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コロナ禍の授業拝見[Clip Number 001]実践女子大学×リアセック

実践女子大学1年次「学生生活スタートアップワークショップ」

2020/11/02  タグ: ,  

2020年初頭からの「コロナ禍」において、大学はキャンパス閉鎖を余儀なくされ、すべての活動が大きく停滞することとなった。この事態を受けて今、遠隔授業や、対面と組み合わせた「ハイブリッド」授業、授業以外の学生支援など、”with COVID-19” を前提に、各大学がさまざまな模索をしている。このシリーズではそういった取組事例を、狭義の「授業」に限らず紹介していきたい。
初回の今回は、実践女子大学の1年次学生向け「学生生活スタートアップワークショップ」を紹介する。

大学生活への期待感を高める、スタートアップワークショップ

実践女子大学は、短期大学部を含む全学部の1年次学生を対象に「学生生活スタートアップワークショップ」を企画、2020年9月にオンラインで実施した。コロナ禍でままならない「友達づくり」の機会を設け、大学生活への期待感を高めることと、協働の楽しさを体感することを目的としたものだ。
第1部「メイン講座」は、zoomのブレークアウトセッションを利用した「自己紹介」「ソーシャルスタイルチェック」「協力ゲーム」の3つのグループワークが主体。第2部「サークル紹介」は別途3つのzoomミーティングルームを設け、グループごとに順次(1ルーム約15分)訪れる方法で行われた。

学部・学科ごとに7回に分け、企画・運営は大学の学生総合支援センターと(株)リアセックが共同で行い、メイン講師・アシスタント講師の2名体制の講師は、各回ともリアセックのキャリアコンサルタントが務めた。

最終回にあたる人間社会学部(1年次は学科の区分なし)の回を例にとると、34人が参加。ブレークアウトセッションは7グループ編成された。

(1) 一言自己紹介
講師の自己紹介を含む導入の後、最初のプログラムは「一言自己紹介」。講師側でランダムに編成した7つのグループ(1グループ4~5人)に、同じメンバーでプログラムの最後まで一緒に過ごすことを伝え、「自己紹介のやり方」をガイドする。約7分のセッションタイムでグループ内自己紹介の後は、仲間づくりの秘訣を「相手のことを知るには、まず自分のことを知らせる」として、「自己開示」をキーワードにまとめた。


人間社会学部の回のメイン講師・大槻郁恵(小写真上)の自己紹介。「自己開示」の見本ともいえる。小写真下はアシスタント講師の野口直子

(2) ソーシャルスタイルチェック
2つめのプログラムが「ソーシャルスタイルチェック」で、16問(8問×2セット)の設問から、「自己主張軸」「感情表現軸」の2軸上で自分のコミュニケーションタイプを把握するものだ。
設問に答えて自分のタイプを知る前に、「ソーシャルスタイル理論とは」の説明、チェックの仕方についての説明がていねいに行われ、セルフチェックが済んだところで、zoomのコメント機能を使って参加者の分を全体で共有する。


参加者がプロットし終わったところで、特徴を捉えたネーミングが画面上に

各タイプの特徴説明に続いて、「自分のタイプと、思い当たるところを伝える」「聴いたメンバーは相づち+感想を伝える」グループワークが行われる。5分ほどのグループワークの後の「振り返り」では、グループワーク前の「特徴説明」をいったん繰り返した後、「がゆえに…」という形で弱点が示されていく。


(左)グループワーク前の「特徴」説明スライド/(右)グループワーク後の「弱点・課題」説明スライド

セルフチェックとグループワークを経て自ら「思い当たる」流れとなっているため、「こうしてみよう」という課題が受け入れやすくなる。そしてまとめとして「スタイル(タイプ)に優劣はない」「スタイルの違いを理解して人とかかわっていくと、自分らしさが発揮できて、みんなにとっても有益」ということが示される。
この「まとめ」を実践する場として次の「協力ゲーム」が用意されている。自分のスタイルを意識しながら参加すると、自分もまわりも気持ちよく成果が出せるというわけだ。

(3) 協力ゲーム


協力ゲーム開始時のスライド。「ミッション達成(正解)が最大の目的ではない」ことは明示されている

協力ゲームのミッション

「協力ゲーム」は、複数の短文のヒントを総合して全体像を明らかにする推理パズル(ゲーム)を、グループ内の協力で解くスタイルにしたもの。「バスケ部の前に弓道部があります」など、チャットで配られる20個のヒントをメンバーが1人4~5個ずつ分け持ち、持ち寄ってつきあわせることでフロアマップ9番のサークルを突き止める。
制限時間は10分。「答えが出せたグループは?」「あともう少し時間があれば、というグループは?」といった講師からの問いかけを経て、2分ほどの「アディショナルタイム」が与えられると、多くのグループが正解にたどり着いた。正解を出したグループを拍手で称えた後、再びグループで5分ほど「感想」「自分やメンバーのソーシャルスタイル、ワークへの関わり方について気づいたこと」を話し合う。グループで出た意見は、チャットで全体に共有された。
「問題は難しかったですが、みんなで意見交換をして楽しくできたと思います」という意見に対して講師は、「易しくない問題も協力し合うことで解決できる、そんな実感を持てたのではないでしょうか。これからグループワークをする機会がたくさんあると思うけれど、このように楽しく進めていけたら素晴らしいですね」と応じ、「自分の特徴を活かしながら協力し合って結果を出せることは単純に楽しいし、いろいろな気づきや学びがありますよね」とまとめた。

