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学修成果の可視化と活用事例 vol.8

大学院生のトランスファラブルスキルを
評価、フィードバックすることで
スペシャリストとジェネラリストの両立を促進

国立大学法人福井大学 大学院
本部所在地本部所在地:福井県福井市
学生数博士課程(前期・後期)学生数:992名(2025年5月1日現在)
インタビュイー
福井大学 大学院 工学研究科
研究科長 教授
永井 二郎

2026/03/28

大学独自に定義した大学院生のトランスファラブルスキルを、PROGを活用して可視化し、学生個人にフィードバックして育成につなげるという、本邦初の取組についてうかがった。

ジェネラリストとして重要な資質・能力のトランスファラブルスキルを定義し、可視化の方法を検討

本学の工学研究科博士前期課程におけるトランスファラブルスキルの可視化の試みは、令和2年度の改組に端を発しています。改組では「将来の産業構造の変革に対応できる人材」の育成を念頭に、当時から高まりつつあった社会ニーズに応え「スペシャリストとしてだけでなく、ジェネラリストとしての資質・能力も備えた高度専門技術者」を輩出することを目標に掲げました。
学修成果の可視化については、全学生が修了時に提出する「博士前期課程における達成報告書」による間接評価を改組当初から行い、その後、ディプロマ・ポリシーに掲げた能力などを、科目の成績を総合化することで直接評価して可視化する取組も始めました。
一方、ジェネラリストとして重要になるトランスファラブルスキルについては、より丁寧な可視化が必要と感じましたが、学内外を見渡しても適切な可視化手法がありませんでした。そこで、汎用的(ジェネリック)スキルの測定ツールとして標準化されたPROG テストを導入し、工学研究科の教育課程に即して再構成した手法を開発・運用することとなりました。

トランスファラブルスキルと授業科目の関係を整理

ジェネラリストとして重要な汎用的スキルである「トランスファラブルスキル」の内容ですが、本学では、全学的な議論によって、大学院におけるトランスファラブルスキルを3区分12項目に整理しています。

工学研究科では、トランスファラブルスキルの可視化を進める前提として、それらの12項目と博士前期課程で開講されている科目との関係を整理しました。「学修成果の可視化」というからには、スキルと教育課程との関係を明確にしておく必要があると考え、各科目の履修によって伸長が期待されるスキルは何か、対応をつけたのです。

トランスファラブルスキルとPROGの対応

次に、PROGテストの多岐にわたる測定項目とトランスファラブルスキルの12項目との対応関係を定めました。この作業は、リアセック社さんにご助言をいただきながら行いました。

図のように、本学トランスファラブルスキルの項目とPROGの測定項目は1対1の対応にはなっていません。また、それぞれの項目とPROGの測定項目との関連には強弱があります。担当教員とリアセック社さんとの間で議論を重ね、測定項目Aは1.0、測定項目Bは0.5の重みでトランスファラブルスキルの項目1に寄与するなど、加重も導入しつつ確定させていきました。

大学院生のトランスファラブルスキルを、PROGを使って可視化して個人にフィードバック

この対応関係を用いることにより、PROGテストのスコアを本学トランスファラブルスキルのスコアに変換できます。工学研究科では博士前期課程の学生の9割程度がPROGテストを受験しており(学生の自己負担なし)、受験者全員に対してこの方法でトランスファラブルスキルのスコアを算出し、結果をレーダーチャートの形で可視化してフィードバックしています。

こうした取組を進めていくにあたり、工学研究科の教員から、学生にとって汎用的スキルは必ずしも馴染み深いものではないため、「可視化の結果(レーダーチャート)を正しく理解してもらうための解説コメント」や、「伸びしろのあるスキルをさらに向上させるためのヒント」の提供が不可欠であるとの指摘がありました。それを受け、フィードバックの際には「スキル分析ガイド」と「トランスファラブルスキルのさらなる開発のためのヒント」を個人のスキルシートに付して提供し、学生が継続的に自己研鑽に取り組めるようにしています。
このように、トランスファラブルスキルの内容を定め、授業科目との関連付けを行い、PROGテストを活用して可視化し、学生の成長に役立つ形でフィードバックしています。

人材育成状況の検証と今後の展望

博士前期課程では、令和7年度に「教育課程のミニレビュー」を実施し、改組後の人材育成状況を検証しました。
修了時に「ジェネラリストの資質が増えた・十分増えた」と評価する学生の割合は、令和3年度の60%から令和6年度には77%と大きく増加していることが確認されました。これには、可視化とフィードバックによりトランスファラブルスキルの重要性が学生に伝わったことが大きく影響しているように思います。つまり、取組を通して、学生の意識が「専門的な能力を身につける」から「それに加えて汎用的な能力も身につける」に変わってきたのではないか、目指す人材像について意識変革が進んだのではないかと感じています。
もちろん、大学院ですから専門性が第一であることは当然です。学生ごとの教員チーム「POS-C(Program of Study Committee)」が指導するオーダーメイド型の教育制度のもと、「スペシャリストの資質が増えた・十分増えた」の割合は令和3年度の70%から令和6年度には81%に増えました。このように、スペシャリストとジェネラリストの能力・資質を兼ね備えた高度専門技術者の育成が進んでおり、令和4~6年度の就職率は100%になっています。
ミニレビューでは、嬉しいことに、企業側委員から汎用的スキルの重要性を指摘する声とともに本取組に対する高い評価をいただきました。

これまでの分析により、工学研究科の学生は、トランスファラブルスキルのうち、「課題解決力」と「異分野融合力」などの対課題スキルに強みを持ち、一方で対自己スキルには伸長の余地があることがわかってきました。これらのことやミニレビューの結果を踏まえ、一部の科目の内容見直しを現在検討しています。工学研究科では、今後も学修成果の可視化を継続し、得られた知見を教育課程にフィードバックして教育の質向上に活かしていきます。

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