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社会 (産業界) が大学と大学生に求めていること

新卒の就職実態と課題への対応策(1)

2013/06/10  タグ:  

角方正幸(リアセックキャリア総合研究所所長/「就業力の広場」責任者)

2012年10月から、財務省総合財政研究所に設けられた「若年者の雇用の実態と効果的な対応策に関する研究会」に参加した。同研究会は2013年5月に報告書を取りまとめ、概要が財務総合政策研究所サイト上でも公開されている。

就業力関連ニュース
「若年者の雇用の実態と効果的な対応策に関する研究会」報告書概要を公開

http://www.riasec.co.jp/hiroba/archives/4525

この研究会で私が担当した「新規大卒者の就職実態と課題への対応策~大学現場でのキャリア支援を通じて~」の内容を、当サイトのためにまとめなおし、4回にわたって掲載する。

企業が学生に求める能力とは:人材ニーズ調査から

リアセックでは、全国の大卒を求人している企業を対象に大規模な(有効回収数680サンプル)「人材ニーズ調査」を行った。これによると、対人・対自己・対課題の基礎力のうち、企業が重視しているのは対人基礎力である。
企業規模別の分析では、規模による顕著な違いは読み取れない。強いて言えば、ほとんどの項目で大企業のほうが得点が高く、要望水準が高い傾向にはある。
業種別では、サービス業は「他者に対する気配りができる」、情報通信業は「自分の考えを、筋道立てて伝えることができる」が他の業種に比べて高いなど、それぞれの業界特性が出ている傾向がある。

ただ、着目すべきは「規模、業種、地域の違いより個別の企業ごとの差のほうが大きい」という点である。図表(クリックすると拡大)は、22の基礎力項目について680社の平均点と個別の2社の得点を示している。「全体平均」の上下のグレーの部分が分散なので、項目ごとに見れば約3分の2はこのグレーの帯の中におさまっているはずだが、X社、Y社とも、その範囲から大きく外れた点、すなわち「平均とは異なる評価をしている項目」があることがわかる。
(出所)拙著『就業力と大学改革』

企業の人材ニーズは個別にさまざまであり、学生の能力・適性も個別に異なっている。就職支援とは、いろんなタイプの企業といろんなタイプの学生とをマッチングすることであり、だからこそとても難しいのだと思う。

中堅・中小企業の「求人」、中堅大学の「求職」の現状

従業員数1000人以上の大企業は約3000社、その求人数は15万人程度で近年大きく変動していない。一方の大学は約800校あって、就職希望者は60万人。つまり、大手企業が採用を望むのはそのうち上位20~25%程度ということになる。
大手に採用されない約80%の学生は中堅・中小企業に就職していくことになる。大手でも有名でもない企業と、銘柄大学でない学生のマッチング効率をどう高めていくのかというのが一番今問われていることである。
日本には従業員数5人以上の企業が約70万社あり、そのうち大卒を求人する企業は、規模を問わなければ約7万社と推計されている。しかしそのうち「リクナビ」「マイナビ」などのサイトに求人を掲載するのは、7000社ほどでしかない。大学が独自に持つ「オリジナル求人」が重要になってくる所以である。特に中堅以下の大学は、一般求人では大手企業に採用されにくい(上位校との競争に負ける)ため、大学独自の求人を重視すべきである。このような大学の場合、求人数で独自:一般=4:6から5:5程度となっており、「オリジナル求人」が意外に多い。

ミスマッチの現状と対策

次に、全体の求人数はほぼ充足していても内定・就職が難しい「ミスマッチ」について、現状を見ておこう。
まず、勤務地のミスマッチがある。例えば関東地方のある大学で、学生の求職希望を「地元」「東京都」に分けて集計し、それぞれの求人数を求職数で割って倍率を出してみると、地元の求人倍率は、すべての業種、職種で1.0を下回るなど、東京都や全国の大卒求人倍率と比較して、圧倒的に低かった。学生の地元志向の強さが反映されている。
業種・職種によるミスマッチも大きい。学生の人気が高い職種は、募集人数の限られる職種でもあることが多い。
さらに指摘したいのが就職活動の期間(時期)によるミスマッチである。企業規模が大きい企業ほど、募集が終了する時期は早い傾向がある。5000人以上の従業員規模では約半数(46.0%)が募集を終了している8月末時点でも、従業員数100人以下の小企業では、終了しているのは約20%にすぎない。こうした企業は学生が就職先として考慮せず、実際、就職もしていない。企業側から見れば「採れていない」ということになるから、ここにもミスマッチが存在している。

これらのミスマッチ解消にも、大学独自の求人開拓は有効である。オリジナル求人は一般求人に比べて母集団が小さいため、応募すると即面接とつながるケースも多く、内定獲得可能性が高い。
「大学オリジナル求人」は、地元の中小企業が多いのが特徴である。大学オリジナル求人の求人倍率の方が一般求人に比べいずれも低い(求人数が少ない)ことを考え合わせれば、学生希望の多い業種・職種で地元企業とのパイプをつくり、オリジナル求人をいっそう増加させることが、地域、業種・職種のミスマッチ緩和につながるだろう。
時期によるミスマッチ対策は、中堅私大では9月以降の就活が重要、俗に「大手の内定がひととおり終わってからが勝負」と言われるとおりである。この時期、一般求人に比べて各大学独自の求人は募集が終了していないものが多いということも調査からわかっている。

学生と企業のマッチング精度を高めるには、やはりインターンシップが有力な方法であると思う。次回、企業と大学が「役割分担」ではなく「協同・連携」によって若者を育成するインターシップの実質化について述べる。

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