キャリアの広場は、キャリア教育の様々な情報を送り届ける情報メディアサイトです。お気軽にご活用ください。

学ぶと働くをつなぐ授業拝見[Clip Number 010]拓殖大学×TOKYO GLOBAL GATEWAY

拓殖大学商学部国際ビジネス学科1年次「新入生オリエンテーション」

2020/06/10  タグ: ,  

拓殖大学商学部国際ビジネス学科では、2019年度の新入生オリエンテーションにおいて、学部独自プログラムとして、TOKYO GLOBAL GATEWAY(以下TGG)での実践的英語プログラムを実施した。
8人1グループで、英語スタッフとともに、英語を活用するアトラクション・エリア、英語で学ぶアクティブイマージョン・エリアをめぐり、さまざまなプログラムを通じて英語コミュニケーションの体験を得るものだ。
オリエンテーションは狭義の「授業」ではないが、全員参加の学外学修として今回紹介する。

少人数制で手厚い、実践的英語プログラム

2019年4月、新学期最初の土曜日、国際ビジネス学科の1年生(2019年度入学生)144人は、約5時間の新入生オリエンテーションを受けた。
江東区青海のTOKYO GLOBAL GATEWAY(以下TGG)に現地集合し、教員から簡潔なガイダンス(日本語)があった後、8人ずつのグループに分かれると「英語しか通じない」プログラムに突入だ。
まずは、チームビルディングで緊張をほぐす。プログラム終了まで帯同するイングリッシュスピーカー(TGGでの呼称は「エージェント」)のリードで、自己紹介やさまざまなアイスブレイクに十分に時間を取り、「英語を聞き、自分も話し、コミュニケーションするのは楽しい」という雰囲気をつくる。

どのエージェントも明るく親しみやすい雰囲気で、学生の緊張をほぐし発話を促す

アトラクション・エリアでは「薬局で症状を伝えて薬を買う」「旅行代理店でプランを相談する」など、日常生活シーンを想定したプログラムを体験。エージェントと英会話をしながらのランチを挟んで、午後はアクティブイマージョン・エリアで、英語で専門知識を身につける約1時間のPBL(Project Based Learning)型プログラムを体験した。エージェントによるグループごとの振り返り後、全員集合し、「今日の体験をこれから4年間の大学での学びに活かしてください」(中村竜哉商学部長)といった日本語のまとめがあって、現地解散となった。

アトラクション・エリアのトラベルゾーンにあるファーマシー(薬局)でクラークを相手に買い物

アクティブイマージョン・エリアの「企業を分析して投資先を考えよう」プログラムで、スペシャリストの指導の下、本格的な株式情報システムを使用しながら英語でディスカッション

(株) TOKYO GLOBAL GATEWAYの取締役COO(最高執行責任者)でもある長尾素子商学部教授は、「学生の、朝と帰りの表情の違いは顕著で、帰りには『楽しかった!』という充実感があふれていました。グループ内で早速LINE交換などしながら帰っていく様子が見られ、新入生同士の関係性構築もできたようです」と言う。

TGGは、東京都教育委員会が民間事業者と協働して2018年9月に開設した、英語の実践に特化した体験型学習施設だ。特長の1つは、「英語の密度感」。8人1グループごとにエージェント1人が帯同する他、アトラクション・エリアでは店員役を演じる「クラーク」が加わる。アクティブイマージョン・エリアでは複数のグループ合同での学修だが、5グループ合同なら、エージェントが5人と、講師を務める「スペシャリスト」が1人、計6人のイングリッシュスピーカーが40人の参加者に対して配置される手厚さとなる。
それだけでなく、英語によるコミュニケーションを促す工夫が随所に施される。例えばアトラクション・エリアで、参加者が順番にクラークとやりとりをするが、グループ内で順番を待っている他の参加者が日本語のお喋りで過ごさないよう、エージェントが話しかけて英語での発話を促し、クラークとの会話以外にも「英語でコミュニケーションできた」という成功体験が得られるように配慮している。
(株) TOKYO GLOBAL GATEWAY教務部部長の福江友樹氏は、TGGのイングリッシュスピーカーは、単に「英語を話せる人」ではないという。「エージェントは、グループ活動活性化のためのファシリテーションスキルが求められます。クラークは参加者の発話を促すエリシテーションに長けています。スペシャリストは、専門知識を英語で伝えるという教授法だけでなく、参加者が自ら学ぶためのグループワークやディスカッションの運営技術を身につけています。共通するのは、参加者に英語を話させる技術が必須だということです」。
イングリッシュスピーカーの出身地は50か国以上に及び、ネイティブスピーカーだけでなくさまざまな人種や国籍で構成されている。「世界ではいろいろな英語でコミュニケーションが行われているということを、体験してもらう」のもTGGの特徴といえる。

