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[新Vol. 35]高知大学

地域協働型教育で「スーパー・リージョナル・ユニバーシティ」へ

2022/04/26  タグ:  

高知大学基礎DATA

本部所在地 高知県高知市
設置形態 国立
学部 人文社会科学部/教育学部/理工学部/医学部/農林海洋科学部/地域協働学部
学生数 4951名(2021年5月1日現在)
AP 2016年度テーマV「卒業時質保証」

APに関連する高知大学の活動

社会(企業)が学生(新入社員)に求める能力レベルが高まる傾向にあるなか、大学が取り組むべき教学改革は、学生(学修者)本人に対しては学修成果を可視化し、社会に対しては卒業時質保証を行うことだろう。その取組があってこそ、学生は最終学歴となる「学びのゴール」に到達すると同時に、「働くことのスタート」に立つことができるのだ。
このシリーズでは、「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目し、学長および改革のキーパーソンへのインタビューを展開してきた(リクルート「カレッジマネジメント」誌との共同企画)。Vol.33からは、2019年度まで行われてきた大学教育再生加速プログラム(AP)事業において高い評価を受けた事例の、その後の取組について紹介していきたい。
今回は、2016年度採択のAPテーマV「卒業時質保証」の取組が事後評価でS評価を獲得した高知大学で、櫻井克年学長、塩崎俊彦教授(大学教育創造センター長)、小島郷子教授(学生総合支援センター長(取材時))にお話をうかがった。

1.地域と向き合う大学のさまざまな取組

_櫻井克年学長

高知大学は第3期中期目標に「地域協働による教育」を掲げ、「スーパー・リージョナル・ユニバーシティを目指します!」と宣言。2016年度大学教育再生加速プログラム(AP)テーマV「卒業時における質保証の取組の強化」もこの「地域協働型教育」を加速させるものと位置づけている。櫻井克年学長は、「地域にどっぷり入って地域の人と一緒に考えて、のたうち回って答えを出す。そういう人材の育成こそを本学の『売り』にしようと思いました」と語る。
AP事業以前から高知大学は、地域と向き合うさまざまな取組を行ってきた。2008年度のスタートから数百人の社会人修了生を輩出している土佐フードビジネスクリエイター(FBC)人材創出事業。2013年度からのCOC事業の一環として始まった、インサイド・コミュニティ・システム化事業(KICS)では、ユニバーシティブロックコーディネーター(UBC)という4人の教員を、県内各地域に常駐させた。そして2015年度には新たに地域協働学部を設置した。

2.地域協働型教育の評価指標を「10+1の能力」で整理

そうした中で生じた問題意識の1つが「地域に貢献できる人材に関する評価指標が明確でない」ことだった。そこでAP事業では、「地域協働型教育の多面的評価指標の開発」を事業の「3つの柱」の1つとし、「10+1の能力」にまとめた。「メタ・コンピテンシー」として、10の能力を統合し他者に働きかける力「統合・働きかけ」を+1としたのが特徴だ。
この「統合・働きかけ」の評価は、学部学科ごとに定めた授業科目でのパフォーマンス評価としている。学生総合支援センター長(取材時)の小島郷子教授は、「働きかけとは、自分が学んだことをどうパフォーマンスとして表せるかだと考えました。教員がそれを評価できるのが授業科目」と説明する。多くの学部では卒業研究科目が対象となる。
一方10の能力のうち、GPAで評価する2つを除いた8つの評価には、2018年度入学生からルーブリック(能力測定指標)を取り入れている。ルーブリックの作成は地域企業、高校関係者など外部の意見を反映させた。
学部学科ごとのディプロマ・ポリシー(DP)も「10+1の能力」に結び付けて見直し、整理した。これらの評価の結果はe-ポートフォリオに蓄積され、2019年度からは卒業時にディプロマ・サプリメントの発行も可能となっている。

3.リフレクションによるe-ポートフォリオの有効活用

e-ポートフォリオについては、アドバイザー教員による「リフレクション面談」が年に1回、設定されている。それに加え3年生の前期を、卒業後を見据えて大学生活を振り返るための「リフレクション・セメスター」としている。

地域協働の観点で、「学生の成長を地域と社会と協働して検証する」ことも事業の柱とし、卒業生の自己評価と就職先の上司による他者評価の2つで、卒業生調査を実施した。
「教員の意識改革(意識共有)」も、3つの柱の1つだ。例えばリフレクション面談の重要性と有効性を、AP事業を機に全学に改めて打ち出した。2年生以上になると面談の回数が少なくなるなどの傾向があったためという。全教員が学生を一人ひとりみる「アドバイザー教員」という既存の仕組みを活用しながら、掛け声だけでなく、研修も用意して教員をサポートした。
AP事業の事後評価では、「10+1の能力」の策定と評価指標の開発・運用、地域との協働実績、教職員の意識改革の推進という3つの柱がいずれも認められて、総合でS評価を得ている。

4.企業の理解促進とデータ活用が今後の課題

櫻井学長は、一番アピールできる成果は「ディプロマ・サプリメントで客観的に評価できるようになったこと」と言う。「自分の強み弱みが書いてあるサプリメントは、単なる成績評価とは全然違う。それを見ることで学生は『この能力では人には負けへんで』という自信を持てる。その上で、いいところをいっそう伸ばしてほしい」。
「学ぶと働くをつなぐ」観点で残った課題として、大学教育創造センター長の塩崎俊彦教授は、ディプロマ・サプリメントの活用度を挙げた。「企業の方々にはまだご理解いただけてない部分が多いと感じます。社会とのすり合わせが十分にできていない状態なのは否めません」。
また、教学マネジメントを機能させていく上では、データ活用について、もっと全学的な協議が必要だと塩崎教授は言う。「リフレクション面談などで教職員が学生の伴走者となって学生をサポートしていくためには、『10+1の能力』の学生の自己評価が伸びている要因などを、データを基に分析することが必要だと思っています」。

5.プラットフォームから地域の中核ステーションへ

櫻井学長は地域協働型教育の今後について、展望と抱負を力強く語る。
「地方の大学の改革に関連して『地域連携プラットフォーム』が話題ですが、本学はFBC事業でもCOC事業でも、プラットフォームをたくさん作ってきましたので、それは卒業して、今後はステーションの中核になりたいと思っています。それが達成できたときに、堂々と『高知大学はスーパー・リージョナル・ユニバーシティです』と言えるようになるとイメージしています」。

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