OJTで本当に育成すべき力とは?
更新日:2025年6月24日
OJT(On-the-Job Training)は多くの企業で新人育成の中心的な手法として活用されています。実際の業務を通じて、実践的なスキルを身につけさせる──その即戦力志向は現場のニーズにも合致しています。
しかし現場のOJT担当者や育成責任者からは、こんな声もよく聞かれます。
「業務はできているが、自発性が足りない」
「指示通りには動けるが、状況判断が弱い」
「他者と協働する力が欠けている」
この背景には、「業務スキル」は教えることができても、「社会人としての土台」となるスキル(=社会人基礎力)の育成が設計されていないという課題があります。
今回は、OJTで社会人基礎力を育成する必要性について考えます。
OJTを担当する現場のトレーナーからは、「業務の手順は覚えたが、自発的に動けない」「指示されたことはできるが、状況を見て判断できない」「最低限の報連相はするが、チームでの連携がぎこちない」などのお悩みの声が頻繁に聞かれます。
これらの課題は一見バラバラに見えますが、根底には共通する要因があります。
それは、社会人としての“行動の土台”となる力が育っていないこと、そしてOJTの中でその力を「育てる設計」になっていないことです。
多くの現場では、OJTを「業務の手順を教える場」として捉えがちです。そのため、日々の指導も「どの業務を、どのタイミングで、どのようにやらせるか」といったタスク中心の内容になりやすくなります。
しかし、実際に現場で求められるのは、状況に応じて考える力や自分から動く力、周囲と協働する力をはじめとした、「社会人基礎力」と呼ばれる力です。社会人基礎力は、「業界業種にかかわらず、社会で活躍するために必要な力」を指します。
この力を育てる視点がOJTに欠けていることで、
・言われたことはこなせるが、自分から動けない
・困った時に一人で抱え込み、報告や相談が遅れる
・周囲との関係構築が浅く、チームとしての力が発揮されない
といった状況が生まれてしまうのです。
OJTでは、担当業務の知識や手順(ハードスキル)の習得が重視されがちです。
しかし、新人が職場で自律的に、そして協働的に活躍していくためには、それらと並行して「社会人基礎力」を育てるOJTの再設計が必要なのです。
ただ、社会人基礎力は潜在的な能力であり、新人が現在どんな力をどれくらい持っているのか、業務を通してどんな力が育っているのかなど、定量化・可視化することが難しいという課題があります。そのため、「社会人基礎力の育成」といっても、どのように育成すればよいかイメージがわかない方も多いのではないでしょうか。
見えにくい能力を定量化・可視化する上で有効なのが、アセスメントを活用することです。
<アセスメントとは?>
アセスメント(assessment)とは、対象となる人や物事を評価・分析し、現状をありのままに把握することです。アセスメントツールは人材マネジメントの領域でも用いられており、個人の能力や適性を測定し、適切な配置や育成等に活用されています。
アセスメントを取り入れることで、これまで曖昧だったスキルの成長を「見える化」し、OJT設計やフィードバックに一貫性を持たせることができます。
<アセスメントをOJT設計に組み込むメリット>
・新人の強みや課題を客観的に把握・言語化でき、育成設計やフィードバックに活用できる
・強化すべき能力など、トレーナー間で指導観点を揃えやすくなる
・自身の能力の現状や成長が見えることで、本人にとっても成長実感が得やすくなる
多くの育成現場で、こうしたアセスメントの導入が広がりつつあります。
一口にアセスメントといってもさまざまな種類があります。その中でもOJTをはじめとした新人育成に適したアセスメントを選ぶことが重要です。ここでは新人育成に適したアセスメントの特徴についてご説明します。
特徴1:専門知識・スキルではなく、社会人の土台となる汎用的な「社会人基礎力」を測定できる
新人育成においては、業務知識や技術の習得と同時に、「働く上での土台」となる能力、社会人基礎力の育成が不可欠です。これらの力は、指示待ちにならずに自ら動く、自分で考えて行動できる、周囲と円滑に連携できるといった行動の背景にあり、現場での活躍を左右します。こうしたスキルは目に見えにくいため、アセスメントによって定量的・客観的に可視化することで、育成ポイントを明確にすることができます。
特徴2:実践行動や経験によって「可変する能力」を測定できる
新人期は、業務経験やトレーナーからの指導によって日々スキルが変化・成長していく重要なフェーズです。そのため、アセスメントも性格や気質などの「固定的な能力」を測るものではなく、日々の実践を通じて伸びていく力を測定できる設計である必要があります。例えば、論理的思考力や対人関係構築力などは、意識的な経験やふりかえりによって着実に伸ばすことができます。成長を定期的に確認できるアセスメントは、OJT設計や支援の精度を高める上でも有効です。
特徴3: 能力開発のための「フィードバックや対話」に活用できる
アセスメント結果は、単なる“評価”に留めるのではなく、育成支援のツールとしてトレーナーと新人の対話やフィードバックに活かすことが重要です。たとえば、結果レポートに観点ごとの強み・課題が記載されていたり、具体的な育成アドバイスが添えられていると、1on1や定期面談でも活用しやすくなります。トレーナー側にとっても、指導方針を揃えたり、成長変化に気づく手がかりとなるため、属人的なOJTから脱却しやすくなります。本人にとっても、自分の成長を実感できる材料になるため、モチベーションや自己理解の促進にもつながります。
