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学ぶと働くをつなぐ授業拝見[Clip Number 007] 明石工業高等専門学校×全学科全教員

明石工業高等専門学校全学科2~4年次必修科目「Co+work」

2019/06/06  タグ: ,  

国立明石工業高等専門学校(明石高専)の「Co+work」(コ・プラスワーク)は、「自律、協働、創造」の力を養うことを目的としたPBL(Problem/Project-Based-Learning)型授業だ。その最大の特徴は、3学年(2年~4年)・全4学科の必修で、約500人もの学生が学年学科横断のチームに分かれて取り組むこと、そして全教員がこの授業を担当することだ。

3学年4学科の500人が学年学科横断のチームで活動。担当するのは全教員

「Co+work」は、全学科(機械、電気情報、都市システム、建築)の2年~4年生が学年学科横断のチームに分かれ、教員のコーチングのもと、前後期計30週をかけてそれぞれの活動テーマに取り組む授業科目だ。最終報告会では、全チームが体育館でポスター発表を行ない、Best Co+work Awardと優秀ポスター賞8チームが選出される。
2018年度の場合、8~9人のチームが62チーム作られ、全教員62名が1チームずつ担当した。


2つの制約を考慮して決められた活動テーマは地域貢献、ものづくりなどさまざま


「Co+work」2019年度シラバス抜粋(機械工学科2年次)

テーマは学生自らがチームの話しあいで決めるが、かなりじっくりと時間をかける。自分で発見した課題を自分たちのチームで解決するところに大きな意義をもたせているからだ。アクティブラーニングセンター長として教学改革を進めてきた梶村好宏教授に案内していただき、2019年度第3週の授業を拝見したところ、チームそれぞれのスタイルでディスカッション中。カードゲームに興じているように見えるチームもあったが、さぼっているわけではないと梶村教授は言う。「チームビルディングのため、カードワークやスポーツによるアイスブレイクは有効な方法。十分に場をあたためて、チームの全員が遠慮なく意見を言い合えるようになる前にテーマを決めても、うまくいきません」。
教員のかかわり方も、学生と一緒にディスカッションの輪に入る、常に声かけができる体制で輪の外から見守る、少し距離をとって学生側からアクションがあったときのみ近づく、などさまざまだった。


テーマや活動計画を話し合う


チーム活動

毎年新たな学科学年混成チームで「協働」、テーマの自己決定で「自律」の力を伸ばす

能力伸長への工夫としては「学科学年横断のチーム編成」が最大のポイントだという。その混成チームは、社会に出たときの他分野・他職種との協働を模したものともいえる。しかも、4年生を送り出したチームが2年生を迎え入れるのではなく、毎年新たにチーム編成を行なうので、第1週は必ずチーム全員が「初めまして」から出発する。「学科だけでなく学年横断であることもポイントです。4年生には上級生としての役割を果たすことで身につく能力があり、2・3年生がそれを見てコミットの仕方を学び、4年生となったときに力を発揮する効果も大きいのです」。

第2のポイントは「テーマ・活動計画を学生自身に決めさせる」こと。自律の力を伸ばすには、テーマを与えられてそれに取り組む形では生まれない「自分ごと感」が不可欠だからだ。
一方で、学生に決めさせれば、能力伸長につながらないテーマや計画になるリスクもある。「『この程度やっておけば、単位は取れる』といった計算をして、楽なテーマにしようとする学生も中にはいます」。そこで問われるのが教員のスキルだ。「そんなテーマではダメだ」と否定したり「この計画にしなさい」と指示命令したりすることなく、学生が自ら適切なテーマ・計画に修正し、高みを目指せるよう働きかけなければならない。
こうした教員のスキル向上が、第3のポイントといえるかもしれない。約60人の教員が同一のPBLプログラムを指導すること自体が稀な試みであり、インタラクティブな授業法の経験の少ない教員もいることからも、FD充実は必至だ。年6回程度のFD研修を行なうほか、教員が通称「8人組」に分かれ、日常の指導について具体的に相談しあえる体制を取っている。

「2年→3年→4年の繰り返し」と「上級生の役割」にコンピテンシー伸長効果

Co+workの「成果」について梶村教授は、「学生の能力伸長だけを成果と見ています」と念を押す。この授業ではプロセスに評価の重きを置いており、産学連携授業で目標の1つとすることの多い「事業成果(物)」は評価しない、ということだ。
PROGのスコアを見ると、コンピテンシー総合の伸びは2年→3年より3年→4年の伸びが大きく、4年生のコンピテンシーは同年齢にあたる国立大学理系1年を上回り、国立大学理系4年に近いレベルに達していることがわかる。注目は、導入初年次(2016年度)の3年生も、4年生で能力伸長を見せていることだ。2、3、4年と繰り返すことの効果と同時に、「チーム内の最上級生であるという立場が成長を促す効果も大きい」と梶村教授は見ている。

大分類では対人基礎力、中分類では協働力の伸びが大きい。目的としていた「自律・協働・創造」のうち「協働」の成果は得られたといえるだろう。「自律」「創造」についてはこれからの課題というが、「卒業研究の質が高まった」「ワークショップ形式の授業で積極的にアイデアや意見が出るようになった」など、他の授業科目も通じて、向上の兆しは見えている。

「Co+workを受講した学生が就職する際の評価、また、卒業後5年程度経ったときに『自律・協働・創造』の力を発揮して活躍しているかで、真の『成果』は測られると思います」(梶村教授)。

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