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学修成果の可視化と活用事例 vol.5

成長の可視化を通じ、教育の理念
「品格高雅にして自立自営しうる女性の育成」を
実現する体制を構築

実践女子大学・実践女子大学短期大学部
本部所在地東京都日野市/渋谷区
学生数4494人(短期大学部335人を含む)(2022年5月1日現在)
インタビュイー
実践女子大学・実践女子大学短期大学部
副学長 生活科学部 教授 槙 究(写真左)
学長室 部長 谷中 信裕(写真右)

2022/06/10

建学の精神や社会ニーズを再確認しDPを策定

本学では、2015年に発表した教学グランド・デザインに基づき、全学的にディプロマ・ポリシー(DP)の検討を始めました。文部科学省がDPを含む3つのポリシー策定の義務化方針を打ち出したのは2016年3月ですので、本学では若干それに先行した形になります。
策定にあたっては、求める能力・資質について、卒業生、企業、在校生、教員の4者調査を実施しました。この調査でわかったのは、教員調査と企業調査で学生に求めるスキルに顕著なギャップがあったことです。特に目立ったのはコミュニケーション力で、円満な人間関係を作っていく力や、協働して物事を成し遂げる力については、企業側は非常に強く求めていた一方で、教員はそれほど必要性を意識していませんでした。しかし、本学の建学の精神は「女性が社会を変える、世界を変える」であり、女性の社会参画によってこそ、より良い社会が築かれるという信念です。この視点に立てば、企業が求めるものは決して無視できません。コミュニケーション力については、「協働力」として、DPに盛り込むことにしました。
その他さまざまな議論を経て、全学DPは、「国際的視野」「美の探究」という2つの態度と、「協働力」「行動力」「研鑽力」という3つの能力からなる「実践女子」力を、としてまとめました。

このうち「美の探究」に関しては、女子大ということもあって単に表面的な美しさを求めるものと誤解を招く懸念もありましたが、もちろんそうではなく、「知を求め、心の美を育む態度」を意味しています。本学の教育理念は「品格高雅にして自立自営しうる女性の育成」で、「品格高雅」に対応する「美の探究」をDPに加えることで、建学の精神を反映し、実践女子大学ならではの独自性を示しています。

「実践女子」力の測定と学生支援

DP策定と併せ、学生の成長度合い・達成度を可視化するアセスメントテストを導入することになりました。DPの5つの要素のうちの3能力、「協働力」「行動力」「研鑽力」と親和性が高いPROGをベースにした「実践女子」力テスト(成長診断テスト)をリアセックと共同で開発し、運用しています。学生は1・3年生(短大は1・2年生)において受験します。実施結果により、自分の強みと課題を把握した学生には、授業科目ごとにどのDPが伸ばせるかを提示しているカリキュラム・マトリックスやシラバス、授業以外の学生生活も含めた成長のヒントをまとめた「『実践女子』力 成長支援ハンドブック」などを参考に、次の成長に向けての目標を立ててもらいます。いわば学生自身が卒業までのPDCAを回していくイメージです。また、成長診断テストでは2つの態度が測れないこと、実施回数も限られることから、半期ごとの自己評価「学修ルーブリック」を併用しています。

本学では、学生支援に係る仕組み全体を「J-TAS(Jissen Total Advanced Support)」と名付けており、2019年度に改修したJ-TASシステムの一部として「自己成長記録書」を導入。「実践女子」力テスト(成長診断テスト)、学修ルーブリックなど学生の活動内容をそこに集約し、ディプロマ・サプリメントとして活用できるようにしています。また、サークルなどの課外活動、企業連携プロジェクトやボランティアなどの学外活動も、成長実感と自己効力感を高めるために有効な要素として、このJ-TASという大きな学生支援のくくりの中で支援しています。
さらに学修ルーブリックでは、システム上で学生自身が振り返りをするとともに、教職員が一人ひとりにフィードバックを行います。実施方法は学科により若干の違いがありますが、1~3年生には教員もしくは職員、4年生には基本的にゼミの教員が、半期に一度のペースでフィードバックを行うようにしています。学生に対するインタビュー調査でも、このフィードバックがモチベーション・アップにつながったとの声があります。
成長診断テストにせよ学修ルーブリックにせよ、スコアの絶対値を高めるためではなく、学修成果の可視化により、学生が自身の成長を実感できるようにし、教職員もそれを共有することで、一人ひとりに合わせた成長を支援するために活用するものと考えています。

教育改革への活用と今後の展開

一方、教職員側には、自己点検評価やファカルティ・ディベロップメント(FD)の一環として、毎年成長診断テストの分析報告を学科ごとに行っています。各学科の学生がどのような状況にあるのかを確認し、アクティブラーニング科目を増やすなどの授業改革にも活かしています。
実を言えば、アセスメントを導入した当初は、教員の中にその有効性に疑問を抱く声もありました。しかし、実際にテストを行い、解説を聞きながらその結果を確認することを毎年繰り返すなかで、教員のマインドは大きく変化していきました。コンピテンシーを向上させることの必要性に理解が進み、そのために授業で何ができるのかといった具体的な話も、自然に出てくるようになりました。2021年度には学科ごとに、将来計画の基本材料としてSWOT分析による現状把握や学生の意見聴取などを行い、副学長らによるヒアリングを踏まえて、各学科の方向性を検討しました。
これらは将来的に、2024年度のカリキュラム改革に活かされていくことになります。全体としてコンピテンシーの向上が不可欠であると再確認し、それを盛り込んだ教育改革ビジョンの策定を行っています。
また、キャリア・生活支援課では学生の成長支援のため、低学年から興味関心を顕在化させ、学内コミュニティへ誘う「キャリアスタートアップワークショップ」の展開や、リフレクションの機会提供などをはじめ、さまざまな取組を行っています。在学中に「実践女子」力を成長させたという自信は、卒業時満足度や社会での活躍にもつながるのではないでしょうか。
こうした取組を通じ、学生たちが「実践女子大学という“場”にいてよかった」と思えるように、今後も努力していきたいと考えています。

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