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[新Vol. 32] 公立千歳科学技術大学

千歳市の産学研究・地域活性化の拠点を目指す

2021/07/09  タグ:  

公立千歳科学技術大学基礎DATA

本部所在地 北海道千歳市
設置形態 公立
学部 理工学部
学生数 1094名(2021年5月1日現在)

大学は、最終学歴となるような「学びのゴール」であると同時に、「働くことのスタート」の役割を求められ、変革を迫られている。キャリア教育、PBL・アクティブラーニングなど座学にとどまらない授業法、地域社会・産業社会、あるいは高校教育との連携・協働など、近年話題になっている大学改革の多くが、この文脈にあるといえるだろう。
このシリーズでは、「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目し、学長および改革のキーパーソンへのインタビューを展開していく(リクルート「カレッジマネジメント」誌との共同企画)。各大学が活動の方向性を模索する中、さまざまな取組事例を積極的に紹介していきたい。
今回は、公設民営方式の私立大学から2019年度に公立化した公立千歳科学技術大学で、宮永喜一学長にお話をうかがった。

1.光科学技術の教育研究拠点

公立千歳科学技術大学は、1998年開学の千歳科学技術大学が2019年に公立化した大学だ。
「光科学技術の教育研究拠点」となることを目指し、千歳市の支援を受けた公設民営方式で1998年に光科学部1学部2学科で発足。2015年、広い範囲の理工学を対象とする理工学部に改組。2019年、「地域連携」や「研究力」の強化と、「グローバル化」の推進を目指して公立化した。その道のりを、2021年4月に就任した宮永喜一学長は、研究者の観点を交えてこう説明する。
「日本は、1998年当時も現在も、光科学の分野で世界のトップレベルを走っています。ただ、例えば光通信を大規模なネットワークにして、その上でサービスを提供するような場面を想定すると、たとえ光デバイス技術がすぐれていても、それだけで世界ナンバーワンというわけにはいかないのです。本学でも、異分野の領域同士が融合し、新しい技術を生み出す研究・教育を進めるよう、改組が重ねられてきました」。
公立化の目的の1つは、北海道の玄関であると同時に、日本の玄関の1つといえる新千歳空港を擁する千歳市が、国際都市としてグローバル化をいっそう推進することだ。「さらに、学生の多くが北海道内の出身であるため、地域連携を強力に進めることも重要です。こうした状況から、2019年に公立大学として再スタートを切りました」(宮永学長)。

2.公立化により地域課題解決への取組を強化

公立化とともに本格化した改革の取組が、地域連携の強化推進だ。地域課題への大学のサポートには、千歳市から大きな期待がかかる。そこで、2019年4 月に「地域連携センター」を設置し、地域創生構想『スマートネイチャーシティちとせ』(Smart Nature City ちとせ:SNCちとせ)を提唱、その推進を主な活動内容として、地域のステークホルダーと協力し、広く活動を展開することとした。
千歳地域には、支笏湖や鮭の遡上する千歳川などもあり、農業や漁業の課題も多くある。そのため「SNCちとせ」は、幅広い地域課題に、大学が有するICTなどの科学技術の活用による解決を図るものとなった。
さらに、公立化のメリットを活かし、私立では実現しにくい研究力や国際連携推進力の大幅な向上を目指したグローバル化の推進にも取り組んでいる。国外大学との連携、留学生の確保や国外インターンシップ・国外留学、国際共同研究などの推進を行う方向だ。
また、光技術の国際的研究拠点形成を目指して開学前年の1997年に設立し、光科学に関する地元ベンチャー企業の創業・育成支援などの地域連携を行ってきた産学官コンソーシアム「ホトニクスワールドコンソーシアム(PWC)」を2001年にNPO法人化、活動範囲を千歳地域に限定せず、世界に向けた事業としていっそうの拡充を進めたいとしている。

