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学ぶと働くをつなぐ授業拝見[Clip Number 002] 京都産業大学×3社(富士ゼロックス、堀場製作所、テクノアドバンス)

京都産業大学コンピュータ理工学部「ものづくりインターンシップ」

2016/09/12  タグ: ,  

専門の学びと融合したコーオプ教育

京都産業大学では、2016年より理工系コーオプ教育「ものづくりインターンシップ」をスタートした。
大学院に進学予定のコンピュータ理工学部3・4年生(7名)が、企業から課題を与えられ、チームまたは個人で解決に取り組む。企業からの課題は、事前に大学主導で教育目的を明らかにした上で、専門的な教育への関連を踏まえ、大学と企業とで協議しながら決定する。企業におけるシステム開発の工程を経験することにより、学生が専門の学びと社会との関係性を実感し、専門知識の修得と活用への動機を高めると共に、汎用的能力の向上を目指す。
3月~5月の3か月間、学生は週1日就業し、課題解決に取り組む。インターンシップの前後には、企業での実践に必要なこと(守秘義務の徹底や模擬開発、マナーなど)を学ぶ「事前学習」や、実践の振り返り(学びの確認、今後の行動計画など)を行う「事後学習」などのプログラムも実施する。特に、事後学習では、インターンシップの実践を振り返り、その後の研究活動(卒論等)の深化につなげる。

企業の実課題の解決に挑む

7月11日、「ものづくりインターンシップ」に取り組む学生達の事後学習及び成果発表会が行われた。今回、3社(富士ゼロックス京都・富士ゼロックス西日本、堀場製作所、テクノアドバンス)の協力を得た。

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富士ゼロックス社からの課題は「音声ガイドサービスを用いた新たなアプリケーションを開発せよ」。4名の学生がチームで取り組み、俳句・川柳投稿システム「てくよみ!」の開発を提案した。提案の過程では、企業の指導担当者から「市場のニーズは本当にあるのか?」「その根拠は?」など突っ込まれることも多く、学生たちは情報を客観的に分析することやユーザーを意識した開発の重要性を学んだ。

堀場製作所からは「音声アシスタント機能アプリケーションの連携に関する調査」という課題が与えられ、2名の学生が個人で取り組んだ。実際に学生がアプリケーションを開発し、試行を行ったときのこと、「楽しい音楽を聴きたい」と話し、自動で「楽しい音楽」が再生された瞬間は、学生本人だけでなく、企業の方々も興奮し、開発の成果を皆で共に喜んだ。

テクノアドバンスからは「物流施設構内でのトラック搬送を対象にしたCO2排出量の試算」の課題が与えられ、学生はCO2排出量のより少ないシミュレーションモデルを検討・提案した。実践の中で、学生は当初立てた予定通り計画を進めることの難しさや、より深く調べることの重要さを学んだ。

インターンシップの前後で対自己基礎力が著しく伸長

京都産業大学では、キャリア教育研究センターが中心となり、これまでもコーオプ教育を推進してきた。今回のものづくりインターンシップでは、その発展型として「専門の学びと結びついたコーオプ教育」をテーマに取り組んだ。プログラムの設計や運営を担当したのは、コンピュータ理工学部の玉田春昭准教授と荻野晃大准教授。企業の方々との事前の議論では、「インターンシップを通じてものづくりをさせてほしい」とリクエストし続けた。従来の「企業との共同研究」に近い形式だが、先生方は今回のプログラムを「学生の教育を重視した“教育的共同研究”」と表現する。そのため、インターンシップだけでなく、事前学習・事後学習にも力を入れた。

事後学習では、学生たちから「実践で役立つプログラミングの知識を学んだ」という声はもちろん、「相手に的確に伝え、相手の意図を上手に聞き出すコミュニケーション」や「確かなエビデンスに基づき、自らの提案を論理的に説明すること」の大切さを学んだという声も上がった。

また、インターンシップの教育効果を検証するため、基礎力測定テスト「PROG」を活用したアセスメントを行った。インターンシップの参加前後のスコアは、以下のグラフのとおり。リテラシー及びコンピテンシー共に、全般的に伸長が見られた。特に、コンピテンシーにおいて、対人基礎力の協働力や統率力、対自己基礎力全般の伸びは著しい。

リテラシーグラフ

コンピテンシーグラフ

さらに、学生へのインタビュー調査も実施した。感情制御力の伸長が見られた学生からは「プレゼンや企業人との質疑応答を繰り返していく中で、上手く答えられるようになって自信がつき、人前で緊張しなくなった」という声が、課題発見力の伸長が見られた学生からは「アプリを提案する際、誰の役に立つものか、どんなシチュエーションで音声認識が必要になるか、小さなデバイスで聞くのはどういう年齢層かなど考えさせられ、一つの問題を色々な角度から分析するようになった」など、インターンシップの実践経験を通じて行動特性が変わったエピソードが多く聞かれた。

今後のプログラム改善に向けて

今回のプログラムの教育効果が主観評価(学生の振り返り、インタビュー調査)や客観評価(アセスメントテスト)で確認されたことに、先生方も満足している。
一方で、「今回、インターンシップ期間中、学生の実践活動に教員がどこまで関わるべきか、企業との距離感が難しかった。また、企業によって、与えられる課題や求める成果物も違った。これらの違いにはメリット・デメリット両面あり、明確な答えはまだ出てないが、次年度以降もこの取組を継続・発展させていきたい」と振り返った。
「専門の学びと結びついたコーオプ教育」、日本の大学教育の更なる発展に資する同校の取組に期待が膨らむ。

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