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コロナ禍の授業拝見[Clip Number 003]帝京大学・東洋大学・愛知大学

帝京大学・東洋大学・愛知大学「AEON Vietnamプロジェクト(online)」

2021/04/28  タグ: ,  

2020年初頭からの「コロナ禍」において、大学はキャンパス閉鎖を余儀なくされ、すべての活動が大きく停滞することとなった。この事態を受けて今、遠隔授業や、対面と組み合わせた「ハイブリッド」授業、授業以外の学生支援など、”with COVID-19” を前提に、各大学がさまざまな模索をしている。このシリーズではそういった取組事例を、狭義の「授業」に限らず紹介していきたい。
今回は、帝京大学・東洋大学・愛知大学合同の取組「“課題解決型”異文化交流プログラム」を紹介する。

地域を超えた国内3大学とベトナムをオンラインで結ぶ

帝京大学・東洋大学・愛知大学は、3大学合同で、オンラインを活用して海外企業の課題を解決するプロジェクトを企画、2021年2月から3月にかけて実施した。海外留学や異文化交流の機会が制限されている現状を踏まえ、国内外の大学および企業がタッグを組み、オンラインを活用することで地域を超えた学生の交流を創出することを目的としたものだ。

概要(帝京大学の参加学生募集チラシ)

国内3大学から1・2・3年生合計27名(帝京大学7名、東洋大学10名、愛知大学10名)、ホーチミン市外国語情報技術大学からは14名が参加。国内3大学・ベトナム混成の7チーム(1チーム5~7名)ごとにオンラインでミーティングを重ね、イオンのプライベートブランド「トップバリュ」のベトナムにおける拡販プランを考案し、イオンベトナムのゼネラルマネジャーに対してプレゼンテーションを行った。

イオンベトナムから提示された課題(Mission)

課題解決プログラムは、Day1(2月27日)の課題提示から、Day3(3月13日)の最終プレゼンテーションまでの15日間。しかし本質的には、前年12月中旬に始まる事前交流から、3月20日の事後講座まで、3か月以上の長期異文化交流プログラムだ。

プログラム全体の日程表

事前交流では主にFacebookを活用し、自己紹介をしあったり、チームごとに交流してリーダーやチーム名を決めたりという活動が、Day1までの約2カ月(11週間)にわたって展開された。

Day1
Day1ではまず、事前講座で提示された「ベトナムについて、文化、経済、歴史、日本との関係について分担して調べ、PPTでまとめる」課題をチーム活動(zoomのブレイクアウトルーム)で発表。ベトナムに関する基礎知識を共有するとともに、
「その(パワーポイントの)デザイン、すごいね! どうやったの?」といった情報交換や、「大学の近くにベトナム料理店ってある?」など、各地域の情報を教え合うような会話が交わされた。


ベトナムについてのチーム内での発表。左上:ベトナムの文化(チームNamjya)、右上:経済(チームDream Makers)、左下:歴史(チームRainbow)、右下:日本との関係(チームPho & Sushi)

続いて、講師によるマーケティング講座では、「3C分析」「4P戦略」といった基礎的なマーケティングフレーム、プロジェクトの進め方としての「PDCAサイクル」の考え方についてのレクチャーがあった。


講座に使用したスライドの一部。ナレーション付きのプレゼンテーションは「movieマーケティング講座」としてDropboxで公開され、学生は必要に応じて視聴することができた。

さらに、イオンベトナムのゼネラルマネジャーによる課題の説明、質疑応答に続き、ベトナム人学生チームが「ホーチミン市の紹介」、各大学チームが「各大学の紹介」を、英語で行った。


自校を紹介するプレゼンテーションは大学別。英語のスライドを作成、ナレーションも英語で行う。ベトナム学生は「ホーチミン市」を紹介(左上)。帝京大学(右上)、東洋大学(左下)、愛知大学(右下)