上記の特徴を持っているアセスメントの例として、PROG@Workをご紹介します。
PROG@Workとは Progress Report On Generic skills
どの仕事にも共通する成果をあげるために活用している”社会人基礎力”を測定できるアセスメントツールです。
この社会人基礎力は、性格傾向などの変化しづらい特性とは異なり、意識や行動変容によって可変するスキルで、リテラシーとコンピテンシーに区分しています。PROG@Workでは基礎力を科学的根拠に基づいた手法で客観的に測定することで、新人の社会人基礎力の現状を把握することができ、今後の能力開発に向けた支援材料として活用することができます。
<PROG@Workを能力開発に活用する方法>
(1)受験結果から、「強み」「課題」を把握
PROG@Workでは、リテラシーとコンピテンシーを測定することで、個人の行動特性を客観的に可視化します。診断結果をもとに、「どのような場面で力を発揮しやすいのか(強み)」「どのような状況で苦手を感じやすいのか(課題)」といった傾向を把握することができます。また、世の中の社会人データとの比較で、能力の立ち位置を把握することも可能です。
(2)普段の仕事が、「強み(発揮能力)」とどうつながっているかを理解する
診断結果を仕事の場面と照らし合わせてみることで、「なぜこの仕事にやりがいを感じるのか」「なぜ特定の業務で負担感が大きいのか」といった要因が言語化できます。これにより、日々の業務の中で自分の強みがどのように活かされているのか、あるいは発揮できていないのかを再認識し、自己効力感の向上や役割意識の醸成につながります。
(3)自らが伸ばしたい能力を定め、仕事の中でできる行動計画を立てる
結果を踏まえて、「これからの自分に必要な力は何か」「そのためにどんな行動を意識すべきか」を明確にします。例えば、「他者の意見を受け止める力を伸ばしたい」と感じた場合は、日常の会議で発言を促す、上司・同僚への質問を増やす、といった具体的なアクションを設定します。こうした行動計画があることで、成長目標が現場での実践に結びつきます。
(4)定期的に行動計画を見直したり、フィードバックをもらったりする機会をつくる
成長実感を得るには、継続的な振り返りと第三者からのフィードバックを受け、新人自身が「変化した」「成長した」という実感を得ることが欠かせません。1on1や上司との面談の中で、行動計画の実践状況を共有し、助言をもらうことで、改善点や新たな気づきが得られます。また、一定期間後に再受験を行うことで、能力の変化を定量的に確認することも可能です。これにより、自律的な成長サイクルの定着を支援できます。
▼個人結果報告書
・本人スコア:リテラシー・コンピテンシーを7段階で得点表記
・比較グループ平均:受験者と比較設定する汎用的な組織内職位(キャリアステージ)の平均得点
▼成長支援ハンドブック「PROGの強化書」
・強みの力の定義・強みの力を持っている人の特徴:強みの発揮・強化に役立つ
・課題の力の定義・能力UPのための方法:苦手意識を持ちやすい状況や場面の把握、能力開発に役立つ
<PROG@WorkをOJTに活用するメリット>
(1) 社会人基礎力を可視化し、育成の焦点を明確にできる
OJTでは業務スキルに加えて、主体性・対人関係力・課題解決力といった社会人基礎力の育成が重要です。PROGはその社会人基礎力を測定できるため、漠然とした能力を構造的に捉えることが可能になります。これにより、「なぜ指示がないと動けないのか」「なぜ報連相が不足しているのか」といった課題の背景が明確になります。
(2)一人ひとりの育成ポイントに合わせたOJT設計ができる
PROGの結果をもとに、個人の強み・課題に即した育成計画を立てることができます。例えば、「論点整理が苦手」な新人には業務報告の整理トレーニングを、「他者との協働が苦手」な新人にはペア作業を多く取り入れるなど、OJT支援の個別最適化が可能になります。画一的な指導ではなく、“その人に必要な支援”を明確化できる点が大きなメリットです。
(3) トレーナー間の指導観点をそろえやすくなる
育成対象者の強みや課題を共通の言語(スコアと指標)で共有できるため、複数のトレーナーや育成担当者の間でも指導観点を揃えることができます。属人的な「なんとなくこう教える」から脱却し、一貫性のある育成設計・フィードバックが可能になります。
(4) 成長の「見える化」により、本人の自己理解と成長実感を支援できる
PROGは初回と再測定(受験またはセルフチェックシートでの自己評価)を通じて“スキルの伸び”を可視化することができます。OJT終了後に振り返りを行う際、成長の軌跡を客観的に示すことで、本人にとっても「どんな力が伸びたか」「どのように成長できたか」が実感しやすくなります。成長実感があることで、学習意欲や自律的な成長行動にもつながりやすくなります。
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OJTを再設計する上で重要なのは、業務習得と社会人基礎力の育成を両立させることです。
そのためには、現場の属人的な指導に頼るのではなく、客観的なアセスメントツールを活用し、成長を設計・可視化する仕組みが効果的です。
「OJTで人が育つ」組織をつくるための第一歩として、社会人基礎力の可視化と育成に、今こそ取り組んでみませんか。