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新卒採用「大学3年の12月から」に8割以上が「反対」。その理由は?
みなさんのご意見から

2012/06/11  タグ:  

2013年春卒業予定の大学生の就職活動は、例年より2か月遅く、12月1日に「広報活動」が解禁となった。経団連が倫理憲章の維持を表明したため、2014年3月卒の新卒採用も(2012年)12月1日解禁となる見通しだが、これについてのみなさんの賛否とご意見を伺った。

「時間が足りない」が問題の本質なのか


みなさんのご意見はグラフのとおり、8割以上が「反対」だった。
「反対」への投票理由には、学生の立場から見た就職活動への悪影響に触れたものが目立った。
「学生が、生の企業情報に触れる機会が遅くなり、助走期間のないままに、本格スタートという流れになっている」
「企業研究活動期間が短くなる⇒気持ちばかりが焦る⇒とにかく動くことが目的となり就活が作業化⇒充分な研究なしに選考を受け⇒当然ながら上手くいかないという結果を招いた学生が多かったように感じた」
学生や大学関係者の「時間が足りない」という焦りの声が聞こえてくるようなコメントだ。

一昨年までのルールと比較して「10月解禁がよかった。戻したほうがいい」というトーンのコメントが多かったことからも、就職サイト経由のエントリーや説明会のための時間が十分でないという実感は伝わってくる。しかしそれとは少し違って、12月解禁には反対しつつ、必ずしも10月解禁に賛成ではない意見もあった。
「この改正そのものに強く反対というわけではないが、『新卒というワンチャンス』という状況が変わらない限りは本質的な改革とは考えにくいと感じる」
「学生にとって12月であることの必然性はあるだろうか」

また、経団連の倫理憲章改定は「学業に専念する十分な時間を確保する」ことが主な趣旨だったが、現場の感覚とはずれがあるようだ。
「大学生の勉強時間の確保という問題でいうと、就活はむしろ早期に行われた方が良いのではないでしょうか? 大学での勉強は、確かに1~3年も大事ですが、むしろ進路が決まり、安心して4年生の卒論・卒研に集中できる方が良いと思います」
「学業に専念という一面的な部分には多少の効果はあるかもしれないが問題の本質はそこではない気がする」

それぞれの理由

賛否双方の投票について「その理由」の代表的なものを一つずつ紹介しておこう。

新卒採用活動を大学3年の12月からとすることに「賛成」の代表的な意見
「2つの理由で賛成です。1つ目は企業からの採用確定(内定)の出し方は2こぶの形状を示しているため、就職活動が秋以降まで続く学生が相当数いることが明らかであるという点です。就職活動が学生から社会人への移行期における大きな成長機会であるという前提で議論したとしても、1年以上の長きにわたって就職活動中という状況は学生が活動を継続しているかどうかはさておき、異常ではないかと思いました。
2つ目はエンジンのかかりの遅い学生へのインパクトです。彼らにとっては解禁が10月でも12月でもスタート時期にさほどの違いはないと思っています。むしろ自校の学生の特質を見極めて、彼らが解禁と同時に動き始め、かつ辛抱強くじっくりと続けられるような支援(情報提供も含む)が大学側に求められるのではないでしょうか?」(Tさん/大学講師)

新卒採用活動を大学3年の12月からとすることに「反対」の代表的な意見
「就職活動の準備期間が十分にとれない。そのため学生が自分の就職活動の軸を自覚しないまま、さらに業界、企業、職種に対する理解をしないまま現実的な就職活動に入っていく姿が見られた。従来の10月スタートではゆるやかに就職活動に向かい、試行錯誤し、失敗があっても軌道修正をする余裕があったように感じられる。」(Oさん/キャリアカウンセラー)

昨秋以来の現場の混乱ぶりから、反対が多いことはある程度予測していたが、ここまで不評とはやや意外だった。「学業に専念できない」「長期化する就職活動は、精神的・経済的に学生を疲弊させる」など、10月解禁の問題点がさまざま指摘されたからこそ、2か月の後ろ倒しに踏み切ったのではなかったか。学生からも、大学からも企業からも、歓迎の声がほとんど聞こえないとは、いったい誰のため・何のための変更だったのだろう。
今回の変更点は、企業の「広報活動」の開始が10月から12月になったことだけで、「選考活動」の4月開始は例年どおり。選考プロセスにもとくに変更はない。単に時期をずらすだけでは問題解決にならないことがはっきりした今、学生が真の就業力を身につけ、それが正当に評価されて就職できるための、新卒採用の仕組み自体をきちんと議論すべきだ。
就職(採用)活動を「障害物競走」に例えるなら、スタートラインを2か月前方にずらしただけで、コースも「障害」の数も種類もほとんどそのままというのが現在の状況だ。競走のルール、ゴール設定やその位置、出場前のトレーニング法等々、そもそも「障害物競走」でいいのかという根本からの見直しが求められているのではないだろうか。

角方正幸(リアセックキャリア総合研究所所長/「就業力の広場」責任者)

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