最後にチームごとのブレイクアウトルームで、中間プレゼンテーションまでのスケジュール調整、プラン設定など、約60分のチームミーティングを行った。

中間プレゼンテーションの課題は、ベトナムマーケットについて十分な調査(100回答以上を集めるアンケート)をしたうえで、提示された3つの商品から1つを選び、その理由を説明することだ。Day2までのオンラインチーム活動は、ベトナムとの時差2時間も考慮したスケジュール管理を含め、すべて学生主導で行われ、大学側はofficeアワー(講師とのミーティング)でサポートした。

Day2
Day2のメインは中間プレゼンテーション。英語で作成したスライドを使い、在ベトナムのゼネラルマネジャーに対して日本語(ベトナム人学生は英語)で発表した。

中間プレゼンテーションより、ベトナムには屋台(street food)の食文化があることを背景に、「屋台で飲食をする際、衛生面が気になりませんか?」とアンケートした結果を説明した、チーム3×3のスライド

フィードバックを受けての約50分のチーム活動(ブレイクアウトルーム)では、「あまり効果のない方法だって指摘された。どうしよう」「そんなにコストがかかるとは……」など、疲れ気味のコメントも目立ったが、Day3までに追加の調査を行って仮説を検証し、マーケティング提案を含む最終提案を仕上げるための行動計画を立てていった。


中間プレゼンテーション後のチーム活動より。チームPhoでは、プレゼンテーションスライドを見返しながら「手描きのイラストでいいから、案を送り合おう」と、アイデアを具体的なデザインに落とし込む相談をしたり、追加のアンケート調査の内容や実施方法を打ち合わせたりした。

Day3
Day3には、具体的な販売・宣伝方法の提案までの最終プレゼンテーションが行われ、中間プレゼンテーションと同様、各チームのプレゼンテーションごとにイオンベトナムゼネラルマネジャーからの講評が行われた。全チームの発表後、学生らしいフレッシュなアイデアを評価する「特別賞」にチームWHAT、ビジネスとしての実現性の高さによる「最優秀提案賞」にチームDream Makersが選ばれた。
「最優秀提案賞」チームDream Makersの提案は、「Women’s Day というベトナム現地の社会行事と関連づけた点、客数・客単価の両方を伸ばす施策が考えられている点が優れていた。3月のInternational Women’s Dayは過ぎてしまったが、10月のVietnamese Women’s Day にはぜひ実施したい」と評価された。「特別賞」チームWHATは、「ベトナム人の好みそうなプロモーションになっていることから、ベトナム人学生とのコミュニケーションが良好だったことが伺える」と講評された。

賞の発表はドラムロール(画像右下)の後で。講師の拍手(画像右上)で讃えられた。


「特別賞」チームWHATの最終プレゼンテーションスライドより、オンラインとオフライン(店頭)を組み合わせた戦略案の一部。

表彰の後は、ベトナム人学生を含むチーム全員がお互いを評価するリフレクションワークを行った。社会人基礎力「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」についての評価などをフォームに入力・共有した後、ブレイクアウトルームで「他己分析タイム」が設けられ、メンバー全員から「持ち味」「持ち味をもっと活かすためのアドバイス(気づいてほしい点)」「感謝の言葉」を受け取った。
この日最後には、プロジェクト終了にあたって、ここまで「見守り」に徹してきた3大学のスタッフが、総評と激励の言葉を贈った。

事後講座
事後講座では、プロジェクトに適用してきた「PDCA」が「学生生活の充実」「就活に向けて自分自身のマーケティング戦略」に使えることをレクチャー。それを踏まえて個人目標を設定し、1人ひとり全員の前で発表した。また、再度3大学のスタッフから「今後の学生生活に向けて」「就活に向けて」「新型コロナ収束後に向けて」などのメッセージが贈られた。

