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学修成果の可視化と活用事例 Vol.7〈卒業生調査編〉

卒業生の声に耳を傾け、在学中から
卒業後まで成長のステップを見ることで、
大学の「強み」を把握し、広める

東洋英和女学院大学
本部所在地神奈川県横浜市
学生数1,415名(2023年5月1日現在)
インタビュイー
東洋英和女学院大学
大学改革推進課
飯田真由美 氏

2023/07/24

大学での学びや経験は、卒業後の成長にどうつながっているか

本学では以前より、教学的な支援に役立てることを主な目的に、新入生および卒業直前の学生へのアンケート調査を行っており、その延長として2020年度に卒業後の追跡調査を導入しました。卒業後3年、5年、7年経った卒業生を対象に、22年度まで3年連続で調査を実施しています。
導入の理由は、単に入学から卒業までの成長だけでなく、卒業後、大学での学びや経験をどう活かし、さらなる成長につなげているのかをステップを追って見ていくことが、学修成果を確実に可視化し、ゆくゆくは大学としてのカリキュラム改革や学部学科の改組にも役立てていけるのではないかと考えたからです。
また卒業した方々が、東洋英和女学院大学に対してどのような印象や思い出を抱きながら現在の社会人生活を送っているかを把握することは、今後の大学の在り方を考えるにあたって、大きなヒントになると思いました。

卒業生調査で聞いている主要な項目は、

  • 大学で学んだことが身につき(修得度)、役立っているか
  • 社会に出て実感する能力の必要度について
  • 社会で能力を発揮できているか
  • 在学中にどのような活動に熱心に取り組み満足していたのか
  • 母校の満足度や推奨度

などです。質問項目・内容は、在学中から卒業後までの変化を連続的に追い、比較できるようにしたいと考え、在学中に行うアンケートとある程度共通化しています。その一方で、設問が「外から見て分かりづらい=東洋英和女学院独特の文化でしか通じない言い回し」になっている箇所はないか、他大学と比較ができる形にできないかなど、リアセック社さんのアドバイスも参考に、アンケートのブラッシュアップを行っています。

調査結果のエッセンスは広報に活用

卒業生調査の結果の具体的な利活用の一つが、2022年から発行している広報用のリーフレット「卒業生調査結果から見る 東洋英和女学院大学」です。調査結果のエッセンスの部分だけですが、東洋英和女学院大学の魅力の一端を知っていただく媒体として、大学のイベントを中心に配っています。
2023年版では「在学中に自分の成長を実感できた?」「現在の就業に対する満足度は?」などへの回答の円グラフに加え、「卒論・ゼミなどの意義は?」「現在の就業先の業種は?」の上位回答リスト、そして「本学の満足度が高い理由は?」「本学への入学をすすめたい理由は?」などの設問に答えたコメントの一部などを掲載しています。

2023年版の広報用リーフレット


数字・グラフと回答リストを組み合わせた構成

裏面は在学中の様子が伝わるコメント集

本学と高大連携に関する協定を結んでいる高校を訪問する際には、学長や事務部長がこのリーフレットを資料として持参しています。これは我々にとって、リーフレットの受け手の感想を直接伺える貴重な機会ですが、お渡しした校長先生や理事長様からは、「具体的な数字が出ていて分かりやすく、掲載コメントからも4年間を通じてきめ細かに指導されている様子が分かる」など、好評をいただいているようです。
一方では、高校生向けとしては盛り込む情報が多すぎ、文字も小さすぎて、なかなかパッと伝わりづらいのではないかという感触もあります。「誰に向けて」「どう見せたいか」によって作りを変えたほうがよい部分はあるかもしれません。
また、リーフレットは大学ホームページでも公開しているものの、回答していただいた卒業生の方々に、直接お渡しできていません。この実物を目にすることは、今一度大学時代を振り返ってもらうきっかけになるとともに、再びアンケートをお願いした時にも「ああ、あれか」と納得していただきやすくなるとも思います。これも次年度以降の課題です。

調査から得た気づきと、今後の課題・展開

調査結果は広報に活用するだけでなく、我々自身も、特にフリーコメントからさまざまな気づきを得ることができました。例えば、3年間の調査を通し、キャリア支援への満足度の高さに対する言及が多かったのは、本学の魅力の再確認になりました。一方で、大学キャンパスへの交通の便の悪さに対する意見が多数あり、卒業後何年経っても強く印象が残っていることが分かりました。こちらは、昨年度後期より、2つの最寄駅から朝のシャトルバスの運行を開始するきっかけにもなり、学修成果の可視化だけでなく、施設や学生サービスの改善のための客観的なエビデンスにもなることを実感しています。

2022年版のリーフレットに掲載したフリーコメント

また、同窓会とも連携し、アンケートの案内には同窓会HPのURLを記載して会員情報の確認をお願いしています。アンケート本体にも同窓会の活動に関する設問を設けました。

調査結果の分析からは、本学の強みと弱点(課題領域)も見えてきます。特に、必要度×修得度のポートフォリオで、必要度も修得度も高い本学の「強み」と思える部分に関して、学生がどのように捉えているのか、そしてそれが、社会に出て以降、どのような形で成長に寄与し、活躍に役立っているかは、我々の大きな関心事です。こうした傾向を経年で見ていくことで、将来は、「これから必要とされる能力」についての予測も可能ではと感じています。

必要度×修得度のポートフォリオ分析

「社会で必要とされる」も「大学で身についた」も高い項目が「強み」、
必要度は高いのに修得度が低ければ「課題」と捉えられる

ただ、卒業生調査の詳細な報告書は、そのボリュームゆえに、利用がいまひとつ進んでいない現状があります。これに関しては、広報用リーフレットを教授会などでも配布して調査の“さわり”を見せつつ、そのローデータの活用ができることなどの周知を進め、学内での関心を高めていきたいと思っています。先生方からの要望に応じてさまざまなデータが提供できる体制を、大学改革推進課で整えています。

この卒業生調査と、従来実施してきた在学生の調査とを合わせ、データの蓄積がかなり進んできました。1つの学年を軸に、入学時、卒業時、そして卒業後と、時系列に沿ったデータ分析も可能になりつつあります。今後は、これらのデータ分析による学修成果の可視化をさらに綿密に進め、大学の改革などに具体的に役立てていきたいと考えています。

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