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大学生の就職率改善への政策提言:大学への提言

新卒の就職実態と課題への対応策(3)

2013/06/24  タグ: ,  

角方正幸(リアセックキャリア総合研究所所長/「就業力の広場」責任者)

大学生の就職(企業側から見れば新卒者の採用)をめぐる現状を(1)で述べ、それに対する方策の1つとして、大学・企業・行政が連携して行うインターンシップの有効性を(2)で示した。ここからは、大学・企業・行政の三者それぞれに対して、大学生の就職率改善のための政策提言を示していく。

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大学への提言

①高大一貫の就業力育成教育
学生の就業力や基礎力を醸成するためには、高等学校・大学が一層連携することが不可欠である。大学4年間のみでキャリア支援をするには限界があり、高大7年一貫教育、高大連携インターンシップなど、キャリア構築・キャリア支援の連続性に留意した教育システム全体の見直しが必要な時期に来ていると考える。

②高校入学時にキャリア教育を徹底する
高校1年生でキャリアのアセスメントを義務化することを提言する。雇用の現状やキャリアの問題を学び、就業観を身につければ、大学選びの基準がおのずと変わってくるだろう。

③大学独自の求人開拓、プラス大学自らが雇用機会を作り出す努力
現在、企業の採用余地にも限界があることから、大学独自に求人を開拓することが望まれる。
既存の企業からの求人を開拓するだけではなく、スモールビジネスの開発に積極的に取り組むことも有効だろう。イギリスでは、大学の就職支援室(「キャリアセンター」等)が、ビジネスを創造し、学生を試験的に雇用・訓練し、訓練後に就職させるという取り組みを行っている例がある。

④ゼミ形式など、就職支援のスタイルの工夫
FD/SDの強化はもとより、就職支援はゼミ形式など集団での活動を基本とするのがよいだろう。最近の学生は打たれ弱くナイーブであるからだ。個人の責任で就職活動をさせるのではなく、学生をグループ化し、仲間意識を醸成して就職活動をさせることにより脱落者を出さないような仕組みも必要である。

⑤学生の大学生活実態を漏れなく把握
自立した個人の尊重も大切だが、昨今はそれよりも「面倒見のいい」ことのほうが求められている。クラス制などを設け全員の動向を把握することが、中退者や諦め層を作らない戦略として有効である。

大学によるキャリア支援は効率的なのか?

ここでいったん視点を変えて、大学でのキャリア支援・キャリア教育の有効性を「費用対効果」の面から見ておこう。
ある大学Aで開講した「キャリア特別ゼミ」では、履修者の就職率は非履修者の就職率に比べて約2割(22.4%)高かった。1学年の受講者数は250名なので、250名×2割=50名が「効果」の実数と推定できる。
一方の「費用」概算は、1学年250名×2学年=500名を担当するキャリアアドバイザー(講師)5名の直接人件費、一般管理費、求人開拓を考慮すると、年間3250万となった。したがって、学生1人当たり65万円の投資(3250/50=65)ということになる。
これは大学内での卒業前支援であるが、行政が行う卒業後支援の一例として神奈川県での既卒者就業支援事業について見てみると、民間委託の委託費が6億円で、就職者数の目標は300人であるから、1人当たり200万円の投資(6億/300=200万)となっている。かなりラフな比較なので一概には言えないが、既卒者対策は約3倍のコストがかかる、あまり効率のよくない事業である疑いがある。

次回は企業・行政に対する政策提言を示す。

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