目的は「異文化交流」×「キャリア形成」。最後に「海外」

やや意外なことにこのプログラムは、コロナ禍で実施できない海外PBLの代替では必ずしもないと、帝京大学国際交流センターの田口仁氏は言う。
「2017年に、初めて近畿大学との合同でベトナムでの海外PBLを実施したとき、東京にある帝京大学の学生にとって、近畿大学の学生や教職員は十分に『異文化』だという発見がありました」。全国から学生を集める一部の有名大学を除き、大学生の地元出身率は高い。帝京大学を例に取れば、学生の7割以上が関東出身。他地方の学生と親しくならないまま過ぎることも十分ありうる。ましてこのコロナ禍においては、授業のオンライン化に加え、アルバイトやインカレサークルで大学や学年の違う仲間をつくる機会もなく、他者と交わる機会が圧倒的に少ないという問題が生じた。
キャリア形成の見地からも「他者比較」が重要だと考えていた田口氏は、2020年の6月頃、オンラインを活用する複数大学の交流を複数の大学に提案。東洋大学と愛知大学がそれに応えた。ベトナムでのインターンシップ・研修などに実績の豊富なライトハウス・キャリアエンカレッジ(株)(LCE:Lighthouse Career Encourage)によって、「国内の異文化交流」「キャリア形成支援」に「国際交流」の要素も加えたプログラムになったという経緯だ。
活動するチームが大学別ではなく、「7名=帝京大1名+東洋大2名+愛知大2名+ベトナム人学生2名」のような混成スタイルなのは、「国内での異文化交流」という意図からの必然だ。チーム編成にあたっては、プログラム全体の講師を務めた木田佳男氏(LCE)が1人20分のオンライン個人面談を行った。大学・学年のバランスのほか、リーダータイプの学生を各チームに1人は含めるなど考慮したという。

3か月のプログラムには、通常のPBLとは異なり「異文化交流」の要素が多く盛り込まれた。それはそのまま「キャリア形成」にもつながるものだ。もとより「学ぶ」から「働く」への接続は、学ぶ文化から働く文化へという、異文化への適応の問題ともいえるからだ。
そうした意図が最も強く出たのが事後講座だ。プロジェクトの振り返り・復習とともに、実践してきたマーケティングフレームを就活における「自分マーケティング」に応用する考え方や、PDCAサイクルを回すことで今後の学生生活をいっそう充実させる方法についてのレクチャーが行われた。学生は、個人ごとに「行動目標」を作成し、思い思いのプレゼンテーションスライドにまとめ、「何を(できるだけ具体的に)・いつ・どれだけの量を」「必ずやります」と「宣言」した。

帝京大2年生(左上)、東洋大2年生(右上)、愛知大1年生(左下)の行動目標。多くの学生が語学力(英語力)の強化を行動目標に盛り込んだ。Day3の他己評価で「こうしたらもっとよくなる」とアドバイスされた点を目標にした学生も。右下は事後講座のレクチャーに使用したスライドより。

1人発表するごとに、講師からアドバイスと応援メッセージが贈られる。さらに、そのスライドを参加者のFacebookに公開することで、行動の継続を促す仕掛けとしている。
3大学の参加学生の前で、学生1人ひとりが、このプログラムから自分が得たもの・今後得たいものを言語化し、「宣言」したことの効果は大きいだろう。

オンラインにすることで浮上した問題の1つが、離脱の懸念だ。ベトナムに渡航して2週間滞在するなら、途中離脱の心配はあまりないが、今回は学生が個々に自宅からオンラインで3か月にわたり断続的に参加するスタイルなので、脱落の懸念が高まっていた。そのため、1チームあたり50分とじっくり時間をとる「officeアワー」を2回設定し、進捗確認や企画内容へのアドバイスを行い、運営上の困りごとの相談にも乗った。帝京大学に限っては、「幹事校から脱落者を出したくないという責任感」(田口氏)もあり、八王子キャンパスの入構制限が緩和された時期に参加学生と直接対面で話す機会も設けた。
これらの配慮が効を奏し、離脱者ゼロで無事終了したが、officeアワーなどで学生を身近に見続けた木田氏は、「各チームのリーダーの頑張りもあった」と言い、こう続ける。「リーダーはチーム内で学生自身が決めたため、面談時の見込みとは違う学生になったチームもありましたが、『意外とリーダーシップのある子だった。面談では見逃していたんだな』という、嬉しい見込み違いで、全リーダーが期待以上の働きをしてくれました」。