「間違いを訂正」せず、コミュニケーション体験を豊富にする

TGGはオープン当初、小学校高学年~高校生を主な対象としていたが、2019年から大学生向けのプログラムをスタートさせるにあたり、初期ケースとして実施されたのがこの新入生オリエンテーションだ。長尾教授ら拓殖大学と、TGGとの共同開発という形をとった。
長尾教授は、TGGでの新入生オリエンテーションの狙いを次のように語る。
「まず、大学で学ぶことの動機付け・意識付けです。これは入学時だけでなく、卒業まで4年間という中長期のマインドセットを考えています。それから、社会への助走として、社会でどのように英語が使われているか、社会で接する人たちはこんな人たちだという一端に触れること。さらに言えば、高校までの受験英語から、グローバルなコミュニケーション・ツールを身につけることへと、英語学修の動機を転換することです」。
個々のプログラムは、TGGで実施されてきた中から、大学生の発達レベルに合ったものが選ばれている。そして、「入学時だけでなく、卒業まで4年間という中長期のマインドセット」であることを学生に明確に伝え、意識付けするため、チームビルディングの前に日本語による「ガイダンス」、プログラム終了後に再び日本語による「まとめ」を加えるカスタマイズを施している。
もう1つオリエンテーション向けに考慮されているのが、英語能力のレベル設定だ。TGGのプログラムは初級から上級まで対応可能なものが多くある。新入生の英語能力には幅があるが、どのレベルの学生にも効果があるように気を配っている。入学時の英語プレイスメントテストのスコア順を基本にグループ分けを行うなど、事前の準備をした上で、「最終的にはイングリッシュスピーカーが個々に言語的な工夫をすることが重要」と福江氏は言う。またエージェントは、「言語的な」工夫だけでなく、一部の学生だけが積極的に会話し、他の学生は黙って見ている、といったことがないよう、グループの一人ひとりに合わせた働きかけを行う。それを可能にするのが学生8人に対してエージェント1人という少人数制であり、イングリッシュスピーカーの能力だ。長尾教授は「TGGでは本当にいい採用・いい研修をしているので、英語スタッフの質には絶対の信頼を置いている」と言う。

また長尾教授は、「TGGは、英語学習施設ではなくコミュニケーション体験施設」とし、「英語能力の向上」はこのオリエンテーションの目的ではないとも言う。
「例えば、学生が文法的に『間違った』英語を話したとき、英会話教室なら講師はそれを指摘し訂正させるでしょう。しかしTGGでは違います。イングリッシュスピーカーは間違っているために『伝わらない』場合だけ、それに対して聞き返したり、伝わるような言い換えを促したりするのです」と長尾教授は説明し、さらにこう続ける。「人はもともと、他者とコミュニケーションを取りたい、相手を知りたい、伝え合いたい、という欲求を持っていますが、『失敗する』『間違いを叱られる』『恥ずかしい』『無視される』といったリスクによって阻害されています。TGGのプログラムは、リスクを取り去り、コミュニケーション体験を豊富にするものなのです」。

学修意欲が高まり、グローバル人材に特徴的なコンピテンシー傾向も

TGGオリエンテーションの成果として、学生へのアンケートから認められるものの1つが、「英語学修の意欲の高まり」だ。「英語はどの程度できるようになりたいですか」という設問では、TGGオリエンテーションに参加した国際ビジネス学科1年生の29.2%が「ビジネスレベル」と答え、同学科2年生の22.6%、経営学科・会計学科1年生の10.0%よりも高い。自由回答でも『もっと英語を学びたい』『もっと英語を話したい』『留学したい』といった声が多くあった。
また、学修意欲の高まりは英語のみではなく、「(TGGに参加してから)大学での学び・学修への意欲が高まった」に40.0%が「とても当てはまる」または「当てはまる」と回答している。長尾教授は、「聞き取りや観察からも、アンケートに表れているのと同様に、学びの姿勢の違い、積極性が感じられ、想定以上の効果を実感しています」と言う。


PROGテストは、オリエンテーションから約9か月後の2020年1月に実施。1回のみの受検なので、コンピテンシーの伸長は不明だが、他大学(私立四年制商学・経済学系)1年、経営学科1年、国際ビジネス学科2年(2018年度入学生)といったTGG非参加者との比較で、このオリエンテーションプログラムの効果をある程度推しはかってみたい。

国際ビジネス学科1年生がTGG非参加の学生を大きく上回るコンピテンシー要素を見てみると、大分類では「対人基礎力」だ。長尾教授は「英語しか分からないイングリッシュスピーカー、特に全行程を共にしたエージェントと分かり合い、親しくなる体験をしたことが、コミュニケーション力、対人基礎力を向上させていると思います」と言う。
中分類では「親和力」「統率力」「感情制御力」だが、参考グラフから分かるとおり、これらはグローバル人材に特徴的なコンピテンシー傾向だ。

グローバル人材:25~49歳の日本人ビジネスマン。アジアにおいて、外国人マネジメント経験があり、かつ当時のマネジメントに満足している者735名(平均駐在期間:約4年)

「同じ国際ビジネス学科の中でも、TGGに参加していない2年生と今回参加した1年生を比較すると、1年生の方がコンピテンシーのスコアが高かったのは、驚きでした。 TGGでの新入生オリエンテーション効果であるとは明言できませんが、グローバル人材の特性に近いコンピテンシー傾向が出ているのは、外国人と一緒に仕事をするビジネスパーソンの育成を教育目標の1つとしている当学科として、まさに狙いどおりと言えます」(長尾教授)。

残念ながら2020年度は、COVID-19の感染拡大防止のため、TGGプログラムを含めすべての新入生オリエンテーションが中止となった。しかし狙い通りの成果が得られたプログラムとして、中長期の効果測定を行いつつ、2021年度以降の実施を続けていく予定という。

LINEで送る

コロナ禍対策共有プロジェクト

セミナー・公開研究会情報

近日開催予定のセミナー・公開研究会情報がございません。

学ぶと働くをつなぐキャリア関連ニュースなど、当サイト最新情報を無料のメールマガジンにてご確認いただくことが可能です。



閉じる