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[Vol.25]亜細亜大学における就業力育成の取り組み

産学連携を強化しアジアで活躍する人材を育成

2015/09/07  タグ:  

亜細亜大学基礎DATA

本部所在地 東京都武蔵野市
設置形態 私立
学部 経営学部/経済学部/法学部/国際関係学部
学生数 6419名(2014年5月1日現在)
就職率 96.4%(2014年度)

2011年に大学設置基準が改正され、「大学は、生涯を通じた持続的な就業力の育成を目指し、教育課程の内外を通じて社会的・職業的自立に向けた指導等に取り組むこと」が明記され、就業力育成は大学教育の重要な課題となっている。各大学が活動の方向性を模索する中、地域産業人材の育成や地域経済の活性化にもつながるような就業力育成の取り組みが注目されている。
この連載では、産業界との連携や地元自治体との協働によって学生の就業力を高めることに成功している事例等を、積極的に紹介していきたい。
今回は、大学名に「アジア」を冠し、創立以来、アジア全体の発展に寄与する人材を育成してきた亜細亜大学の池島政広学長に、産業界と連携して取り組むグローバルな人材育成について、お話をうかがった。

0.亜細亜大学の就業力の現状:課題認識

池島政広学長大学生の就業力育成における課題を池島政広学長は、亜細亜大学に限らず普遍的なものと捉えている。
「多くの大学で、多くの学生が卒業後は会社に入る。そこで求められるのは、何がその会社で問題なのか、社会で何が問題なのか、指示されるのではなく自ら考え、自らソリューションを出していくことです。本当は、小さいうちからそういうトレーニングが必要なのですが、高校生まではそれをせずに来ているのが現状でしょう」
だからといって、大学が「自ら考える」人材を育てる責任を免れるわけではないと池島学長は言う。
「大学というのは、入ってきたときよりも付加価値をつけて人を外に出していく、トレーニングをして社会に役立つ人材を出すという役割を担っているわけです。
大学の外の社会で何がどう動いているかということを、学生にどんどん示すことによって、4年間の間に自ら問題意識を持ち勉強する癖をつける。そのために、最近よくいうアクティブラーニング的な発想も含め、色々と取り組んでいるところです」

1. 積極性が身に付く「アジア夢カレッジ」

キャリア支援策は学部ごとの取り組みも多いが、学部横断の全学的なプログラムが「アジア夢カレッジキャリア開発中国プログラム」だ。
「本学ならではの就業力育成として、アジアの成長市場である中国を知り、中国語を勉強し、アジアを中心に国際的に活躍できる人材を育てる4年間のプログラムです。産学連携によって、中国現地企業での約1カ月のインターンシップを実現しているのが大きな特徴です」
どの学部の学生も(一部を除き)応募可能で、学内選考に合格した学生が、自分の学部専攻と並行して、キャリア形成を意識した「アジア夢カレッジ」プログラムを受講する。1年から2年前期では「中国理解」の科目や中国語等を学び、中国語検定の3 級にパスした上で、2 年の後期はAUCP(Asia University China Program)という5カ月の中国留学を行う。現地では、協定を結んだ大連外国語大学で、中国語の語学研修と、中国のビジネスや文化の授業を受け、自主テーマでのフィールドワークを行う。そして5カ月目が、日系企業を中心とした現地企業でのインターンシップだ。
「もう一つ、決定的に面白いのが、中国人学生とルームシェアをすることです。中国はなかなかそういうことを許さない社会ですから、非常に稀なことだと思います」

2003年度に始まったこのプログラムでは、2014年度までに累計143名を派遣している。修了生の就職率は100%。企業からの評価も高いという。
「評価の高い点は、例えば積極性です。中国に行って、中国人とルームシェアをしてとなると、自分を出さざるを得ません。それで積極的に行動するようになるのですね」
中国人と文字通り「一つ屋根の下」で「同じ釜の飯を食って」暮らしたという体験そのものが、未知の環境や文化に対応できるという自信、新たな問題に自ら立ち向かう意欲につながってもいるだろう。

2. 都市の課題解決に向けた「都市創造学部」創設

「アジア夢カレッジ」が中国で実践し確立させてきたスタイルを、中国、韓国、タイ、ベトナム、インドネシア、アメリカという各国で展開するのが、2016年度に開設される都市創造学部だ。

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入学後のガイダンスで自分の学ぶ都市を選択したら、 2年の前期まで、英語に加えてその現地語を学ぶ。「現地語を学ぶ」とあっさり言えるのは、もともと14言語の授業を持っている亜細亜大学だからこそ。強みを生かした新学部だ。2年後期は、現地の大学での語学研修と日系企業でのインターンシップを含む半年間の海外留学だ。