オンラインで生まれた交流、成果物の質。課題は運営側の「工数」

地域を超えた学生の交流を創出するという目的からすると、わずか数人であっても「他大学に友達ができた」ことは大きな成果と捉えることができる。
もちろんこのプログラムの成果はそれにとどまるものではない。Day3の総括で田口氏は、「過去にベトナム現地で実施した同様のプログラムに比べて、今回のほうが課題に対する提案の質は高かったように思う」とした。そうなった理由は何だろうか。
担当者の見解が一致するのは、投入した時間の差だ。過去の海外PBLが「2週間程度の現地滞在プラスアルファ」であるのに対しこのプログラムでは、オンラインとはいえ、事前のチームビルディングから事後講座まで含め3か月以上かけて課題に取り組んでいる。さらに「渡航すれば、少しは観光などもするでしょう。オンラインだと、極端に言えば1日24時間を投入できます」(木田氏)と考えれば、日数以上の差があったといえる。
ただ、漫然と長い時間を過ごしても効果はなく、同じベクトルで思いを共にする時間が重要と田口氏は言う。そもそも企業から与えられた課題に取り組むこと自体、目標に向かって思いを共にする仕組みともいえるが、今回はさらに、チームビルディングに十分な時間をかけ、「チーム目標」を設定させたり、「PDCAを回す」ことを促したりと、学生たちが同じ方向を向き続けるためのさまざまな仕掛けを施した。

田口氏はオンラインの特性も指摘する。「プレゼンテーションの相手が目の前にいると、やはり『なんとなく伝わる』ものがある。しかしそれは『なんとなく伝わったような気になっている』場合も多い。オンラインで『なんとなく伝わる』ものは『ない』という前提で取り組むことで、提案そのものの質が高まったのではないか」と言う。
別の例として、店頭の雰囲気や購買客層など、自ら現地に行けば「なんとなく」つかめることが、オンラインでは「ない」のが前提。すると、日本人学生はベトナム人学生を通じて現場の情報を得ようといっそう努力するようになる。日本語、ベトナム語、英語を取り交ぜてのベトナム人学生とのコミュニケーションにも真剣みが増しただろう。また、「なんとなく」つかむ定性的な情報に頼れず、アンケート調査などを通した定量的な情報の比重が高まったため、プレゼンテーションの説得力が増しているとも感じた。

プログラムを通じての反省点をお二人に尋ねると、「学生の学びという点では申し分なく、何も反省はありませんが、強いて言うなら、工数がかかりすぎた」との答えが返ってきた。
プログラム全体の運営を担ったLCEには、事前講座・Day1~Day3・事後講座の講義に加え、個人面談、課題の設定、7チーム×50分×2回のオフィスアワーなど、相当な負担がかかった。3大学の担当者も、3か月にわたり陰ながらオンラインで進捗を見守り、ベトナムと結んで土曜日に実施されたDay1・Day2・Day3はほぼ終日、zoomに張り付いた。
学生のためには必要な工数と思われるが、今後、同様のプログラムを実施する際には検討が必要かもしれない。

田口氏は「事後講座の総括で学生たちにも言いましたが、異文化の他者と『つなぐ』プログラムを提供し、プロジェクトをやり遂げる中で『つながる』ことができた。それはこのプログラムの大きな成果です。あとは学生たちが自ら『つなげる』アクションを起こしてほしいと願っています」と、新型コロナ収束後への期待も含めて語った。

(取材協力:ライトハウス・キャリアエンカレッジ(株)(LCE))

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