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[新Vol. 42] 武蔵大学

世界で生き抜く力を育む「ゼミの武蔵」

2024/01/19  タグ:  

武蔵大学基礎DATA

本部所在地 東京都練馬区
設置形態 私立
学部 経済学部/人文学部/社会学部/国際教養学部
学生数 4662名(2023年5月1日現在)

社会(企業)が学生(新入社員)に求める能力レベルが高まる傾向にあるなか、大学が取り組むべき教学改革は、学生(学修者)本人に対しては学修成果を可視化し、社会に対しては卒業時質保証を行うことだろう。その取組があってこそ、学生は最終学歴となる「学びのゴール」に到達すると同時に、「働くことのスタート」に立つことができるのだ。
このシリーズでは、「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目し、学長および改革のキーパーソンへのインタビューを展開してきた(リクルート「カレッジマネジメント」誌との共同企画)。今回は、「ゼミの武蔵」で知られる武蔵大学で、高橋徳行学長にお話をうかがった。

ゼミ教育を通じて、多様性を受け入れるマインドを育成

_高橋徳行学長

武蔵大学の教育上の特徴は、1年生から4年間、全学生がゼミ(ゼミナール)必修ということだ。1つのゼミが平均13人という少人数制。高橋徳行学長は「本学の建学の精神の1つである『自ら調べ自ら考える力ある人物』の養成に適したものとして、1950年代からこのゼミ教育に重点を置いてきたと思います」と言い、そこに加わる現代的意義についてこのように語る。「大学のカリキュラムは、4年間は科目を変えられません。一方ゼミは、時代の変化を捉えた内容で密な少人数教育を展開できるのが強みです」。
また高橋学長は、ゼミ教育、少人数教育を通じて育みたいのは「世界を生き抜く力」だという。その実体は「多様な考え方を受け入れるマインド」だ。「他の専門の人と話すときに、心をオープンにして耳を傾けることが必要だと思います。さまざまな専門分野を学ぶ学生がいる大学は、その力を身につけられる場です」。

専門の横串を通す「学部横断型ゼミナール・プロジェクト」

必修ゼミの内容や教授法はさまざまだが、共通するのは、「学びの継続性の担保」だ。担当教員の指導のもと、卒業論文・卒業制作などの最終成果物に向けて学びを積み上げていく。「何か1つ、大学で何を勉強したのかが残る、ゼミならではの体系になっています」。
ゼミ教育は、継続的に専門を学んで、その専門の中で意見を交わすなかでさらに専門性を深めていける良さがある。しかし高橋学長は、深さだけでなく幅広さも必要だという。「社会に出たときには、1つのプロジェクトにいろいろな分野の専門家が集まる。違う専門を学んできた人たちと会話して課題解決を目指す、幅広い能力が絶対に必要になります」。
そこで、「学部横断型ゼミナール・プロジェクト」(横断ゼミ)が、2007年度経済産業省の「産学連携による社会人基礎力の育成・評価事業」採択を受けて本格的に始まった。産学連携で企業から課題の提供を受け、経済、社会、人文、国際教養の4学部混成のチームで解決策を提示するPBL型の授業だ。選択科目で、履修者数は20人前後という。

例えば、企業分析の課題に対して、経済学部と国際教養学部経済経営学専攻の学生は、いわゆる経営分析を行う。そこに社会学部の学生が企業と社会との関係という視点を加え、人文学部と国際教養学部グローバルスタディーズ専攻の学生が企業の持つ文化や歴史の重要性を指摘する。1つの学部で分析するより、広く深い成果が得られるという。
「専門性によって物事へのアプローチが違うので、最初はぶつかり合います。それを乗り越えて、1つのゴールに向かって協働作業をする経験を、学生時代に1回はしておく必要があると思います」。

幅広い力を育むリベラルアーツ&サイエンス教育センター

高橋学長は、必修ゼミや横断ゼミで身につくものを「深く考え、しつこく考え、コミュニケーションをとりながら考える能力」と表現し、成果に自信を見せる。一方で、「どのゼミであろうと、武蔵大学の卒業生はこれをきちんと学んでいる」という大学のメッセージを出しにくいのがゼミ教育の課題だともいう。「『ゼミの武蔵』の強さと裏・表みたいなもの」というこの課題の解決に向けて、2022年4月に「リベラルアーツ&サイエンス教育センター」を開設した。
例えば横断ゼミをきっかけに人文学部の学生が経営学に興味を持った際に「経営学入門」のような基礎科目を受講できるのが、リベラルアーツ&サイエンス教育センターの機能の1つだ。各学部学科の入門的な科目を揃え、学生が自分の専門以外の基礎を学ぶことで、物事を幅広い視野で捉えられるようになることを目指している。27年度に予定するカリキュラム改革の大きな柱の1つとして、さらに強化を図っていくという。

グローバル教育とデータサイエンス教育

近年、武蔵大学のグローバル教育は、「かなりいい形になってきた」と高橋学長は言う。ロンドン大学とのパラレルディグリープログラムを軸とする国際教養学部の2022年度開設、多様な留学プログラム、公用語を英語とした学内空間・MCV(Musashi Communication Village)などだ。
次の重要課題としているのは「データサイエンス」だ。「『武蔵大学は、こういうデータサイエンス教育を受けた学生を卒業させます』と、外から見えるようなものにしたい」。また高橋学長は、統計学や数学は「語学力の弱さをカバーしやすい分野で、国際的にアドバンテージを出せる能力でもある」と位置づけている。「国際社会で生きていく日本人の強さにもつながるので、しっかり取り組みたいと思います」。

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