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[新Vol. 31] 尚絅学院大学

学修成果の可視化とキャリア支援で個別最適化を目指す

2021/05/28  タグ:  

尚絅学院大学基礎DATA

本部所在地 宮城県名取市
設置形態 私立
学部 人文社会学群/心理・教育学群/健康栄養学群/(2021年度まで)総合人間科学部
学生数 2138名(2020年5月1日現在)

大学は、最終学歴となるような「学びのゴール」であると同時に、「働くことのスタート」の役割を求められ、変革を迫られている。キャリア教育、PBL・アクティブラーニングなど座学にとどまらない授業法、地域社会・産業社会、あるいは高校教育との連携・協働など、近年話題になっている大学改革の多くが、この文脈にあるといえるだろう。
このシリーズでは、「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目し、学長および改革のキーパーソンへのインタビューを展開していく(リクルート「カレッジマネジメント」誌との共同企画)。各大学が活動の方向性を模索する中、さまざまな取組事例を積極的に紹介していきたい。
今回は、仙台市に隣接する名取市に立地する尚絅学院大学で、学修成果の可視化とキャリア支援について、合田隆史学長にお話を伺った。

1. 小規模だが総合大学のような学びの広さを

尚絅学院大学は、2019年度に1学部から3学群5学類へと大きな改組を行った。合田隆史学長はその目標を「ベーシックな体制づくり」とし、「それで問題が解決するということではなく、改組をしたうえで、どういう教育をするのかが問題」と語る。
2019年度から6カ年計画で推進中の「第4次中期計画」は、これからの時代を生き抜く「実力」(陳腐化しない普遍的なスキル《コンピテンシー》、強みとなる専門分野と幅広い視野)を身につけることを謳い、3つのビジョンと19の重点課題を「Mission19 Goodness~時代を生き抜く力~」の形にまとめている。
そこで打ち出したい「尚絅らしさ」の1つは、ミッション系スクールとしての伝統・建学の精神だ。4年制大学としては2003年に女子短大から転じ比較的新しいが、1892(明治25)年に現在の仙台市内でキリスト教教育のための女学会として創設以来、長い歴史がある。
「初代校長はアニー・ブゼルという女性宣教師です。その教育理念は『教育とは、単に物知りを養成するのではなく、時代の要請に応えることが出来る人物を養成することである』というもので、非常に実践的な教育方針をとってきました。今もその伝統があって、社会に出て地域に貢献できる力をもった人づくりを目指しています」。
「他者と共に生きる」というキリスト教主義の精神を土台として、学生も「地域など自分の周りの役に立ちたい。そのために懸命に自分にできることを探すタイプが多い」と合田学長は見る。
打ち出したいもう1点は、「中規模校らしい大学づくり」だ。学生数約2000人の小規模校でありながら、人文社会系を中心に理工系、心理・教育系、健康栄養系と幅広い分野をカバーする総合大学的な面もある。「この規模感を生かして、学生一人ひとりの興味関心、資質適性に応じた学修の個別最適化を目指しています」。

2. レーダーチャートで学修成果を可視化

「学修成果の可視化」の一環として、2016年度から実施しているのが「SPレーダー」だ。
SPレーダー(Student Progressレーダー:学修到達度評価)とは、ディプロマ・ポリシー(DP)に対応する12または13の軸のレーダーチャートを使って、学生が自身の成長と学修成果を可視化する仕組みだ。アセスメントポリシーに沿ったルーブリックを使って5段階で自己評価し、レーダーチャートに落とし込むことで、自己の特性が分かりやすく可視化され、確認できる。自己評価にあたっては、なぜその段階と判断したのか、自分なりの根拠を記述することとしており、入学から卒業まで年に1回ずつ計4回の自己評価が、定性的にも学びを振り返る機会となる。
また、「学びの最適化」をするために2019年に導入したアドバイザー制度に基づき、アドバイザー(教員)が学生へフィードバックを行うことで、SPレーダーの実効性を高めている。

