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「研修が実務に活きない」からの脱却

 

~人事にしかできない管理職研修の再設計~

 


更新日:2026年7月22日

 

 

 

人的資本経営やキャリア自律の重要性が叫ばれる昨今、組織の結節点である「管理職」の育成は、人事・人材開発担当者にとって最重要課題の一つです。しかし、「毎年、管理職研修を実施しているが、現場の意識や行動が本当に変わっているのか実感が湧かない」「予算と時間を投じても一過性のイベント(やりっぱなし)で終わってしまう」という悩みを抱える人事担当者は少なくありません。

 

本記事では、管理職研修が効果を発揮せず形骸化してしまう根本的な原因を、管理職に対する育成課題(当事者意識の醸成や、現場へ連動させる仕掛けの不足)の観点から紐解きます。その上で、受講者を本当の行動変容に導くためのプログラム再設計の「3つの新しい視点」と、それを仕組みとして社内に定着させるための「客観的なモノサシ」の必要性について解説します。

 

目次

 

1. なぜ「満足度」が高くても現場は変わらないのか?研修効果を阻む2つの壁


 

多くの企業において、研修直後の受講者アンケートでは「大変満足した」「多くの気づきがあった」という前向きな回答が得られます。しかし、数ヶ月経つと現場の行動は何も変わっていないというジレンマが生じがちです。これには、管理職自身の育成において見落とされやすい、心理面と環境面の「2つの壁」が影響しています。

 

① 管理職自身の「意識の壁」と主観の罠
新人研修や若手研修の場合、受講者は「自分は未熟である」という前提で臨むため、新しい知識を素直に吸収します。しかし、管理職に登用されている社員は、プレイヤーとして優れた実績を残してきたからこそ、そのポジションに就いています。そのため、自らのチームメンバー(部下)をマネジメントする上司としての「自分なりのマネジメント像」や「過去の成功体験」をすでに強く持っています。

 

本人が「上司としての今のやり方で概ねうまくいっている」という主観的な認識を持っている場合、研修でどれほど先進的なマネジメントスキルを学んでも、無意識のうちに「これは自分ではなく、他のメンバーに必要な内容だ」と他人事として捉えてしまい、受講の当事者意識(自分ごと化)が薄れやすくなります。この「自らの能力に対する自己認識(主観)」と「周囲のメンバー(部下や経営層)から見えている姿(客観)」に生じるギャップが、自らの行動をアップデートする上での心理的な壁となっています。

 

② スキルを実務に落とし込む「仕掛け」の不足
もう一つの原因は、研修で得た学びを日常の「実務」へと接続させるための「仕掛け(仕組みや環境設計)」が研修プログラムに不足している点です。例えば、研修で「傾聴スキル」や「適切なコーチング」を学んだとしても、実際の職場でそれを実践・定着させるための振り返りの機会や、評価・1on1と連動させる具体的な仕掛けがなければ、そのスキルは一過性のもので終わり、職場では使用できないものになってしまいます。

 

学んだスキルと実務を結びつけるために「全社で使える共通言語を作る」というアプローチなどは重要な仕掛け(施策)の一つです。特に共通言語を作るというアプローチで特に効果を発揮するのが、概念的で抽象度の高い能力(ソフトスキルやポータブルスキルなど)の言語化です。これらの能力は言語化が難しく、人によって解釈や定義がずれズレるため、共通言語を作ることで、コミュニケーションの齟齬などの解消にもつながります。また、これらの能力はどの職場や仕事でも汎用的に使えるスキルとなるため、一度共通言語化することで、部署を異動してもその部署で必要なスキルが分かりやすくなります。そのため、管理職自身の育成の方向性や管理職が行う人材育成の場面でも効果を発揮します。
これは、各部署で行う業務知識に特化した研修では実施することが難しいため、人事主催の研修で扱うと良いテーマです。

 

 

2. 2つの壁を打破し、管理職自身の育成課題を解決する「3つの新しい視点」


 

 ここまで、管理職研修の効果を阻む「本人の自己認識(主観)の壁」と「実務へ接続する仕掛けの壁」という2つの本質的な課題を見てきました。管理職がこれまでの成功体験に囚われず、かつ研修での学びを多忙な日常実務にスムーズに落とし込めるようにするためには、人事がこれら2つの壁(意識と仕掛け)を同時に打ち破るアプローチをとる必要があります。


