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[新Vol. 44]大阪観光大学

設置者変更を経て、教育改革を推進。 観光学を通じて楽しむ力を養成

2024/07/11  タグ:  

大阪観光大学基礎DATA

本部所在地 大阪府泉南郡
設置形態 私立
学部 観光学部/国際交流学部
学生数 770名(2024年5月現在)

社会(企業)が学生(新入社員)に求める能力レベルが高まる傾向にあるなか、大学が取り組むべき教学改革は、学生(学修者)本人に対しては学修成果を可視化し、社会に対しては卒業時質保証を行うことだろう。その取組があってこそ、学生は最終学歴となる「学びのゴール」に到達すると同時に、「働くことのスタート」に立つことができるのだ。
このシリーズでは、「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目し、学長および改革のキーパーソンへのインタビューを展開してきた(リクルート「カレッジマネジメント」誌との共同企画)。今回は大阪観光大学で、2022年に就任した山田良治学長に、学生の約7割を占める外国人留学生の募集や日本での就職対策などを含め、お話をうかがった。

観光は「人生を左右する自由時間」の象徴

山田良治 学長

大阪観光大学は法人経営をめぐる不祥事により、2022年に設置者変更による経営層の交代が行われ、和歌山大学で観光学部長も務めた山田良治学長が就任した。山田学長を中心に作成した、観光学体系とそれに基づく観光教育の方針をうたう「大学憲章2022」も発表された。

そもそも「観光」とは何だろうか。山田学長は「日本では、労働に対する自由時間を、『余暇』すなわち『余った暇』と捉えがちですが、本来、自由時間に何をするかは、人生を左右するくらい大事なこと。そういう自由時間を象徴し代表するのが観光です」と説明する。
学際領域ともいえる観光学は、「学」として一つの体系を確立するには至っていないという。「専門職大学を除く四年制大学で唯一、大学名に『観光』が入る本学が、理念として体系的に作り出すミッションを負っているというのが、この改革の骨格でもあります」。

大切にするのは「楽しむ力」の養成

教育面では、基本的なコンセプトを「楽しむ力」の養成に置いた。グローバル化する市民生活における観光の役割と意義を重視する大阪観光大学の観光教育は、フィロソフィカルプラクティショナー(哲学的実践家)養成を基本とするヨーロッパ型に近い。「楽しむ力」というキーワードにも、「幸せを求め、人生を楽しむのは人間の本質」という哲学的背景がある。

楽しむ力の養成を象徴する科目に、1年生後期の「文化鑑賞創造実践」がある。指導教員が自分の好きなテーマで募集し、学生がそこに参加するものだ。例えばサイクリングが好きな教員は学生をサイクリングに連れ出し、音楽が好きな教員は合唱をする。学びの原点として、自分は何を楽しいと感じるのかに目覚めるきっかけづくりが狙いだ。
「例えば競馬が好きな人は、電車の中で競馬新聞一生懸命読んで赤線ひいています。ゲームだって、勉強が嫌いな子も一生懸命に攻略本を読んで考えたりします。あれが学習研究の原点なのだと思います」。競馬やゲームという「対象」を見つけるということではなく、楽しいから学ぶ・学ぶこと自体が楽しいという「状態」を作り出したいのだという。
また、「教員が楽しんでいなければ、学生を楽しませるなんてできない」という考えから、教員も楽しんで取り組んでいるか、アンケート調査などで継続的に確認しているという。

観光は世界最大のサービス業、就職の裾野は広い

学生のうち、中国、ベトナムなど10カ国ほどからの外国人留学生が約7割を占める。大阪観光大学にどういう期待を持って海外から入学してくるのだろうか。
「観光は世界最大のサービス業ですから、世界中でニーズは高いのです。ただ、観光・観光学への一般的な興味を本学への進学という形に具体化することには少しハードルがあります」。そこで前面に出すのが日本文化だ。アニメをはじめとする日本文化を楽しみながら、グローバルな環境で勉強ができる。まさに「学びを楽しむ」ということだ。
また、母国語と日本語の両方で対応できる職員をおき、個別の働きかけを綿密にしている。「関心を持ってくれた学生と個別にコミュニケーションをとり、だんだん期待値を高めていくのが基本です」。この取り組みが、収容定員充足率100%以上という成果につながっている。
日本人学生については、「高校までの“勉強”で成績が思わしくない、従来型のエリート路線に必ずしも適合しない、という中にも、実は非常にいい感性を持っている学生がいる」と山田学長は言い、「在学中に大きく成長し、人が変わったように自信をつけて卒業していく例もある」と続けた。

留学生の卒業後の進路希望は、日本での就職が一番多い。大学としても卒業生が日本で活躍することは望ましいので、日本企業に就職するための個別指導などもサポートしているという。「幸い観光産業は非常に裾野が広く、選択肢は必ずしも狭い意味の観光業だけではありません。一人ひとりの関心を特定の企業なり地域に結びつけるように、小さい大学ならではの個別対応を頑張っています」。

楽しむ力の評価方法とその社会への浸透が課題

全学的な改革から2年を経ての成果としては、教職員の意識改革は進みつつあり、楽しさを感じる学生も増えているという。道半ばではあるが、いい方向に向かっていると山田学長は感じている。
課題としては、「楽しむ力」の測定方法が挙がった。「例えば楽しむ力を評価軸として成績判定をどうするのか」。
今後の戦略的課題の一つは、観光学の体系を海外へ発信すること、もう一つは「楽しむ力」をもっと社会に浸透させ、その理念をブランド化することだとしている。さらに、日本の教育論そのものに対する問題提起のためのプロジェクトも発足させた。「観光学教育にとどまらず、大学の専門教育の評価基軸自体を見直す。我々なりの観点から、従来の偏差値教育に対抗する概念を打ち出せる可能性を考えています」。

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