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[新Vol. 33] 茨城大学

4階層の質保証システムで学生の成長にコミットする

2021/10/21  タグ:  

茨城大学基礎DATA

本部所在地 茨城県水戸市
設置形態 国立
学部 人文社会科学部/教育学部/理学部/工学部/農学部
学生数 6729名(2021年5月1日現在)
AP 2016年度 テーマV「卒業時質保証」

社会(企業)が学生(新入社員)に求める能力レベルが高まる傾向にあるなか、大学が取り組むべき教学改革は、学生(学修者)本人に対しては学修成果を可視化し、社会に対しては卒業時質保証を行うことだろう。その取組があってこそ、学生は最終学歴となる「学びのゴール」に到達すると同時に、「働くことのスタート」に立つことができるのだ。
このシリーズでは、「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目し、学長および改革のキーパーソンへのインタビューを展開してきた(リクルート「カレッジマネジメント」誌との共同企画)。今回からは、2019年度まで行われてきた大学教育再生加速プログラム(AP)事業において高い評価を受けた事例の、その後の取組について紹介していきたい。
今回は、2016年度採択のAPテーマV「卒業時質保証」の取組が事後評価でS評価を獲得した茨城大学で、太田寛行学長、嶌田敏行教授(全学教育機構)にお話をうかがった。

1. DPの達成に地域もかかわる

茨城大学の2016年度APテーマV「卒業時質保証」では、5項目からなる全学ディプロマポリシー(DP)をターゲットに設定した。このDPのうち特に力を入れたのは「地域活性化志向」だと太田寛行学長は言う。
「学生と教職員に地域の方々が加わった『三者のパートナーシップ』を教育に反映させ、地域の企業の方々も参画していただき、学生の卒業後も、ディプロマポリシーの達成度をフォローしていく仕組みを作り上げた。これがAP事業のポイントでした」。
各学部に「アドバイザリーボード」の形で地元の企業人などを迎えるほか、3年次の第3クォーターを「iOP(internship Off-campus Program)クォーター」として、地域の協力を得て学外でインターンシップやサービスラーニングを実施してきた。

2. 4階層質保証システム+IR・IE

学内の取組体制は、教員・学科・学部・全学の4階層をとっている。教員個人の授業改善に加えて、学科単位でのFD、さらに学部でのより包括的なプログラムの点検評価を行い、その結果を全学的なFDに反映させる仕組みだ。

ただし、AP事業推進の核として2016年度に設置された「全学教育機構」の嶌田敏行教授は、「『階層制』というよりもむしろ、『個からチームへ』という考え方」と言う。

IR(Institutional Research)・IE(Institutional Effectiveness) 機能を4階層とは独立させているのも、茨城大学の取組の特徴だ。さまざまな調査の計画・実施・分析や参考データの収集といったIR機能を、大学戦略・IR室と教学システム・IR室(以下IR室)に集約。教員は教育活動・改善活動に専念する分業体制をとった。嶌田教授は、「IR室が欲しいデータ」ではなく、教員が議論しやすい情報を渡せば、教員の間でPDCAが回りだし、授業やカリキュラムが改善されていくという。
「データを利用する教育改善を特別な話にせず、いかに日常的なところに組み込めるかに注力しました。そうすれば、教員はデータを精読するし、次もやりたいという気持ちになる。IR室と個々の現場との連携は、そこがポイントだと感じます」(嶌田教授)。

3. 新入生全員に「コミットメントブック」配布

IR室が集約したデータは、地域・企業との「三者のパートナーシップ」を担う上でも重要な役割を果たす。「ステークホルダーを交えたアドバイザリーボードでは、データに基づいて議論することで、感覚的な捉え方だけではない、色々な意見をいただける」(太田学長)。データをコミュニケーションツールにして、地域社会とのエンゲージメントが深まるという。
ここで「エンゲージメント」は、大学が社会や学生と互いにどんな約束をするかといった意味だが、ややわかりにくい言葉なので、茨城大学では特に学生向けを中心に「コミットメント」の語を用いている。新入生全員に配布される「茨城大学コミットメントブック」には、学生・大学・地域の三者が「コミットメントパートナー」であることや、5つのDPの内容がコンパクトに解説されている。
さらに、2017年からは、DPの理解と意識付けのため、新入生に向けて上級生が5つの能力の内容を説明する「コミットメントセレモニー」を入学式の直後に実施している。

4. DP達成度の自己評価が高まる

事業の成果としては、学生の「DP達成度の自己評価」が学年進行に伴って、また経年変化において、「達成している」割合が年々高まっていることが挙げられる。また、卒業生、就職先企業、教員に対する調査結果がいずれも上向きとなっており、学生自身がDPの達成度を意識しながら努力していること、教員の教育力が高まっていることの表れだと太田学長は言う。

日本学術振興会のAP委員会による事後評価では、補助期間終了後の継続に向けての施策もS評価の要素となった。これは大学として腐心してきたことの1つでもある。
「教育改善にはゴールがないので、継続できる仕組みが教育マネジメントの基本です。そのためには、教員の教育志向を刺激する仕組みや、人が替わっても教育改善が進み続ける仕組みをどう整えるか。さらに洗練していきたいと思っています」(嶌田教授)。

5. 卒業時には「コミットメントプラス」を配布

嶌田教授は「どうやって茨城大らしさを出していくか」を次のフェーズの課題と捉える。「ディプロマポリシーを意識して茨城大学で過ごした『コミットメント』のストーリーを、社会に出てからも自身の中で継続していくようなアプローチをしているところです」。その試みの1つが、今年(2021年)3月の卒業生に配布した冊子「コミットメントプラス」だ。「コミットメントブック」の続編にあたるもので、卒業生と大学と地域社会とのコミットメントは続いていくというメッセージを、さまざまな形で送っている。
今後に向けて太田学長は、個別・全体の2つの課題をあげた。個別には、3番目のDP要素「課題解決能力・コミュニケーション力」の中で達成度の低い項目である「実践的な英語能力」をどう改善していくか。全体としては、学生へのフィードバックの仕組づくりが課題である。教員だけでなく、学生自身がPDCA を回せるシステムをいかに構築していくのか、今後の取組に期待したい。

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