そこで、プログラムの再設計において不可欠となるのが、これまでの課題に対応する次の「3つの新しい視点」です。これらは、管理職の意識を「自分ごと」へと変革し、実務で機能する仕掛けを構築するための核となります。

 

視点①:主観や感情を排除した「客観的な現在地の可視化」

真の当事者意識(意識の壁の突破)を引き出すには、まず「今の自分のスタイル」を否定するのではなく、「周囲から見えている自分(客観的な現状)」を一歩離れた視点からフラットに眺める(メタ認知)ステップが必要です。周囲の主観による評価だけではなく、管理職が部下をマネジメントする際の手法や基礎となる思考力・行動特性を客観的に測定し数値化することで、「自分にはこの力が不足しているから、今回の研修を自分ごととして受ける必要がある」というロジカルな気づき(意識の解凍)を与えることが行動変容の土台になります。

 

視点②:一律の「理想の管理職像」を押し付けない、多様な価値観へのアプローチ

現代の管理職が仕事に求める価値観や動機は非常に多様化しています。全員に一律のリーダー像を押し付けるのではなく、受講者一人ひとりが「自分はマネジメントを通じて何を実現したいのか」「何にやりがいを感じるのか」という個人のキャリア観や動機を紐解くアプローチが求められます。自身の価値観と、現場でメンバーを率いる上司としての役割を紐付けることで、現場での主体的な行動(内発的モチベーション)へとつながります。

 

視点③:「職種特化型スキル」だけでなく、環境変化に強い「ポータブルな技能」にも目を向ける

市場環境が激しく変化する現在、特定の部署でしか通用しない業務知識の賞味期限は短くなっています。人事が実施する管理職研修で重点を置くべきは、どのような環境や職種に身を置いても成果を出すためのベースとなる「汎用的技能(ジェネリックスキル)」の習得です。特にこれらのスキルは日々の業務では表面化しにくいため、従来の育成計画には組み込みにくいという側面があります。
情報を多角的に整理・分析して本質を見極める「情報分析力」や、人を統率するスキルなどは部署が変わってもそのまま活かせる強力な武器(ポータブルスキル)となり、実務環境の変化という壁を乗り越えるための仕掛けを構築しやすくなります。

 

 

3. 研修を「点」から「線」へ変える!実践と定着のための「仕掛け」のデザイン


 

上記の「3つの新しい視点」をプログラムに盛り込むだけでなく、研修を「一過性のイベント(点)」で終わらせず、「持続的な成長(線)」にするためには、研修後の職場における環境設計という「仕掛け」の構築が不可欠です。日常のマネジメントサイクルの中に、研修で得た要素を組み込んでいくために、以下の取り組みを仕組み化することが効果的です。この際、「メンバー(部下)をマネジメントする上司としての立場」と、「さらに上の経営層・役員からマネジメントされる部下としての立場」という、管理職が持つ2つの側面を明確に意識して仕掛けをデザインする必要があります。

 

■リフレクション(振り返り)の習慣化
研修の1ヶ月後や3ヶ月後に、受講者(部下としての立場)同士が「実際に現場で試してうまくいったこと・いかなかったこと」を共有し合うミニセッションを人事が設けます。これにより、記憶の風化を防ぎ、自身の業務・行動の軌道修正をサポートします。

 

■職場での共通言語化(連動の仕掛け)
研修で学んだ能力要件や行動指針を、日常の1on1や目標設定シートに組み込みます。具体的には、管理職自身がその直属の上司(経営層・役員)から受けるマネジメント面談や、管理職が自らのチームメンバー(部下)に対して行う評価面談の記録フォーマットに研修の要素を反映し、日常的にその言葉が使われる状態を作ります。

 

■客観的なセルフチェック
定期的に自身の行動特性や思考のクセを客観的にチェックできる物差しを用意し、管理職が日常業務(部下へのマネジメント)の中で研修の視点を思い出すきっかけを提供します。

 

しかし、これらの「振り返り」や「共通言語化」といった連動仕掛けを自社だけでゼロから構築し、さらに本人やその上司の「主観的な感覚(バイアス)」を排除した運用を行うのは容易ではありません。「何を基準に現在地を測り、会話の仕掛けを作ればよいのか」という、ブレない客観的なインフラが必要となります。

 

