だと感じる?」
「PROGの強化書で紹介されている能力UPのための行動例について、自分の業務にどう落とし込めそう?」
「今後、どの力を重点的に強化したい?」

 

・開発目標と計画のすり合わせ

「この力を伸ばすとしたら、どんな場面で試せそう?」
「次のプロジェクトでこの力を意識して取り組んでみるのはどう?」

 

 

以上のような活用をすると、部下の成長に直結した対話的な1on1を実現することができます。

 

 

PROG@Workの詳細は以下の資料をダウンロードください!

 

 

 

 

④まとめ

 

1on1ミーティングは、部下の成長を支援するための大切な時間です。ただの業務報告や評価の場ではなく、部下の考えや感情にじっくり耳を傾け、内省を促す対話が求められます。そうした対話をより充実させるための工夫として、客観的な情報を手がかりにする方法も有効です。

 

PROG@Workのようなアセスメントツールを活用すれば、部下の強みや成長のヒントが可視化され、今後の能力開発のヒントとなるフィードバックが可能になります。ただし、必ずしもツールに頼る必要はありません。大切なのは、部下一人ひとりに合ったテーマを見つけ、成長を後押しする対話を積み重ねていくことです。上司・部下の信頼関係を深めながら、組織全体のエンゲージメントを高めていく、その第一歩として、1on1のあり方を見直してみてはいかがでしょうか。