働く意欲を高める新人支援
成長予感とキャリア安全性を現場で育む5つのポイント
更新日:2025年5月21日
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新入社員が職場に慣れ始めると、業務にも徐々に対応できるようになり、表面的には順調に見える場面が増えてきます。しかしその一方で、新人を日々見守る上司の間ではこんな声が聞かれることもあります。
「新人が受け身になってしまっている」
「表情に元気がなくなってきた」
「目の前の仕事を“こなしているだけ”に見える」
仕事に慣れる一方で、「自分は何のために働いているのか」がまだ見えず、モチベーションや主体性の面で足踏みしている新人も多いかもしれません。
本記事では、このように”モヤモヤ”を抱えた新人に寄り添いつつ、意欲的に仕事に取り組んでもらうための先輩・上司としての支援のあり方について考えていきます。
そもそも、仕事の意欲を高める要因とはいったい何なのでしょうか。
弊社キャリア総合研究所が実施したPROG白書2024の調査結果から、仕事の意欲(エンゲージメント)には「職場環境の良さ」「仕事満足度」「成長予感」が大きく影響しているということがわかりました。
出典)PROG白書2024 ジョブ型雇用への処方箋:企業人4000人の働き方志向・仕事能力・学び行動調査/リアセック キャリア総合研究所,2024
ひとつめの「職場環境の良さ」の中身は、「周囲のサポート」「目標の共有」「心理的安全性」です。新人がすぐに助けを求められるサポート体制があること、目標を上司・部下間やチーム間で共有し取り組めること、心理的安全性が確保された環境であることが、仕事の意欲を高める上で重要な要素です。
ふたつめの「仕事満足度」は、上図のように仕事評価(評価されているという実感)と職場環境が影響していることがわかります。
最後の「成長予感」とは、「この会社/仕事を通じて自分が成長できそうだ」という予感のことです。任される業務が自分の成長につながりそうだという実感を持てることが、仕事の意欲に大きくつながります。
前章で述べた「成長予感」は、新入社員が自身の成長を実感し、将来への希望を持つうえで欠かせない感覚です。この感覚が醸成されることで、新人は日々の業務に意味を見出し、主体的な行動が生まれていきます。
そして、この“成長できそうだ”という見通しの積み重ねが、やがて「この先も社会で価値を発揮できる」「自分には成長の可能性がある」と信じられる「キャリア安全性」へとつながっていきます。この「キャリア安全性」という概念は、1999年にエイミー・C・エドモンドソン教授によって提唱されたもので、変化の多い環境下でも自分は成長し続けられるという前向きな展望を意味し、将来に対する肯定的な見通しを指します。
不確実性の高い現代において、こうした感覚を早期から持てることが、自律的なキャリア形成の原動力になります。新人期に「成長予感」を得られる環境を整えることは、キャリア安全性の土台を築き、組織における持続的な成長にもつながるのです。
では、新人の働く意欲を高めるために、現場ではどのようにしてこの成長予感およびキャリア安全性を高めていくことができるのでしょうか。以下に、特別な仕組みに依存せず、日常の中で実践可能な5つのポイントを紹介します。
1.小さな成長に気づかせる声かけ
キャリア安全性の根幹には、「自分は成長している」「学べている」という実感が必要です。しかし、新人自身がその成長に気づくのは難しく、周囲の関わりが不可欠です。たとえば、「前より対応がスムーズになったね」「自分の意見が出せるようになってきたね」といった具体的なフィードバックは、本人の中に「自分はこの職場で前進している」という感覚を芽生えさせます。このような小さな成功体験の積み重ねが、将来に向けた自信と展望の土台になります。
2.仕事の意味を伝える
業務を「ただの作業」として捉えると、自己の成長とのつながりを感じにくくなります。だからこそ、「この資料作成は、会議の意思決定に重要な役割を果たす」「この対応は、顧客との信頼を築く第一歩になる」といった業務の背景や意味を伝えることが重要です。目の前の仕事に意義を感じられることで、「この業務経験が将来に活きる」という納得感が高まり、キャリア安全性が醸成されます。
3.未来への問いを投げかける
忙しい日々の中でも、「この仕事を通じて、何ができるようになりたい?」「3年後、どんな働き方をしていたい?」といった未来志向の問いを投げかけることは、新人にとってキャリアを自分ごととして考えるきっかけになります。「今の経験が未来につながっている」と感じられることで、不確かな将来への不安が和らぎ、キャリアに対する前向きな姿勢が生まれます。
4.自分との比較で自己肯定感を育む
同期や先輩などの他者と自分を比較すると、不安や焦りを感じやすいものです。そこで、「先月よりも成長してるよ」「以前は迷っていたけど、今は自分の判断で動けているね」といった“過去の自分”との比較を促すことで、自己肯定感を高める支援になります。このような視点の転換は、自らの変化に気づき、自信が身につくきっかけとなります。
5.学びの言語化と未来への接続
週1回でもよいので、「最近の学びは何か」「次にやってみたいことは何か」を言語化させる習慣を取り入れることで、自分の経験を整理し、未来につなげる意識が育ちます。1on1や日報などの場面で、こうした問いを定着させるだけでも、日々の業務が「キャリア形成の一部」として位置づけられるようになります。
▼1on1に関する記事はこちら
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<新人の“成長予感”を育む現場支援ガイドの概要>
・配属直後に起きやすい“受け身”の背景と対応の視点
・成長予感/キャリア安全性とは?
・現場で使える声かけ・問いかけ例
・成長を言語化する週報・振り返りシートのサンプル項目
働くとは、自分の強みや価値観を社会にどう活かすかを模索する営みです。
配属後、新人が「働くとは何か」という問いに直面することが増えてくるかもしれません。
このタイミングで、“働く意味”や“自分の成長”について対話の場を設けることは、単なるスキル習得以上に価値のある経験となるはずです。
一人ひとりのキャリア観が育まれることで、やがて自律的に動ける人材へとつながっていく。そんな第一歩を、新人の配属後のこのタイミングで積極的に支援していきませんか?