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学ぶと働くをつなぐ授業拝見[Clip Number 009] 東海大学

東海大学チャレンジセンター「チャレンジプロジェクト:ライトパワープロジェクト」

2020/02/21  タグ:  

東海大学の「チャレンジプロジェクト」は、学生が企画・立案し、年間を通じて活動するプロジェクトだ。各プロジェクトは「達成目標」「学びのテーマ」を自ら掲げ、コーディネーター(職員)、アドバイザー(教員)の支援を受けながら、社会で必要とされる実践力を養う。
今回は数あるプロジェクトの中から「ライトパワープロジェクト(LPP)」を取り上げ、「授業」に代わりソーラーカーチームの活動を「拝見」した。

実践力を養う課外活動として大学が支援

東海大学の「チャレンジプロジェクト」は、学部・学科・学年の枠を超えて自ら取り組む課外活動であり、任意参加で離脱も自由、もちろん新たなプロジェクトを立ち上げることもできる。2019年度は全国のキャンパスで、ものつくり、ボランティア、地域活性化など約20のプロジェクトが活動した。
課外活動として部活動・サークル活動と共通する点も多いが、大学側が「教育の一環」と位置づけ、「チャレンジセンター」を中心に手厚く支援している点は異なる。採択されたプロジェクトへの主な支援内容は、活動全般の相談役となるコーディネーター(職員)の配置、プロジェクトの内容に関する専門知識や技能をもつアドバイザー(教員)の配置、活動スペースなどの環境整備、支援金の支給などだ。

ソーラーカー・電気自動車、人力飛行機の2チーム合わせて90人ほどの学生が参加するライトパワープロジェクト(LPP)は、2006年のチャレンジセンター開設以来活動を継続している、「チャレンジプロジェクト」のシンボルともいえる存在だ。さらにソーラーカーチームは、1991年発足の「東海大学ソーラーカープロジェクト」の流れを引き、国際大会で常に優勝を狙う強豪として名高い。

「ライトパワープロジェクト」2019年度企画書より抜粋

活動内容や目的は前年までの蓄積をもとにブラッシュアップし、継承している。最大の達成目標は「国際大会での優勝」だ。それに向けての車両設計や製作、試走などが活動の中心だが、「ものつくりの楽しさやクリーンエネルギーの大切さを伝える活動」ももう一つの柱だ。小学生や幼稚園児を対象とする「エコカー教室」「ものつくり教室」が恒例行事となっている他、学内外での車体の展示活動を多いときで月に3~4回と積極的に行っている。

コーディネーター、アドバイザーも学生と同じユニフォームに身を包み「BRIDGESTONE World Solar Challenge 2019 (於オーストラリア)」に参戦(2019年9月)。準優勝の好成績を収めた

近隣の幼稚園児を招いたソーラーカー見学会(2019年11月)

「ライトパワープロジェクト」2018年度報告書より抜粋

活動拝見に伺った2019年12月上旬は、9月の国際大会という最大のイベントの後で、活動に比較的ゆとりのある時期とのことだった。学生だけのミーティングでは、リーダーが「何か話したいことのある人?」と投げかけると次々に発言があり、「それぞれ自分で調べて自分で考えること」「次のイベントは1年生が企画担当だから、自分たち上級生はフォローに回る」などの言葉の端々から、自主的に運営されている様子が見て取れた。
ミーティングを拝見した後、ソーラーカーチーム学生リーダーの武藤創さん(工学部動力機械工学科4年)、アドバイザーの佐川耕平ソーラーカーチーム総監督(工学部電気電子工学科助教)、コーディネーターの村井健太郎さん(チャレンジセンター職員)にお話を伺った。

湘南キャンパス内のものつくり館2Fの部室兼工房といった趣の活動スペースでミーティング。この日は30人弱が参加

学生リーダー武藤創さん(左)、アドバイザーでチーム総監督の佐川耕平助教(工学部電気電子工学科)。背景の車体は2019年型Tokai Challenger

教員は「一緒に取り組み、一緒に悩む」

目標が明確で、それに向けて自分がするべきことがわかり、手を動かすことができるというのは、ものつくり系プロジェクトとしてのLPPの強みだが、半面、専門性の高さが弱みとなることもある。
コーディネーターの村井健太郎さんは、他のプロジェクトのコーディネーターを務めた経験からこう語る。「社会貢献系のプロジェクトは、自力で全部やりたいという思いの強い学生が多い。けれどもライトパワーは、技術力や知識の面で、アドバイザーの先生を頼らなければ目標が達成できないプロジェクトで、学生はそのことがわかって参加している。できないことを教わりながら、その中で自分のできることをしながら、という成長のあり方は、他のプロジェクトとは少し違うかもしれません」。
もとより、このプロジェクトは学生の技術力向上が目的ではない。チームとして約30年の技術的蓄積に、学生が4年間で追いつくはずもないのだ。アドバイザーの佐川耕平総監督は「いったん優れた車体ができると、学生だけの力でそれを超えるのは技術的に難しい」と指摘し、「だからといって教員が一から答えを教えれば、そこで終わってしまう。課題だけを投げっぱなしにするのもよくない」と指導の匙加減を語る。