3つのグループワークを通してのまとめを講師が行い、約90分のメインプログラムは終了となるが、第2部との間の「小休止」も約5分のブレークアウトセッションとして、グループごとに今日の感想を話し合ったり、LINE交換をしたりといった「友達づくり」の時間として活用した。
第2部は、3つのzoomミーティングルームを設け、グループごとに順次(1ルーム約15分)訪れる方法とした。各ミーティングルームには4~5の学生コミュニティ(サークル、学生委員会など)の代表が待機しており、大学職員の司会によって交流がもたれた。

「友達づくり」そのものも、「仲間づくりスキル向上」も重要

学生同士の交流を通じて学生生活の期待感が高まることは、大学生活への満足度を高めるうえで重要であり、「たかが友達づくり」と軽視はできない。また、協働の楽しさを体感することは、実践女子大学・短期大学部のディプロマポリシーの一角をなす「協働力」の育成にもつながっていく。

企画運営上、最も腐心したのが、「その場限りの楽しいレクリエーション」に終わらせず、効果が継続するものにすることだ。そのため、交流する人数を増やすことより、グループ内の少人数で交流を深めることを優先し、全グループワーク、第2部のサークル紹介を通じ、グループを固定した。また、「小休止」もzoomを離れる休憩ではなく、グループごとにつなげておき、歓談やInstagram・LINE交換を促すようにした。
3つのグループワークの前後に必ず「趣旨・方法の説明」「振り返り」を付けているのも、一過性にせず「仲間づくりのスキル」を身につけるための工夫だ。一見単純な「自己紹介」でも、事前に「講師自らが自己開示の見本を見せてある」「自分は何を話すかを考えさせる」というステップを踏み、さらに、最初のグループワークでは第一声を発するハードルが高いことに配慮して「メンバーの中で50音順で一番早い名字の人から」といった指示を出している。事後の「振り返り」では、「自己開示」のメリットを説明し、この場を離れてもコミュニケーションの一手段として使えるように促している。
「協力ゲーム」では、協働の楽しさと達成感を味わえる難易度に調整し、さらに「アディショナルタイム」を設けて、正解にたどり着くグループを増やすようにした。一方で、正解できた・できないを問わず、「振り返り」でコミュニケーションについての気づきを可視化した。

後日の学生アンケートでも

「友達の作り方が分かりました。そして自分の持ち味がわかりました」

「誰かと親しくなりたい時には、まずは自己開示をしていけば相手も応じてくれるということを学んだ。もっと自分の意見を伝えてしまった方が良いと感じた」

「自分のタイプを知ることができ、これから様々な人間関係を築いていく上で自分の表現方法などが分かったような気がした」

といったコメントがあり、たとえその日のメンバーとさほど親しくなれなかったとしても、仲間づくりへの能力と態度は高まったことが伺えた。

成果はLINE交換、課題は参加率

実践女子大学は1学科100人程度と比較的小規模なこともあり、例年は大学として特別な1年次向けイベントを提供しなくても、各学科開催の独自イベントや授業を通じて学生交流が自然に進んできたという。しかしコロナ禍の今2020年度は、5月末から遠隔授業は始まったものの、学生同士が出会う機会はかなり限られたままに、前期を終えてしまったという背景がある。
企画した実践女子大学学生総合支援センターの中山尚人さんは、「キャンパスは閉鎖・授業は遠隔で、友達づくりがまったくできない、先輩たちとの交流もないという状況をなんとかしたいと企画したものなので、『LINE交換した』『会う約束をした』という声が多く出たことについては、成功と考えています」と言う。
例えばアンケートの「大変満足」「満足」の理由として書き込まれたこんなコメントだ。

「グループワークをした人たちと結構会話が弾みました。明日の健康診断で会おうよとなり、とても良かったなと思いました」

「同じ班だった子とLINEとインスタを交換しました。それに加えて、いつか遊びに行くことを約束するくらい、仲良くなれたから」

「楽しかったし、同じ学部に連絡を取れる人が増えたから」

学生アンケートでは、このワークショップに「大変満足」+「満足」が87%、ワークショップを通じて大学で話ができる友人が「増えたと思う」が61%と、参加学生からは高い評価が得られた。
そのため、プログラムの大きな変更は考えていないが、対象学生の12.5%という参加率は想定を下回ったため、告知の方法などが今後の課題と中山さんはいう。「何よりもタイミング。同じ働きかけであっても、入学から間もない4月・5月であれば、もっと参加意欲は高まったと思います」。また、学生総合支援センターからの呼びかけにとどまり、授業内での告知や学科教員からの推奨の機会を依頼できなかったことも、参加率に影響したと考えられる。
2021年度の実施については、対面かオンラインかといった実施形態や、「強制ではないけれども、原則は全員参加」とするなどの告知方法の改善も含めて、検討していく意向だ。

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