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[新Vol. 34]大阪工業大学

厳正な成績評価とディプロマ・サプリメントで自律学習を促進

2022/01/11  タグ:  

大阪工業大学基礎DATA

本部所在地 大阪府大阪市
設置形態 私立
学部 工学部/ロボティクス&デザイン工学部/情報科学部/知的財産学部
学生数 7354名(2021年5月1日現在)
AP 2016年度テーマV「卒業時質保証」

APに関連する大阪工業大学の活動

社会(企業)が学生(新入社員)に求める能力レベルが高まる傾向にあるなか、大学が取り組むべき教学改革は、学生(学修者)本人に対しては学修成果を可視化し、社会に対しては卒業時質保証を行うことだろう。その取組があってこそ、学生は最終学歴となる「学びのゴール」に到達すると同時に、「働くことのスタート」に立つことができるのだ。
このシリーズでは、「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目し、学長および改革のキーパーソンへのインタビューを展開してきた(リクルート「カレッジマネジメント」誌との共同企画)。Vol.33からは、2019年度まで行われてきた大学教育再生加速プログラム(AP)事業において高い評価を受けた事例の、その後の取組について紹介していく。
今回は、2016年度採択のAPテーマV「卒業時質保証」の取組が事後評価でS評価を獲得した大阪工業大学で、井上晋学長、椋平淳教授(教務部長)にお話をうかがった。

1.JABEE認証の経験をもとにした全学的な質保証

大阪工業大学の2016年度大学教育再生加速プログラム(AP)テーマV「卒業時質保証」は、それ以前に工学部で積み重ねられてきた教育改革を全学に展開する形で進められた。
工学部では2011年度から改革の検討を始め、全学的には2015年度末(2016年3月)、当時の学長により「適正な成績評価基準に基づく厳正な成績評価の実施」の方針が掲げられた。これを土台に、各授業科目への「ミニマム・リクワイアメント(MR)」設定に着手し、さらに2016年度のAP採択で、工学部から他3学部への展開が加速されたという経緯だ。

井上晋学長は、当初からの課題意識として学生の学修不足を挙げる。「3年次の後半から就職活動を行い、3年次に配当されている専門科目をあまり履修しない傾向などが指摘されていました。そこで、建学の精神『世のため、人のため、地域のため、理論に裏付けられた実践的技術を持ち、現場で活躍できる専門職業人』を育成するための改革を始めることになりました」。

一連の取り組みが2011年度とかなり早い時期に始まったのには、理工学、情報、農学分野の技術者教育プログラム(学科やコース)ごとの認定制度「JABEE(ジャビー)」の認証という背景があった。技術者教育においては「国際的に通用する質保証」のニーズが高く、大阪工業大学でも、2005年の工学部都市デザイン工学科(土木分野)を皮切りに、複数の学科・コースが学習・教育到達目標の策定・運用などを行ってJABEE認証を得ていた。その経験が全学の改革でもかなり参考になったという。

2.学生の最低限のレベルを厳格に定め、学修成果を可視化

AP事業の大きな軸は、「ミニマム・リクワイアメント(MR)を中心とする厳正な成績評価」「学修成果を可視化するディプロマ・サプリメント(DS)システムの開発・運用」の2つだ。

ミニマム・リクワイアメント(MR)とは、その科目の基礎となる、最低限修得すべき知識や能力のこと。3000科目ほどある全授業科目で、単位取得の最低ラインの要件を決め、MRとしてシラバスに明記した。MRを満たした科目のみがDPに積み上げられていき、「卒業時の質保証」につながる仕組みだ。椋平淳教務部長は「大学教育は、社会が持続・発展する“基盤”そのもの。大学として卒業生の力を保証する最低限のレベルを、厳密に定める意味を込めた」と説明する。

もう1つの大きな施策が、学修成果をweb上に可視化して学生と教員で共有する「ディプロマ・サプリメント(DS)システム」だ。DP達成度、修得単位数など8項目に絞り込んだ可視化項目には、学生の学修意欲を高めるさまざまな工夫をこらしている。1つ例を挙げると、レーダーチャートに各指標の「目標値」を示している。「平均以上の学生でも、目標に達してないことを刺激として、学修意欲が湧き上がるシステムを目指しました」(椋平教務部長)。
また、全学生が年間2回(AP事業終了後は年間1回以上)、DSシステムを見ながら『自己点検・修学指導記録票』用紙を記入・提出することで、指導・フィードバックの機会を確保した。自己確認を習慣づけるために、webシステムではなく「紙で配布し紙を回収する」方式を選択。その効果もあってか、回収率はほとんどの学科で90%以上に及ぶ。

改革を進めるに当たり苦心したポイントを訊ねると、井上学長は「工学部の成功モデルケースを展開していく手順」「教職協働のプロセス」の2点を挙げた。椋平教務部長は、「全学的な情報共有もポイントでした」と補足する。「特にAP採択後は、全学集会の頻度を高めました」。

3.学生が自ら学びを振り返る機会が定着

2011年度以来の「学生の学修不足」という課題について井上学長は、「若干改善の兆しは見えてきた」と言う。「それよりもAP事業の4年間で、DSシステムによって学生が自ら学びを振り返る機会ができ、それが各学部とも定着してきたことは大きいと思います」。
椋平教務部長は、MRを全科目に設定した2017年度以降、一部の科目で成績分布に変化がみられることを成果として挙げる。「例えばMR導入以前の成績分布で90点台の学生が非常に多く、甘い成績のつけ方が明らかだった科目で、2017年度には60点台がピークになっています」。基準と評価方法がいずれも是正されたことが、点数分布に表れた成果だろう。
また椋平教務部長は、「今は、PDCAのうちCのチェックで得られることを全学で共有し、Aをどう展開するかを議論している段階です。言い換えると、教学IRを進めているところです」という認識を示した。

井上学長は、「DSシステムを単純に成績通知と理解している学生に対する、利用度を高める働きかけ」を今後の課題とする。AP事業終了後については、「S評価をいただいた『質保証』に限らず、学生と教職員が一体となって教育の質を上げ、他大学の参考にもなるシステムに育てていきたい」としている。

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