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「好きこそものの上手なれ」という諺が示すように、「人が興味ある職業なり仕事なりに就くということは、その仕事を適切に遂行するに十分な前提を備えていると考えられる。また、興味のある仕事に就くということは、その本人には満足感や充実感をもたらす」(渡辺・野口:1999)と考えられます。このことを理論体系として組み立てたのがホランド(1966)です。
生得的特徴あるいは遺伝的特徴によって「子どもはある種の活動を好んだり、他の活動を嫌悪したりするようになる。子どもが成長すると、それらの好みははっきりした興味となり、それによって、人間は他からの報酬(周囲からの評価・賛美など)とともに満足を得るようになる。さらに長じて、それらの興味を追求することによって、より特殊な能力を発達させたり、逆にある種の潜在的能力を無視したりするようになる。
年齢による興味の
分化が進むと、関連した価値観の結晶化が起こる。これらの過程?好む活動、興味、能力、価値観における分化の増大?によって、特徴的なパーソナリティタイプが作られる」(渡辺 他訳:1990)とホランドは考えました。つまり、彼の論によれば、子どもがあまた持つ潜在的能力のうち、本人の興味と結びついた能力にみが発達し、その能力による成功体験がまた興味を増幅し、成長とともに人間の価値観を形成してゆくということになります。シャイン(1978)も、その著書『キャリア・ダイナミクス』の中で、「それらは、我々が自分の得意なことを望み、かつ評価するようになるという点、および自分が望むかあるいは評価する事柄で能力を向上させるという点で、相互に作用し合っている」と、同様の発達論的考えを示しています。
JFIが価値観・興味検査の形式を採用した理由は、これらの論に負うところが大きいといえます。すなわち、個人の有する価値観・興味にはより生得的で原初的な個人の性格・気質が反映されており、さらには、それらを観察することによって、すでに顕在化している能力あるいは将来において顕在化する可能性の高い能力をも推し量ることができると考えられます。
このような理論を背景に、リクルートHRD研究所(1998)は、「職種ごとに、その職種に満足感高く従事している人々の価値観・興味は違っている」ことを統計的に明らかにしました。方法としては、実際にある職業に従事し、その仕事に対して安定的に満足感を感じている人々を被験者とし、「職業興味」、「活動興味」、「職業領域興味」に関する194問の価値観・興味検査を実施します。これは多様に細分化された個人の価値観を194の次元でとらえようとすることを意味します。そうやって特定化されたある職種の価値観・興味パターンと、標準的な日本人(社会人2万人の中から、日本の標準職業分布〔男女別〕に従って抽出したサンプル)のそれを判別可能とするような合成変量(これを職種ごとの「適性得点」と呼ぶ)を求めることで、職業ごとの類似性を判別する方法を確立しました。 |
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