独自の取組として、チャレンジ精神・やる気を引き出す狙いのSHOKEI POINTプログラム(SPプログラム)も2012年頃から実施されている。インターンシップ、ボランティア活動など、授業外の活動を申請するとポイントが獲得でき、15ポイントたまると「チャレンジポートフォリオ」という共通教育の単位(1単位)に換算される。
「単位になるだけでなく、就活時に自己PRをするポートフォリオ作りに役立つことがメインのエンジンになって、キャリアとあまり関連のない分野も含めて、ポイントを申請する学生が増えてきたと思います。ここ数年SPレーダーとSPプログラムが噛み合ってきました」。

3. 教職協働での授業改善

キャリア教育に関しては、1年次必修「キャリアデザインI」から始まって、2年次・3年次の選択科目、SPプログラムによる「チャレンジポートフォリオ」と、手厚いキャリアライフデザイン科目が用意されている。
合田学長が「本学のキャリア教育の特長」とするのは、4年制大学になった2003年からの蓄積で、授業がブラッシュアップされ、外部講師も厳選されていっていることだ。
「キャリア科目の授業を外部にお願いする場合、その授業を就職関係部署の職員が見た上で、講師の方に本学の教育方針や学生の特質をよりよく知ってもらい、本学の学生向けに授業を改善してもらうことを積み重ねています。その結果、いわゆる『滑る』ことがなく、しっかり『引っかかっている』と自負しています」。
ここからも分かるとおり、尚絅学院大学で職員の存在感は大きい。教職の関係も非常に良好という。「改組についても、教授会ではなく事務職員も入った全体会で説明し、意見交換もして理解を浸透させました。また、教務部長、学生部長などの先生方は、その元で仕事をする事務方からの信頼度も参考にして登用します」。

4. 学生アンケートから改革の手応えも

1キャンパス1学部体制が長かったためか、教員のまとまりも比較的よく、改革に当たり特に困難はなかったという合田学長だが、「もし難しいところがあるとすると」と挙げたのは、学生募集に関する危機感の伝わりにくさだ。合田学長は非常に深刻に捉えているが、学内の空気は、近年の志願者増もあってか「今までどおり一生懸命やればなんとかなるだろう」だという。
「高校生の数が1割減ったときにどの大学も志願者が1割減るのなら、あまり怖くはない。しかし、減らないところは減らない、つまり、集中的にどこかの大学で減る。これはすごく怖いことです」。

19年改組の成果は、まず志願者の増加として数字に表れた。就職率も高率を維持しているという。個別の施策の成果については、まだ評価できる時期ではないが、手応えは感じていると合田学長はいう。その1つは卒業生アンケート(満足度調査)だ。卒業時の満足度98.1%という高さに加え、自由記述欄に「手応え」があるというのだ。「満足度の理由に、『尚絅でこれができるようになった』『こういう力がついた』、だからよかったというタイプの、しっかりした回答が増えてきた実感があります」。

今後に向けては、改組の学年進行完成後を見据えて、「次の一手」を打ち始めている。その1つはSDGsの推進だ。「SDGs のゴール達成もさることながら、SDGsを通じて大学としての人間教育をという意図です」。
2つ目は、伝統や知名度のある大手の大学と戦ってもう一段上を目指すために、「ピーク」を作ること。心理・教育学群には保育者・教員養成や心理学、健康栄養学群には管理栄養士養成と、それぞれ「ピーク」があるので、人文社会学群にも「ピーク」を作り、3学群でラインナップを整えたいという。もう1つの「ピーク」が国際交流だ。地方小規模大学のハンデはあるが、「東北のこの規模の大学としては光っているというポジション」を目指すと意欲を示す。
3つめに挙がっている柱が「地域」だ。学生の多くが東北6県の出身で、就職先も約8割が東北ということから、「地域から来た学生を地域に帰す」役割を今後も担っていく。
合田学長からは、「地域と『共に生きる』ことを大切にしてきた大学です」と、ミッション系スクールらしい言葉も聞かれた。

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