3.教員数増加により教育体制を強化

改革に取り組む学内の体制整備として、まず課題となったのが、教員数の少なさだ。ST比(教員1人あたりの学生数)が高く、公立大学としては教員数が非常に少ないという。
「研究力・教育力を高めるため、国際共同研究にも積極的に参加してくれるような若手の教員を、毎年複数名、採る予定です」(宮永学長)。
2020年度からは、オンライン化科目やハイブリッド科目のコンテンツ作成、実験・実習の少人数化による担当講義時間の増加などの負担も加わっている現状に対して、TA(TeachingAssistant)の採用拡大や、事務職員による支援で、改善を図っている。「例えば授業のオンライン化で、システム運用の支援などを職員が多く担いました。そういう場面でも、教職協働が機能していると感じています」(宮永学長)。

4.キャリアについてビジョンを持った学生を育成

事務職員が授業改善にも積極的に関わるのは、私立大学の名残かもしれないと、宮永学長は言う。キャリアセンター長の吉本直人教授も、「キャリアセンターも、学生一人ひとりに対してきめ細かに指導する体制を、職員教員が非常によく連携してやっている。こうした私立の良さを、公立になっても失わないようにしていくのが、1つのアピールポイントと思っております」と語る。
「学ぶと働くをつなぐ」キャリア教育の観点から宮永学長が懸念するのは、近年の学生が「いろんな会社から、どういうことができなければいけないとか、協調性も人間力も必要とか、いろんなことを言われる」ことだ。「大学がキャリア教育をきちんとしていかないと、なかなかキャッチアップできないのではという感じはします」(宮永学長)。
吉本キャリアセンター長も同様のことをこう語る。「就職活動にあたり、情報が非常に多い。しっかりとビジョンを持った学生は少数で、多くの学生は情報の多さをメリットとして活かしきれていないところがあります。終身雇用からジョブ型に変わりつつあることへの対応も課題です。そういう情報について、学生は我々以上に非常に過敏に受け止めているからです」。
キャリア支援については、全学的な協力体制をとっているものの、開学から20年強という若い大学なのでOBOGの組織化や、企業とのネットワーク形成には苦労が多いという。

5.公立化で学生募集状況が改善

公立化して3年目での成果としては、学生募集状況の改善がある。私立大学時代は1倍を切ることもあった入試倍率が、公立化以降は3倍程度となっており、期待値の高まりを感じると宮永学長は言う。
8割以上が道内という学生の出身地は、公立化前後で大きな変化はなく、卒業生の約7割が首都圏で就職する状況についても、「その傾向はより強まるという見方が一般的」(吉本キャリアセンター長)という。ただ、この度のコロナ禍で、また違った風が吹くという考え方もある。
「今就職活動をしている4年生に関しては、4割から5割は道内志向となっています。コロナの影響による一時的な傾向なのか、今後持続的になっていくのかはまだ分かりませんが、うまく地元企業とマッチングが取れるようになれば、新しいネットワークができるのではないかと期待はしています」(吉本キャリアセンター長)。

6.研究力強化とグローバル化の推進を目指す

今後の取組は、公立の理工学系大学としての研究力強化が軸になると宮永学長は言う。
「理工学の分野では、グローバル競争に耐えうる研究力強化が重要です。基本的な取組として、まず教員の拡充です。また、広く国外の大学と連携をして国際的な共同研究を進めたいと考えています」(宮永学長)。
グローバル化推進の一環として、留学生の数を増やすことも考えているという。「今後の技術者にとって、大学時代から、北海道の学生ばかりでなくて、ワールドワイドないろんな考え方を持ち、いろんな言葉を話す学生がまわりにいることは大事です。実績が少ないので、これからの話ですが、大学院を中心に、定員の1割から2割ぐらいは留学生になると良いと思っています」(宮永学長)。
同時に、大学院教育の充実も重要課題としている。4月末には、道内の4高専と包括連携協定を締結。従来非常に少ない、高専からの編入学生や高専専攻科からの大学院進学者などを増やすことを意図したものだ。
研究力強化とグローバル化推進は、公立化のもう1つの狙いである「地域連携」にもつながる。「千歳市が全国もしくは世界から誘致する企業と本学が共同で、『光科学を切り口にした異分野連携研究・開発』を行う構想です。この地域連携は、成果を千歳だけではなく、日本および世界にフィードバックするという方向性で、地元自治体と本学とがよく一致しているところなのです」(宮永学長)。

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