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[新Vol.23] 名古屋商科大学

国際基準のMBA教育を学部にも展開、少人数でリーダー育成

2020/01/09  タグ:  

名古屋商科大学基礎DATA

本部所在地 愛知県日進市
設置形態 私立
学部 商学部/経済学部/経営学部/国際学部
学生数 2993名(2019年5月1日現在)

大学は、最終学歴となるような「学びのゴール」であると同時に、「働くことのスタート」の役割を求められ、変革を迫られている。キャリア教育、PBL・アクティブラーニングなど座学にとどまらない授業法、地域社会・産業社会、あるいは高校教育との連携・協働など、近年話題になっている大学改革の多くが、この文脈にあるといえるだろう。
このシリーズでは、「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目し、学長および改革のキーパーソンへのインタビューを展開していく(リクルート「カレッジマネジメント」誌との共同企画)。各大学が活動の方向性を模索する中、さまざまな取組事例を積極的に紹介していきたい。
今回は、名古屋商科大学が2016年度にスタートさせた、学部版MBAであるBachelor of Business Administration(以下BBA)の取り組みについて、栗本博行理事長にお話をうかがった。

1.マネジメント教育の国際認証を取得

名古屋商科大学(以下、名商大)の開学は1953年。栗本博行理事長は、「戦後、経済活動に必要な人材をアジアに、特に日本に育成するべく商科大学としましたので、商学以外のことはしてきませんでしたし、今後も絶対ありません」と言う。
そんな名商大が修士(経営学)の学位を与える大学院を始めたのが1990年。そこから約10年は、大学院教育とは何か、ビジネス教育を社会人に対してどう提供するかを模索するフェーズだったと栗本理事長は話す。

「ビジネススクールを名乗り始めたのは、1年制大学院を開設した2000年。国際的に通用するビジネススクールを目指すフェーズに入り、2006年にAACSB、2009年にAMBAと、2つの国際認証を取得しました」。
マネジメント教育の主な国際的認証団体は、アメリカのAACSB、イギリスのAMBA、EUのEQUISの3つがある。全ての認証を持つ「トリプルクラウン」は、世界に50ほどあるが、日本にはゼロだ。
「日本ではビジネススクールというと社会人向けの大学院を指すことが多いですが、海外では学部のマネジメント教育を含むのが常識です。本学は日本では初めて、学部も含めて認証を取得しました」。
認証団体のフィードバックを受けながら、国際基準のビジネススクール教育を実践し、AACSB認証から10年目の2016年、MBA:Master of Business Administrationのバチェラー(学士)版、BBAをスタートさせた。学部教育に展開されるのは、大学院開設の1990年から数えて約25年の積み重ねということになる。

2.4年間全ての授業がアクティブラーニング

名商大BBAの最大の特徴は、4年間の全科目・全授業がアクティブラーニング形式ということだ。
今回、名古屋キャンパスでBBA1年生の授業を見学し、ケースメソッド形式の授業を目の当たりにした。扇型形式の教室で、各自の前には大きなネームプレートとマイクがあり、入学して半年足らずの1年生約70人がわれ先にと手を挙げて意見を述べている姿には驚かされた。
「MBA式の参加型の経営学教育をマーケティング科目でやるだけなら簡単です。でも1年生の教養科目から始まって4年間、全部アクティブラーニングとなると、とても難しくなります」と栗本理事長は言う。

教員の労力は膨大だ。学生からの質問攻めが午前中の授業が終わっても続き、夕方まで解放されない、といったことも珍しくないらしい。しかし教員のモチベーションは高い。「アクティブラーニング授業は疲れるとはいいますが、嫌だとか持ちたくないとかいう話は聞きません。反応がある授業だから楽しいんですよね」。自身もMBA課程で教える栗本理事長はそう語る。
「われわれの考えるMBA教育はリーダー育成なので、自分だったらどう考えどう行動するか、一般論ではなく個別的に考えさせます。それには、事前にケースを見せ、アサインメントを提示してグループセッションをしてクラス討議、といった参加型のケースメソッド授業が適しています。人生において、コンビニの店長になる確率は、ゼロかもしれません。それでも『自分がこのコンビニの店長の立場だったら』というケーススタディをするのは、それぞれの立場に翻訳して考えることを学ぶためです」。

