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[新Vol.11] 大阪経済法科大学

実績で好循環のキャリア教育、「特色ある中堅大学」目指す

2018/01/18  タグ:  

大阪経済法科大学基礎DATA

本部所在地 大阪府八尾市
設置形態 私立
学部 経済学部/法学部/国際学部
学生数 2971名(2017年5月1日現在)

大学は、最終学歴となるような「学びのゴール」であると同時に、「働くことのスタート」の役割を求められ、変革を迫られている。キャリア教育、PBL・アクティブラーニングなど座学にとどまらない授業法、地域社会・産業社会、あるいは高校教育との連携・協働など、近年話題になっている大学改革の多くが、この文脈にあるといえるだろう。
このシリーズでは、「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目し、学長および改革のキーパーソンへのインタビューを展開していく(リクルート「カレッジマネジメント」誌との共同企画)。各大学が活動の方向性を模索する中、さまざまな取組事例を積極的に紹介していきたい。
今回は、社会科学系の特色ある中堅大学を目指し、多様なキャリア教育を充実させている大阪経済法科大学で、田畑理一学長にお話をうかがった。

1. 2012年以降、本格的な改革を推進

大阪経済法科大学の田畑理一学長は「本学が本格的な改革を開始したのは、2012年に八尾駅前キャンパスを建設したのが契機です」と語る。2014年に経済学部経営学科、2015年に大学院経済学研究科、2016年に国際学部と次々に設置。シャトルバスで結ばれた花岡・八尾駅前の2キャンパスに3学部4学科1研究科を配する体制となり、2019年には経営学部設置も計画されている。
1971年に創立者の金澤尚淑博士が私財を投じて開学して以来、大学名のとおり経済・法律の2学部体制をとってきたが、「経済と法律、2つの学問の修得による人格の形成」「実学の精神を持った人材の育成」「人権の伸長と国際平和への貢献」の3つを建学の精神に掲げていることから、国際学部の新設は自然な流れだったようだ。
「国際交流、国際協力を手掛ける国際部という部署が開学当初からあり、実際に今25カ国・地域に合計63の協定校があります。その中には協定を結んで30年以上になる北京大学をはじめ、その国を代表するような名門大学が多数含まれています」。

2. 全員、早期、少人数、属性別支援のキャリア教育の4つの柱

田畑学長が「本学の特徴」と自負するキャリア教育には、基本的な観点として4つの柱が立てられている。進学・就職に関わらず卒業後の進路を考えるためのキャリア教育を全員が受ける「全員化」、初年次からキャリア開発科目を設ける「早期化」、2年次3年次のキャリア科目を15名前後のゼミ形式で実施する「少人数化」、女性、体育会系学生、留学生などに応じた「属性別支援」の4 つだ。

具体的な取り組みは、正課・正課外の双方で手厚く行われている。正課だけで公認会計士や司法試験といった難関資格を通すことはできないが、かといって正課外で資格だけを目指すなら専門学校になってしまう。そこをどう融合させて学生1人ひとりの希望進路を実現させたらいいのかに配慮しているという。

正課の授業では、1年~3年次にキャリア科目を取り揃える。初年次にキャリア科目を置いたのは99年。その後、2009年に3年次、2011年に2年次と広げてきた。「現在1年次全員が履修指定の『キャリア開発A・B』は、将来に対する意識づけに主眼を置いた入門的な科目です。講義形式が軸ですが、グループワークも行い、公務員志望が多い法学部なら地元の八尾市消防局の方に公務員として働く意義についてお話しいただくなど、外部講師を適宜入れた形です」。
2年次の「キャリアデザイン演習A・B」では、社会人に求められる諸要素、社会人基礎力、といった課題を設定し、グループディスカッションやグループワークを通じて自己理解と社会・職業理解を深め、発表まで授業の中で行う。3年次の「キャリア演習A・B」は、自己分析、業界・企業分析等ガイダンス的な内容が中心だ。
これら以外に、「公務員特別演習」というキャリア科目もあり、公務員志望者は2年次でそちらを履修する。

