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オリエンタルランドの取り組む準社員のキャリア自律支援

個人の成長支援の先に見えてくる「組織の活性化」「採用力強化」

2019/10/29  タグ:  

東京ディズニーリゾートを運営する株式会社オリエンタルランドでは近年、準社員(アルバイト・パート)の個人の成長支援に本格的に取り組んでいる。準社員を対象に、キャリア自律を支援することで企業の成長にもつなげるという、大きな視野に基づく施策について、2018年10月にオープンした準社員向け「OLCキャリア・カレッジ」に企画から携わった、人事本部キャストディベロップメント部の天野明朗氏にお話をうかがった。

1.準社員の成長支援が会社にもたらすメリット

東京ディズニーリゾートを運営する株式会社オリエンタルランドの従業員はおよそ2万5000人。そのうち約2万人が準社員(アルバイト・パート)だ。フルタイムで働く人や5年・10年と在籍する人も多いとあって、その教育や処遇改善には力を入れてきた。2016年4月にも、契約社員の社員化、併せて昇給や昇格(グレードアップ)などの見直しを中心とした準社員人事制度の改正が行われたが、これを機に、準社員の「キャリア支援(成長支援)」が取組のキーワードとして浮上してきた。
その背景には会社として2つの課題意識があったと、人事本部キャストディベロップメント部の天野明朗氏は語る。
「準社員の働く意欲という内部環境の視点が、一つ大きな課題としてありました。例えば長く働く中で、仕事に対してマンネリ化してくることもあります。働き方や自分のキャリアを考える機会をきっかけに意欲が向上してくれれば、組織としての活性化にもつながります」。
2つ目の課題は外部環境の視点での「採用力強化」だった。
「給与以外の魅力としてテーマパークのブランドがありますが、今後いっそう人員確保が厳しくなることが予想される中で採用力を維持していくためには、『キャリアが磨かれる』という価値が重要と考えました。
協働力をはじめとする社会人基礎力が磨かれるという実績が重ねられていけば、外部に対して、ここで働く価値がより強く訴求できます」。

準社員向けのキャリアプログラム構築には社員登用も視野に入るが、主目的とはしていない。
「準社員のままグレードアップを目指す、社員登用を目指す、転職してオリエンタルランドから離れるなど、キャリアは人それぞれでよいという考えで、目的はあくまで個人の成長支援としました。会社は個人の成長をサポートすることで、人財力や企業のブランド力を向上させ、活性化と採用力強化につなげる狙いです」。

2.職場から一線をおいた、フラットな学びの場を設定

2018年10月、具体的な施策として準社員のキャリア支援を行う「OLCキャリア・カレッジ」が、舞浜駅近くの商業施設「イクスピアリ」内にオープンした。運営スタッフは社員4人、準社員3人。「パークで働くための業務研修も、パークで働くこと自体も、キャリア支援といえます。けれども、自分自身にフォーカスするためには、パークから一線をおいた、フラットな場で学ぶことが必要。勤務の行き帰りに寄れるけれども職場とは違う、そういう場所でこの『OLCキャリア・カレッジ』を形にすること自体に意味があると思っています」(天野氏)。


「OLCキャリア・カレッジ」オープンプログラム受講の様子

提供しているメニューは、誰でも参加可能な「オープンプログラム」と、メンバー登録が必要な「カレッジプログラム」の2つに大きく分かれている。その他、キャリアコンサルタントの資格を持つスタッフにキャリア相談をすることもできる。
オープンプログラムは、キャリアを考える機会があまりなかった準社員を想定し、キャリア形成の入門編にあたる「キャリアデザインプログラム」や「社会人基礎力診断(PROG)」が中心。さらに、「ロジカルシンキング」「表現力」など能力開発系のプログラムも用意されている。
「パークでは常日頃、スタッフ同士協働したり、ゲストとコミュニケーションをとったりして働くので、対人基礎力、とくに協働力や親和力はかなり高い。ですから、PROGの受検によって、自分の力を客観化・可視化し、対人基礎力や対自己基礎力はここで働いていること自体で身についているという自信と、さらに力を伸ばすことができるという自覚を持ってほしい。それはキャリア形成の土台にもなると思うのです」(天野氏)。
カレッジプログラムはそれらに加え、5時間×3回の「主体性向上ワークショップ(タクナル)」、「個人プロジェクト」での実践的な取組などがある。