BBAは1学年約70名。経営学部経営学科と商学部マーケティング学科から、全学定員約800人の1割までを「名古屋キャンパスにおける履修モデル」に割り振っている。コースでも専攻でもなく、1年次から4年次までの全科目が必修という特別な履修モデルだ。
全て必修とする理由の1つは、「偏食」を許さないことだ。「ビジネススクールで一番人気の科目はマーケティング、次が経営戦略。逆に、ファイナンス系、アカウンティング系の科目は取りたがりません。リーダー育成である以上、そういう偏食はさせません。マーケティングのスペシャリストになりたい気持ちは分かりますが、それだけでは企業の経営は務まらないのです」。

学生にはかなりのハードワークが求められる。各ケースに「自分が店長の立場だったらどう対応するか」のような設問(アサインメント)が必ずあり、1授業あたり3時間ほどの予習なしでは対応できない。
こうしたBBAスタイルの参加型授業についてこられる学生を選抜する必要から、センター利用型、指定校推薦等すべての入試で学生1対教員2の面接を行っている。面接での評価ポイントについて栗本理事長はこう話す。「自分の考えで話せるか、といった一般的なポイントに加え、面接するのはBBAで教える教員なので、自分のクラスに貢献してくれるか、という視点があります。『この人と一緒に働きたいか』で評価する企業の採用面接と同じですね」。

3.ケーススタディで企業を見る目を養う

BBAの「学ぶ」は、「働く」の始まりである就活から十分に活用される。自分が予習しなければ授業についていけないという学生生活で、何ごとも自分で事前に準備する習慣がついているうえ、毎日のディスカッションがコミュニケーション能力を高めているので、個別面接やグループ面接での評価は高い。
また、学生は1年間で100以上のケーススタディを行い、4年間では400~500社の会社名を知ることになる。「BBAの学生は、テレビコマーシャルで見るようなB to C以外のベンチャーやグローバルニッチトップも調べ、4年間で培った会社の成長力を見る目で見て、決めていきます。自分で調べて自分で決めるので、満足度はかなり高いようです」。

4.1期生がコンサルティング企業に内定

BBA4年間の成果の第一は、1期生(2020年3月卒)の就職内定状況だ。大手有名企業、学部卒の採用が極めて少ないコンサルタントをはじめ、多くの学生が自身の希望した企業に決まっているという。
これはいわゆる「出口」の成果だが、「入口」で見る学生のクオリティーも、1つの指標としている入学者の評定平均が年々上がっているとのことだ。
また、栗本理事長が成果としてあげるのが、高校教員にBBAの魅力が伝わり出していることだ。アクティブラーニングに関心を持つ高校教員の見学や研修が非常に増え、近隣県で県立の全高等学校の教員の新任研修をした例もあるという。
「さらにもう1つ、少数派ですが、ビジネススクールの卒業生がお子さんを入学させる例があります。自分が受けたあの授業を受けさせたいと。これもうれしいことですね」。

5.全て英語で学ぶ「国際高等学校(仮称)」を開校

これからの課題と展望は「まずは英語、グローバルBBA」と栗本理事長は言う。「2、3年はかかりますが、教育課程の国際化は国際認証校として絶対必要です」。
関連して、グローバルBBAの高校版を日進キャンパス内に作る計画がある。全寮制で、全授業を英語で行い、ケースメソッド主体の「国際高等学校」(仮称)が県の認可を得て、2021年秋の開校を目指している。
「MBA教育の高校版といえるインターナショナルバカロレア(IB)の認定校とする予定で、IBで学んだ生徒をグローバルBBAに受け入れる流れを、認証校としてきちんと作りたいのです」。
国際化以外の課題としては、BBAについていけない、1割弱の学生への対応がある。
BBAからドロップアウトしても、学内の通常の学士課程(BSc:Bachelor of Science in management)で引き続き学習ができるので、大きな問題はないともいえる。しかし栗本理事長は「それがあるから何もしないというのもおかしなことです」とし、「入口時点で学生をどこまで目利きできるか、もしくはアジャストするように追い込んでいけるか」に課題感を持っている。

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