3. 20年の歴史を誇るSコース

正課外のキャリア支援でまず挙げられるのは、開設から20年の歴史を持つ特修講座「Sコース」だ。公務員試験、会計専門職、法律専門職、大学院進学の4分野の各種講座を、無料で受講できる。
「1995 年の『教育白書』で、大学大衆化時代を迎えて、学生の多様な教育ニーズに応えていくことの必要性が指摘されました。中でも本学が着目したのは、資格取得に役立つカリキュラムを充実してほしいという要望が学部学生で35%に達したことだったのです。
一方で同じ頃、司法試験や公認会計士試験の合格者、大学院進学者が増加してきました。そこで、もともと先生が手弁当で教えていたものを制度化し、1997年度から、法職、会計職、大学院進学の3つを特修講座Sコースとして開設したという経緯でした」。

1990年代後半から正課・正課外で取り組んできたキャリア支援は、2012年の八尾駅前キャンパスの新設でいっそうの充実をみた。
「基本的に3年生4年生がメインのキャンパスなので、少人数制の授業を行う前提で、教室は最大でも99名用です。ある意味キャリア教育といいますか、少人数の双方向授業によって、一方的に話を聞くだけでなく、発話の力をつけることを意図しています。小さな教室は、警察官志望の学生に警察OBの先生がマンツーマンで試験の直前対策をするといった使い方にも向いています。
キャンパスの中心にはキャリアセンターとエクステンションセンターがあります。キャリアセンターは夜20時まで開けていて、駅前ですから、就活中の学生がいつでも相談に行けます。スタッフの8人中5人はキャリアコンサルタントの国家資格も持っています」。建物自体の仕様からスタッフの配置まで、八尾駅前キャンパスは「全部キャリア教育用に作られたと言っても言い過ぎでない」というわけだ。

4. 実績が志願者を増やし、入学者が実績を出す好循環

そうした取り組みの成果はまず、各種資格・試験をあわせて年間のべ1400名ほどの合格者という数字に表れている。この中には、公認会計士に現役で合格、税理士試験の2科目に3年生の時点で合格、慶応、早稲田、中央といったロースクール(法科大学院)に合格、などの事例が含まれている。最近では、合格率4.1%の難関である司法試験予備試験に2年生が1人通るという快挙もあった。
実就職率のランキングも、八尾駅前キャンパスができ、キャリア教育科目が整備された2012年度以降、上昇しているという。「関西の私立大学で下位グループに沈んでいたのが、今は中位グループの上位。さらに上位の大学をキャッチアップするところまで来ました」。

数字ばかりでなく質的な成果も、企業から、あるいは高校からの評価で強く実感しているという。
「八尾では、東南アジア含めてグローバル展開している企業が規模の大小を問わず多いので、海外インターンシップでも協力をいただいてタイやベトナムに学生を送っていますが、そこで『ベトナムに残って働いたらどうだ』と声をかけてもらったり、地元の企業から、『大手ばかり狙わないでうちに来てくれ』との要望が強く出てきたりしています。
地元の高校との関係性でも、この5年ほど、公務員志望の生徒さんに、先生から本学の名前を出していただけるようになってきています」。

また、「実績が入学者を、入学者が実績を」という好循環によりSコースが発展したというのも現場の実感だ。例えば2018年の大学案内では、弁護士や司法書士になった卒業生が7人紹介されているが、87年卒の1人以外は、Sコースで学んだ卒業生。「そういう実績を学生自身や、高校の先生、保護者が見ることで、志を持って法曹や公務員を望んで入ってくる学生が目立ってきました」。

5. 「特色ある中堅の社会科学系総合大学」を目指して

今後の中期展望として田畑学長は、現在2880名の収容定員を3000名以上の規模にして、「特色ある中堅の社会科学系総合大学」に発展させることを目標としているという。イメージは、中小企業論における「中堅企業」だ。
「規模はそれほど大きくない、売り上げでいうと1兆とかではなく、数百億から数千億円くらい。専門分野でノウハウを持ち、特色を持つ企業。そういう概念の中で、社会科学系総合大学という分野での『特色ある中堅』を目指そうということです。
特色とか中堅の中身については、これまでの実績の中から、われわれの特色とは何か、中堅にふさわしい中身は何か、というのを思い描くプロセスとともに、総合性や安定感、そこでの躍動感をどう作っていくのかは議論しているところです」。

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