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コロナショック下の大卒求人倍率を考える

バブル崩壊、リーマンショック時の事象を参考に

2020/05/11

角方正幸(「キャリアの広場」責任者/____
リアセックキャリア総合研究所所長)

例年4月の下旬に公表される大卒求人倍率は、2021年卒については、新型コロナウイルス感染拡大の影響で2か月以上遅れる見通しとなっている(「大卒求人倍率調査(2021年卒)」公表延期のお知らせ)。というのも、来年4月の新卒採用数を尋ねられたとしても、多くの人事採用担当者は「未定」と答えざるを得ない状況ではないか。中小、零細企業の多くは来年の採用計画どころではなく、今は企業の存亡をかけて日々格闘しているからだ。
そこで、今回の新型コロナウイルス問題が大卒求人倍率に与える影響を、過去の2大不況、つまり1991年のバブル崩壊と2008年のリーマンショックによる世界同時不況で起きた事象を参考に考えてみたい。
ただ、今回の「コロナショック」は現在進行形で、未だにその終息時期やその後の社会経済の姿が見通せない状況であることから、予測は多分に私見を伴っていることをお断りしておく。

過去の2大不況時の大卒求人総数の推移

では過去2回の大不況時に大卒求人総数はどの程度落ち込んだのだろうか。
1991年3月卒の大卒求人総数は約84万人で、その時点で、調査開始(1987年3月卒)以来最も大きな数字となっていた。それが、バブル崩壊を受けた翌年から対前年▲12.2%、▲16.4%、▲17.8%、▲21.1%、▲2.4%と6年連続で減少し、1996年3月卒では約39万人まで落ち込んだ。
次いで、2008年秋に端を発するリーマンショックでは、2009年3月卒こそ大卒求人総数は約95万人と過去最高であったが、翌年から対前年▲23.5%、▲19.8%、▲3.8%と3年間で56万人へと減少した。
つまり、バブル崩壊では4年にわたり毎年大卒求人数が約10万人減少し続け、一方のリーマンショック時は2年連続で約20万人ずつ減少したことになる。

過去の事例とは異なる、コロナショックの深刻さ

今回のコロナショックではリーマンショック時を越える景気後退が確実で、企業の大卒採用意欲は、2020年3月卒の求人総数約80万人から大幅な落ち込みを見せるものと予想される。また、業種別や規模別の大卒求人数を見ると、新型コロナウイルスの影響は、より甚大になると考えられる。というのは、今回の「コロナショック」は、業種でいえば流通業やサービス業、規模別では中小零細の事業者へのダメージが大きい。ところが2020年3月卒を例に大卒求人数の内訳を見てみると、流通業・サービス業の2業種合計では、求人数全体に占める割合は50%以上と高い。規模別の求人数で見ても、従業員300人未満の求人数が約45万人と全体の半数以上を占める。リーマンショック時は金融、製造業への影響が大きく、この2業種での減少率が大きかったのとは異なる状況と言える。


2016年~2020年データは「大卒求人倍率調査」(株式会社リクルート)による。「大卒求人倍率調査」は、全国の民間企業の大学生・大学院生に対する採用予定数の調査、および学生の民間企業への就職意向の調査に基づき、大卒(大学院卒を含む)求人総数、民間企業就職希望者(大学生・大学院生)数、大卒求人倍率を推計し、公表しているもの。新規学卒者(大学・大学院)を対象とする求人動向の需給バランスを、30年以上にわたり継続的に捕捉することが可能。

このように考えると、一時的には今年初めに企業が回答した求人数の半数以上が失われることになりそうだ。現状では、ここ数年の約70万~80万人という水準から、半数以下の35万人前後まで落ち込むことが考えられる。
一方の民間希望就職希望者数はほぼ横ばいで推移し、約43万人。結果として、大卒求人倍率は0.81倍と1を大きく下回る。過去、大卒求人倍率が1.0を下回ったのは、いわゆる就職氷河期の2000年3月卒の一度だけで、それも1.0にわずかに届かない0.99倍であったことを考えると、いかにその影響が大きいかが分かる。
さらに、新卒求人数は景気の遅行指標として知られており、求人倍率の低下は2021年卒にそのまま表れるだけではなく、2、3年かけて続く可能性が高い。いずれにしても絶対的な求人数が大幅に落ち込み、就職希望者数に満たない状況が生まれる。つまり、企業の選り好みをしなくても2、3年は約10万人の就職浪人が毎年発生する。これまでにない超就職氷河期となるだろう。

コロナショック下で大卒者の「学ぶと働くをつなぐ」ための3つの指針

そこで、最後に大学のキャリアセンターや大学経営者がいかにこの危機に対処するかについてコメントしたい。

大事なことは、いずれ大卒求人は回復、それも大幅に回復するということだ。新型コロナウイルスはいずれ終息し、新たな社会経済システムへと移行する。そのとき、少子化の日本では若年労働力とりわけ大卒人材への需要が確実に拡大するからだ。そこで以下の3点をこれからの指針としたい。

  1. これから当面の間、就職支援の対象を卒業後3年までとし、卒業後の就職支援も大学が責任をもって取り組む体制を整備。
  2. 卒業後も働く意欲を維持し、高めることに注力する。またメンタル面でのケアを怠らない。学生と教員、学生と学生の繋がりを大事にし、孤立化させない努力が必要。
  3. トップダウンによるスピード改革が必要で、とりわけ教学とキャリアセンターの連携強化が求められる。

以上の対応をスムースに進めるためには、学長の強力なリーダーシップが不可欠であろう。そして、就業力を高める正攻法は授業や課外活動を通じての人間力、基礎力の向上に尽きる。また、企業の働き方(リモートワーク)や求める能力も日々更新されることから、地域や社会との連携をいっそう強化することも肝要といえるだろう。

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