また、1年次の演習科目に組み込まれる「インタビュー実践」は、2011年度から経営学部で行われてきたものだ。学生自らが、誰にインタビューしたいかを考え、アポイントを取り、社会で働いている人に対して、どんな目的で、どんなことを考えてどういう仕事をしているか、インタビューして、記事にする。
「アポイントを取るところから自分ですることも社会性をつける訓練になる。非常にいい授業なので、新学部でも導入することにしました。社会にどういう仕事があるのか、それぞれの仕事の社会的な意義、大変さなどを、入学後すぐの早い時期に知ることには、非常に意味があると思っています」

ところで、今「地方創生」が注目される中、あえて「都市」を掲げる意義は何だろうか。
「この学部は、日本に限らず都市を創造していこうという、非常にグローバルな構想になっています。世界的に都市への人口集中が進行し、欧米では、都市の問題の解決に向けた『シティサイエンス』が発展し始めていることが背景にあります。また、元気あふれ、だからこそ逆に色んな問題も抱えるアジアの都市に注目しながら、豊かな社会とは何なのか、都市を舞台に考えていきましょうという学部なのです」

3. 留学生にも手厚いキャリア支援

亜細亜大学のキャリア支援のもう一つの特徴は、日本人の学生だけでなく、全学生の約6%、人数でいうと400名弱の留学生にも手厚く対応していることだ。
「本学と包括的連携・協力協定を締結している西武信用金庫さんに、お取引先の企業でアジア展開をしているような会社をご紹介いただき、日本での就職を希望する留学生とのマッチングを定期的に行っています。中小中堅で結構いい会社がありますが、大企業と違ってグローバルな人材の採用が難しい。そういう企業には、留学生が戦力になるでしょう」
これはまた、日本人学生のグローバルな就業への布石ともいえる。留学生を就職に至るまでサポートすることが、日本から送り出す学生が留学先で良いサポートを受けることにつながるからだ。また逆に、「亜細亜大学から来た日本人留学生はなかなか優秀だ」となれば、「うちの優秀な学生を亜細亜大学に留学させてみよう」となる。そういう相互の信頼関係が重要なのだ。

4.産学連携で進める海外インターンシップ

「アジア夢カレッジ」も都市創造学部も、「海外インターンシップ先の確保」が最も苦心するところだという。
「まず現地の大学とお互いの信頼を築き、ある程度我々から注文できるような関係を作り、現地企業を紹介してもらう。あるいは産業界で海外に詳しい方、現地でのビジネス経験が豊富な方等をコーディネーターとして入れながら、探していく。ときには現地企業のトップと直接会って交渉する。
また、本学は東急グループに入っているので、東急グループがビジネス展開を図っているベトナムやインドネシアについては、関連の日系企業にご協力いただいています」

その他にもさまざまなネットワークを駆使してインターンシップ先を手配する中で、池島学長は、日本とそれ以外のインターンシップの違いを知らされたという。
「グローバル企業の方と交渉していると、『インターンシップは、いい人材を探すためにやるのだ』と言うんですね。日本のインターンシップは、経団連を含めて、就職に結び付けないことが前提ですから、だいぶ性格が違いますよね。それはそれとして、もう少し会社にとってもメリットのある、win-winになるインターンシップを、産業界とお互いに工夫してやるべきではと思っています」

5.課題は産業界との本当の連携

取り組みを進める上での課題として池島学長があげるのは、全学の意識の向上であり共有だ。
「これから大学は変わらなくちゃいかんという危機感。あるいは、亜細亜大学はどういう大学を目指すのか。これが全学に浸透していく形に、早くもっていきたい。
学外の産業界の方にご協力いただいたり、色んなアウトソーシングなどもあったりするだけに、我々自らがきちんとまとまっていくことが大切なのです」

では、亜細亜大学はどういう大学を目指すのか。国際基督教大学、上智大学、青山学院大学など、従来はどちらかと言えば欧米中心のグローバル教育を強みとしてきた大学がアジアに目を向け始めた今後は、「彼らにできないアジア」を考えなければならないと池島学長は言う。
「それは、産業界との本当の連携です。アカデミックな先生をたくさん揃えても絶対できないような、泥臭い産学連携を我々はやっていこうと。
世界の中で人材争奪戦が行われている現実の中で、産業界はいい人材の採用のために、給与体系や採用方法を含めたグローバルな人事施策を考える。我々大学はいい学生の確保のために、日系企業で活躍する留学生、海外企業で活躍する日本人を育てる教育体系を考える。入口から出口までのパッケージでお互いに協力して、議論もしながらやりませんかと、産業界に働きかけています。
それをしていかないと、亜細亜大学だけでなく、日本の大学・日本の企業が近い将来、いい人材をとれなくなるという強い問題意識を持っています。日本人の学生に対する大学教育がこのままでいいのかということも、同じ流れの中にあることだと思います」

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