3.現場は「キャリア不安への具体的な支援」を求めていた

OLCキャリア・カレッジは業務としての研修ではなく自由参加のプログラムだ。勤務時間内ではないので、業務に影響はないはずだが、しかし参加にはやはり職場の理解・協力が必要となる。「ここに時間を割くのはけっこう大変だったようです。その日に休みがもらえるかどうか、協力が得やすい部門もあった一方、人材その他の面で余裕がなく、ちょっと厳しい部門もありました」(天野氏)。スケジュール調整の要は、それぞれの現場の時間帯責任者であるスーパーバイザー(SV)だが、天野氏は、SVの「後押し」を確信していたという。「実は現場のSVは、準社員のキャリア不安に接する機会が多いんです。『自分はこのままでいいんですかね』というような相談を受けたとき、『社員登用の道もあるから頑張れ』などと激励することはできても、何か具体的な支援ができるかというと難しい。だから『あそこに行って、力をつけるのがいいよ』と言えるような、施設なり制度なりを求めている部分があると思っていました」(天野氏)。

しかし社内では、こうした歓迎の声ばかりでなく、導入への不安もあったという。準社員の自律を促せば、離職率が高まる懸念があったからだ。「準社員という雇用形態の不安から他社の正社員に転職するのを助けることになるのではないか、『流出を促進してどうするんだ』と見られてしまうところはありました」(天野氏)。
しかしもともと、約2万人の準社員の中には、卒業と同時に入れ替わる学生アルバイトや、他社への転職を目指す者などもおり、さまざまな要因で、多くが退職していく。社内登用などで退職率を下げる努力はしても、ある程度の流動化はどうしても残るだろう。それなら「いい流動化」を考えた方がいいと天野氏は言う。「一部流出してしまう人には、本人の望む就職先に行くことができ、オリエンタルランドで働いた価値があったと認めていただく。それが長期的に企業価値を高めるはずです」(天野氏)。

一般的に企業には、自社に貢献してほしい意図があるため、キャリア支援は自社内のキャリアパスに限定したものになりがちだ。キャリア支援は個人が自身の将来をどう考えて進むかの支援であるべきで、それが組織にとってもプラスになる、というオリエンタルランドの姿勢は、稀有なものといえるだろう。

4.個人の活性化を、継続によって組織の活性化へ

「OLCキャリア・カレッジ」の成果を問うとき、目的である「組織の活性化」と「採用力の強化」を指標とするならば、2018年10月の開設から1年経っていないこの時点で測ることは難しい。しかし「個人の活性化」の成果はすでに実感されていると天野氏は言う。「カレッジメンバーは第1期と受講中の第2期を合わせて115名ですが、その方たちについて現場のSVから、「課題感を持って主体的に取り組むような変化が見られます」というコメントが届いたり。本人たちからも、成長できている、職場でとても前向きになれている、という実感が持てたという声が多いです」。
例えばキャリアデザインプログラム受講後の声として、こんなものがある。

“キャリアという言葉のイメージが変わり、とにかく日々の積み重ねをしていく中で、今回のように時々立ち止まって、いろいろなことを考え直すきっかけがあればいいな、これからも作っていきたいなと思います。”

“過去、現在、未来を振り返って、想像出来ました。自分の今までを通して考えることができたので、納得できる未来が描けました。未来を実現するために、まずは行動することを始めようと思います。”

共通するのは、カレッジの講座内にとどまらず、日常に学びを継続させ、行動に反映させていこうとする姿勢だ。「本当にそれが組織の活性化までつながっていくかはまだ、分かりませんが、継続していければ、現場の変化がもっと大きくなっていくのではないかと期待しています」(天野氏)。
また、カレッジの修了生にフォローアップをする動きも、それぞれの現場独自の取組として出てきている。人員にいくらか余裕のある部門に限られるとはいえ、フォローアップに値する「成果」が認められ始め、人材流出に関する事前の不安も払拭されつつあるといえそうだ。

5.成長支援を基本に、「学びあう場」も目指す

第2期のメンバーは、募集期間終了前に定員に達したという。募集人数を増やしていく計画はあるのだろうか。「実績次第ですね。それと受講ニーズがどれだけあるか」(天野氏)。事前の準社員への調査では、キャリア不安を感じている層は約3割だったという。また、社員登用を目指す準社員も一定数存在しており、受講を希望するのはこれらの一部と考えると、「カレッジプログラム」1期あたり多くても100人程度が当面適正規模という判断のようだ。
「キャリア支援ということでいうと、現場の運営業務に特化したテーマパークオペレーション職という新しい社員制度が導入されます。身分不安などから社員にと思っている準社員は、そちらにある程度移行するかもしれません。それに伴って、「OLCキャリア・カレッジ」の位置づけも少し変わるかもしれないというところです。
基本は成長支援なので、『どんな働き方を目指すにしても、自分自身が成長を実感できる場所』ということは変わりませんが、対象を準社員以外の雇用形態にまで広げるかは、今後検討していくところと思います。雇用区分にかかわりなく、キャリアを考え、学びあい、成長できる場にしていければとも考えています」(天野氏)

雇用区分にかかわりなく行う成長支援の構想イメージ

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