人気テーマ

[新Vol. 45]戸板女子短期大学
多くの産学連携プロジェクトで、長く働く女性のキャリア形成を支援
2024/10/09 タグ: 事例紹介
戸板女子短期大学基礎DATA
本部所在地 東京都港区
設置形態 私立
学科 服飾芸術科/食物栄養科/国際コミュニケーション学科
学生数 867名(2024年5月現在)
社会(企業)が学生(新入社員)に求める能力レベルが高まる傾向にあるなか、大学が取り組むべき教学改革は、学生(学修者)本人に対しては学修成果を可視化し、社会に対しては卒業時質保証を行うことだろう。その取組があってこそ、学生は最終学歴となる「学びのゴール」に到達すると同時に、「働くことのスタート」に立つことができるのだ。
このシリーズでは、「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目し、学長および改革のキーパーソンへのインタビューを展開してきた(リクルート「カレッジマネジメント」誌との共同企画)。今回は戸板女子短期大学で、PBLへの取り組みやキャリア支援の在り方、卒業生の活躍などについて、白川はるひ学長と金井裕太学長補佐にお話をうかがった。
教職協働で産学連携を拡大
戸板女子短期大学は、実習や実技系の授業が多い短大でありながら、PBLなどの産学連携教育を数多く実践している。白川はるひ学長は、女性が長く働くようになっていることがその背景にあると語る。「本学でも、一生働きたいという学生が年々増えています。そういった学生が、例えば卒業当初はセールスなどの現場にいても、ゆくゆくは企業経営の基幹的なところで働ける力をつけていってほしい。そのために、産学連携のPBLを通じて社会人の基礎力や、ビジネス的なものの考え方を、しっかりと学生に学ばせて、社会に送り出していきたいと思っています」。
産学連携の取り組みは10年ほど前、服飾芸術科の学生を大規模ファッションイベント「東京ガールズコレクション」にスタッフとして参加させることから始まった。金井裕太学長補佐は、「受験生を集めるためにも、魅力的な学びの機会を作ろうというのがスタートでした」と振り返る。
産学連携を拡充していく過程でも、企業出身の職員の力が大きかったという。一方で教員研修を増やし、教職員同士で自分が関わるプロジェクトについて発表しあう場を設けるなど、教員が積極的に産学連携に関われるようにしてきた。その結果、約400人の1年生全員が、必修の「戸板ゼミナール」で企業コラボに関わるほか、2024年度に選択科目として単位化した10個の「TOITAプロジェクト演習」、産学連携が組み込まれた個別の授業やゼミ、さらに課外でも企業コラボが多数実施されるに至っている。「全員の必修は1つだけですが、1年に3個も4個も産学連携に取り組む学生が少なくありません」(金井学長補佐)。
活動を通じて自信がつき、顔つきが変わる
それほどに多くの学生が積極的に取り組むのには、学生募集時から始まる動機付けがある。「オープンキャンパスで、学生自身が生き生きとプロジェクトに取り組んだ様子を語り、高校生がそれに憧れて入学を決めるということはあります」(金井学長補佐)。5年後・10年後ではなく、半年後の自分をイメージできるのがポイントといい、好調な学生募集の一因ともなっているようだ。入学式でも先輩が「自分はこんなに成長したんだよ」とプレゼンテーションして、新入生のモチベーションを高めている。「学生が合言葉のように言うのが、『2年間戸板にいたら挑戦しないともったいない』です。そういう空気感をもっともっと作れたらと思います」(白川学長)。
白川学長によると、高校までとても活発で主体的にいろいろな活動をしてきた学生ばかりではなく、むしろとてもおとなしかったという学生が多い。そういった学生も、産学連携を通じて大きく成長していくという。「例えばある学生は、高校まではとても引っ込み思案だったけれど、今は『社長の前でプレゼンをするのが趣味です』なんて言う。企業の方と触れ合う中で自信をつけていくことがとても大きく、学生の顔つきが変わっていく感じがあります」。
産学連携教育の効果は、積極性と自主性、行動力の面で顕著だと金井学長補佐は言う。それを受けて、今年10個で始めた「TOITAプロジェクト演習」を来年度は20ほどに増やす予定だ。また、プロジェクト演習の質を高めるために時間の確保が課題となっており、柔軟な授業運営が行える学事暦の見直しを検討中だという。
授業開始前から将来のキャリアデザインを意識
年限が2年と短い短期大学のキャリア支援は、「授業が始まる前から就活の話が始まるような感じになります」と白川学長は言う。「例えば1年生前期のキャリアデザインという授業で、講義と並行して『夏休みにはインターンシップ』といった話もして、就活に向けたプログラムに学生を乗せていきます」。
金井学長補佐は「戸板のインターンシップは、基本的には『仕事を好きになる』ことを第一優先にしています」と言う。専門学校であれば、仕事を知る・慣れるといったことが主眼になるが、それとは違い、楽しく仕事をさせたいという考えだ。
卒業後の進路は圧倒的に就職が多い。それだけに、四大卒に負けない力を持った学生を出していきたいという。就職状況は良く、卒業生の満足度も高いようだ。「ゼミに戻ってきて『在学中こんなふうに学んだのが良かった』など、喜んで在学生にフィードバックしてくれる卒業生がたくさんいて、いい循環ができていると感じます」(白川学長)。
将来に向けて戦略的に活かせる2年間に
最後に、こんな短大にしていきたいというビジョンを白川学長に伺った。
「女性がキャリアを考えるときにいろいろな選択肢があるべきだと思いますし、その意味で短大の2年間というのは戦略的に使えると思っています。2年間短大で学んだあと、留学しても、専門学校に行っても、就職してまた学び直ししてもいい。そういう戦略でむしろ短大を選ぶ高校生が入ってくる、本学がそういう短大になったら面白いと私は思っています」。