 

4. 管理職の行動変容を客観的に支えるインフラ:アセスメント「PROG@Work」


 

管理職自身の育成課題を根本から解決し、研修をやりっぱなしにしないための「客観的な仕掛け(モノサシ)」として、極めて有効なソリューションがアセスメントツール「PROG@Work」です。

PROG@Workは、どの仕事にも共通する成果のベースとなる「汎用的技能(ジェネリックスキル)」と「職業興味・志向」を科学的根拠に基づいた手法で客観的に測定する、河合塾とリアセックが共同開発した信頼性の高いアセスメントです。企業・大学など多数の組織で導入されており、実務における優れたパフォーマンスを裏付ける共通のモノサシとして機能します。

 

 


前述したプログラム再設計の「3つの視点」と「環境設計(仕掛け)」は、PROG@Workを活用することで、次のように仕組みとして一体的に実装できます。

① 主観を排除した「リテラシー」と「コンピテンシー」の可視化(視点①の解決)
PROG@Workは、「リテラシー(問題解決思考力)」と「コンピテンシー(行動特性)」を、4000人のモデル社会人データとの比較による採点手法で数値として可視化します。社内の人間関係(部下や上司の主観)に左右されない、管理職が自らの部下をマネジメントする際の「純粋なビジネススキル」の測定であるため、感情的に反発することなく、上司としての自尊心を傷つけずに「自分の現在地」をフラットにメタ認知できます。研修の事前課題として受験してもらうことで、「なんとなく受ける研修」から「自分ごととして受ける研修」へと意識をスムーズに切り替えることができます。

② 「職業志向」データによるキャリア観への寄り添い(視点②の解決)
能力面の測定に加え、受験者がどのような働き方に興味を持ち、何にやりがいを感じるかという「職業志向」もデータとして捉えます。一律の理想像を押し付けることなく、客観データを手がかりに「自分なりのマネジメント像」を深掘りさせることができるため、一人ひとりの内発的な動機に即した納得感の高い開発課題の設定を可能にします。

③ 職種を問わない「汎用的技能」が社内の仕掛け(共通言語)に(視点③と環境設計の解決)
PROG@Workが定義する「対人基礎力(親和力、協働力など)」「対自己基礎力(自信創出力、感情制御力など)」「対課題基礎力(計画立案力、課題発見力など)」の指標は、そのまま職場でのブレない「共通言語」、およびやセルフチェックの物差しとして機能します。1on1や目標設定シートに「PROG@Workで見えた課題」を組み込めば、部下としての管理職をマネジメントする直属の上司(役員や事業部長)も、ピンポイントで的確なアドバイスや声掛け(リマインド)ができるようになり、現場での行動の定着を強力にサポートする仕掛けが完成します。

④ 研修の成果をブラックボックスにしない「投資対効果(ROI)」の証明
さらに、研修の受講前後に経年で受験することにより、「研修を経て、管理職の行動特性(ジェネリックスキル)が具体的にどう変化したか」をビフォー・アフターの数値として定量的に捉えることが可能になります。経営陣に対して「管理職研修への投資が、組織のマネジメント基盤の底上げという確かな成果につながっている」ことを客観的ファクトをもって証明できるのは、人事部門にとって最大のメリットです。

 

5. まとめ:人事は研修の「オペレーター」から「転移のデザイナー」へ


 

管理職研修の効果を最大化するためには、「客観的な現在地の可視化」「多様なキャリア観への理解」「ポータブルスキルへの着想」という3つの視点でプログラムを再設計し、研修後も「点から線へ」つなぐ環境設計(仕掛け)を行うことが欠かせません。

これからの人事担当者に求められるのは、研修当日のタイムスケジュール管理といった「イベントの運営(オペレーター)」に留まらず、受講者の現場での行動変容を裏側から動かす「仕組み・仕掛けの設計者(デザイナー)」へと進化することです。

 

もし、これらを自社だけでゼロから構築・運用することにハードルを感じる場合は、研修の前後を通じて共通の指標で追える「客観的なアセスメントツール」の導入も有効な選択肢となります。PROG@Workのようなツールをひとつの仕組み(育成インフラ)として取り入れることで、管理職が上司・部下それぞれの立場で自発的な行動変容とキャリア自律に向き合う、実効性の高い環境づくりをスムーズに進められるはずです。

 

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