こうした中で学生は自身の成長をどこで実感できるのか。学生リーダーの武藤創さんに尋ねてみると、「自分が、あるいは誰かが成長する・しないというのではなく、チームとしての成長ですが」と言い、その機会として海外遠征を挙げた。「遠征に行ける学生は20名ほどに限られますが、それ以外のメンバーも日本からバックアップで参加して、一体感のあるいいチームに成長したと感じました。上級生と下級生、学生と先生という隔てなく物が言い合える。たとえ意見が違って激しく言い争っても、険悪になってそのままけんか別れになるなんて想像できないくらい、いい人間関係が築けています」。
佐川総監督は学生時代からソーラーカーチームに参加し、卒業・就職後はOBとして、そして2017年からは教員・アドバイザーとして関わり続けているという経歴もあり、学生にとって「先生」であると同時に「憧れの大先輩」でもあると武藤さんは言う。それは佐川総監督が心がける「指導者であると同時にプロジェクトの一員として、一緒に取り組み、一緒に悩む、というスタイル」と呼応する。「いつも正解を教える先生ではなく、我々も失敗する人間だということを、学生には知ってもらいたい。そのためには、ドライに付き合うだけではダメだと思っています」。学生たちとはプロジェクトを離れていっしょに食事をしたり、ドライブに行ったり、映画を観に行ったりもする仲だという。

こうした濃密な人間関係構築やチームの成長には、ある程度の期間が必要だ。これまでこの連載で取り上げてきた正課の授業と、東海大学チャレンジプロジェクトの大きな違いとして、入学から卒業まで4年間といった長期の活動が可能なことがあげられる。期間が長い分、取組に失敗があっても改善してリトライする機会があるのも大きなメリットだ。PDCAを何度も回せる、と言い換えてもいいだろう。
しかしこのメリットを活かすには、離脱防止が肝心となる。武藤さんは「1年生から4年生まですべてのメンバーの『居場所』づくりには気を使っています」と言い、佐川総監督も「『居場所』があれば辞めないと思います」と同じ言葉を口にする。車体製作が忙しくなると、3、4年生中心の作業になりがちで、1年生は手が出しにくく、居場所が見出せずに辞めてしまうことがあるという。それを防ぐため、あえて下級生主体の機会をつくり、役割を持たせる工夫をしている。佐川総監督は「最初は役割を与えるのですが、『あること』ができない自分にも『別のこと』ができると自ら役割を見つけられれば、それも大きな成長といえるのではないでしょうか」と語る。

対自己基礎力全般、課題発見力、統率力が向上


LPP参加学生(一部)のコンピテンシー伸長(1年次→3年次)をPROGスコアで見てみると、大分類では、対自己基礎力、次いで対人基礎力が、大きく伸びている。中分類では、自信創出力、課題発見力、感情制御力の順に伸びが大きい。
東海大学チャレンジセンターが育成目標として定義する「自ら考える力、集い力、挑み力、成し遂げ力」と対応させると、自ら考える力は課題発見力や計画立案力、集い力は対人基礎力、挑み力は対自己基礎力、成し遂げ力は実践力ということになるだろうか。データ数は限られるものの、3つの中分類が揃って伸びている対自己基礎力、すなわち「挑み力」の向上は顕著に見える。
中分類で際立っている自信創出力の伸長について、佐川総監督は「技術レベルが上がって自信がつくのではない」と言う。「技術力よりも自信の源となるのは、失敗してもいいからチャレンジしてみる、手を動かしてみること。それによって自分の課題を見つめる力がつき、自信が生まれるのだと思います。しかも『チャレンジした』ことは、特定の技術とは異なり、別の分野でも役立ちます。例えば社会に出てソーラーカーとまったく関係ない仕事についたとしても、自信を持って取り組めるはずです」。まさにジェネリックなスキルが育成されているといえるだろう。
佐川総監督はまた、学生には社会で活躍する能力が「ある」と考えている。「潜在しているその能力に学生自身が気づく機会を提供するのが、大学としてできること。その機会・小さなことでも自分でチャレンジするきっかけを作るのがチャレンジプロジェクトの意義だと思います」。

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