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[新Vol. 46]徳島文理大学
徳島・香川2キャンパスで、地方でも幅広い学修機会を提供
2025/01/20 タグ: 事例紹介
徳島文理大学基礎DATA
本部所在地 徳島県徳島市
設置形態 私立
学部 薬学部/人間生活学部/保健福祉学部/総合政策学部/音楽学部/香川薬学部/理工学部/文学部
学生数 3633名(2024年5月現在)
社会(企業)が学生(新入社員)に求める能力レベルが高まる傾向にあるなか、大学が取り組むべき教学改革は、学生(学修者)本人に対しては学修成果を可視化し、社会に対しては卒業時質保証を行うことだろう。その取組があってこそ、学生は最終学歴となる「学びのゴール」に到達すると同時に、「働くことのスタート」に立つことができるのだ。
このシリーズでは、「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目し、学長および改革のキーパーソンへのインタビューを展開してきた(リクルート「カレッジマネジメント」誌との共同企画)。今回は徳島文理大学で、地域の「学ぶ」「働く」に関して担う役割などについて、村崎文彦理事長にお話をうかがった。
9学部27学科を持つ総合大学
徳島文理大学は、徳島・香川の2つのキャンパスに短期大学部を含め9学部27学科を持つ総合大学だ。ニーズの大きい国家資格系の保健福祉学部や2つの薬学部から、四国4県で唯一の音楽学部まで幅広い。
村崎文彦理事長(学校法人村崎学園)は、「放っておくと、東京や大阪・名古屋・福岡に行かなければ学びたいものが学べない時代がやってくる」と指摘する。「そのときに27学科という形でメニューがたくさんあるのは大事だと考え、本学がこの地域のこの分野を担っていくという思いで続けています」。
多学部・多学科展開の理由はほかにもある。「高校生には初めの仕切りはある程度あったほうがいい」ということだ。社会に出て「働く」際には、大学や学部による仕切りはない。しかし「学ぶ」入口にいる高校生には仕切りが必要というのが、徳島文理大学のスタンスだ。
学部・学科の枠を超えて学び合う総合大学
総合大学のメリットは、学科の「仕切り」に入っても、学内で学部・学科の枠を超えての学びが可能なことだ。サークルなどの課外活動だけでなく、学業の中での幅広い出会いを意図し、「文理学」「地域学」などの全学必修科目を要所要所に入れ、学部や学科混成の授業にすることで、違う学科の学生が一緒に学ぶ工夫をしている。
「一緒のことを一緒の空間で学ぶだけでもいいんです。環境も違うし背景も違う、大学で学ぶ動機も違う。そういう人達が1つの科目を選択して共に学ぶなかで、価値観や考え方の違いが融合していくのが、大学での学びだろうと思います」。
総合大学であることに加え、学生の出身地が広い「都市型」であることも特徴的だ。「地元県出身の学生が8割〜9割の地方私立大学が多いなかで、本学はキャンパスのある徳島・香川の2県で半分強、その他近隣の愛媛、高知、兵庫県や沖縄県からも学生が集まっています。東京や大阪の大学でなくてもいろいろな出身県の仲間ができるのは、本学の特色であり魅力だと思います」。
幅広い職業の就職説明会で選択肢を広げる
9学部の中で、文学部や音楽学部は就職に結びつきにくいように思えるが、実は例えば音楽学部の就職率は、100%をずっと維持しているという。「音楽の専門家としての就職の数は、枠そのものが少ないこともあり、それほど多くありません。でも、ほかの一般就職は強いです」。演奏会、OBオーケストラなどでいろいろな年代の人と接する機会が多いことや、同じオーケストラの仲間の学生と楽曲に取り組む経験がプラスに働いているようだ。
「コミュニケーションをはじめ基本的な力をつけていれば、文学部、音楽学部、人間生活学部の進路は本人の努力次第というところがあります。逆に言えば国家資格関係の学部・学科のほうが、将来の選択肢はある程度決まっているともいえます」。
そのような観点のキャリア支援の一つとして、幅広いジャンルの企業を集めた就職説明会を徳島・香川両キャンパスで開催し、「社会にはさまざまな業種職種がある」と選択肢を広げて見せている。「僕ら大人が背中を押す場面はたくさん出てきますが、大人の役割としては見えないように仕掛けを作ってあげるのが教育的に大事なことだと思っています。この仕掛けに名称はありません。押しているけれど押していないふりをしているからです」。
卒業後に戻れる拠点としての大学創り
地域の社会人の学び直しとして、薬剤師、理学療法士など資格を得て働いている人へのリカレント教育も近年、強化している。
また、リカレント“教育”とは異なるが、大学と社会人とのつながりとして、オーケストラへの卒業生の参加がある。「毎週決まった曜日に夕方からOBオーケストラの練習があるんです」。大学が企画するまでもなく、二十数年前に自然発生的に始まったものだという。「社会に出た人たちの戻れる拠点、コミュニティとして、ずっと続けていきたいと思っています」。
徳島・香川2キャンパスの交流強化を
これからの取組としては、2025年度の香川キャンパス移転を契機に、学部・学科間のいっそうの連携、そして2つのキャンパス間の連携を進めるという。
高松駅横の新・香川キャンパスでは総合政策学部に経営学科が新設される。「経営学はどのジャンルにもくっつく、ハブになりうる学科だと信じています。香川薬学部、保健福祉学部などの医療系学科、また文学部や理工学部などの学びにも経営的視点を入れることができるでしょう」。
新・香川キャンパスは徳島キャンパスとの行き来が現キャンパスよりもしやすく、学生同士の交流も活発化が期待されている。「ネットをうまくは利用しますけれども、頼りすぎることなく、両キャンパスの学生が実際に交流することをどんどん増やしていけたらと思っています」。