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学修成果の可視化と活用事例 vol.1

DSシステムで成長を可視化し、
教員からのフィードバックで学生の主体的学びを促進
可視化データを教学改革の議論や学生募集のPRに活用

大阪工業大学
本部所在地大阪府大阪市
学生数7,509名(2022年5月1日現在)
インタビュイー
大阪工業大学
教務部長 教授
椋平 淳

2022/05/13

専門性に加えて汎用的能力が問われる時代、それを測る手段が必要だった

本学の場合、卒業生の専門知識やスキルの高さは以前から自他ともに認めるところです。一方で学内では、「この変化の激しい現代社会で活躍できる人材を輩出し続けるには、チームワークやリーダーシップなどの育成も必要ではないのか」という意識が高まり始めました。特にこの10~15年、社会的にも汎用的能力や社会人基礎力といったキーワードが盛んに使われるようになり、そうした学生の能力を本学がしっかり伸ばせているのかを確認すべきという問題意識から、汎用的能力を測る指標としてPROGを試行することになりました。
主な受験対象を国際PBL経験者と、本学で盛んな課外活動である「学生プロジェクト」の参加者とし、これらの活動を通して培われる能力がどのように測定できるのかを検証してみました。その結果、活動を経験した学生の汎用的能力の特徴がうまく表現されており、これは有用なテストだという判断を経て、全学的にPROGを導入することになりました。本学ではすでに2010年代初めから、PBLを中心に据えたカリキュラムへの改革を進めてきましたが、改革の方向性を確認する一助となりました。現在では、全学部で国際PBLを、また一部の学部では全員履修を含めて複数年次でのPBL科目を実施しています。
理系の先生方は数字やグラフとの相性が良いので、PROGの結果から、学生個人の強みや成長、学部・学科の全体傾向、経年比較による成長分析などが数値で表示されることが、本学では好意的に受け入れられました。

学修評価やPROGスコアをDSシステムで表示し、学生の成長を可視化する

2016年度には文部科学省の大学教育再生加速プログラム(AP)のテーマV「卒業時における質保証の取組の強化」に採択されました。この事業では、「ディプロマ・サプリメント(DS)システム」を構築し、学生が自身の成長を実感できる「学修成果の可視化」に力を入れました。学力部分は従来の学業成績を多様な形式で、また汎用的能力に関してはPROGのスコアを組み込んでおり、学生はDSシステムで学修成果を確認します。(図1・2)年に1~2回、学生に自己点検シートを提出させ、教員からフィードバックを行うことが、学生の主体的な学びに繋がっていると実感しています。


汎用的能力については、テスト実施後に正課授業などで解説会も実施しています。1年次ではPROGの結果から自分の強みを見つけ、自信を高めた後、どの力をどのように伸ばしていくか、計画を立てさせます。また3年次では1年次からの能力の伸びを見て成長を実感した後、就職活動のエントリーシートに書ける自己PRを作成させています。
こうしたプログラムを整備して以降、学生たちは日々の授業やPBLなどの中で、課題の発見や解決、コミュニケーション力などに意識を払う姿勢が、以前より高まっているように感じます。漠然と「汎用的能力」について自己評価させるのではなく、能力要素ごとにスコアが明示され、強み・課題が明確に確認できることが、学生にとってのメリットだと考えられます。
また、学生の行動を促進するため「キャリア形成支援手帳」も活用しています。AP事業の一環で作成した冊子で、前半ではDSシステムの使い方を解説、後半では汎用的能力の伸ばし方のヒントを紹介しています。(図3)能力要素ごとに、PROGで顕著な成長を示した先輩学生に行ったインタビューをもとに、授業や演習、実験、PBLなどでの経験談を多数掲載しています。学生に身近なロールモデルを提示しているので説得力があり、実際の授業などでの具体的行動に繋がる実用性も増していると思います。

可視化データは、学生募集のPRや教学改革のエビデンスとして活用

本学の1年次から3年次へのPROGスコアの伸びは、全国の大学と比べても顕著です。それを示すグラフを掲載した資料を高校訪問の際に配布し、本学の教育力をPRする広報素材としても活用しています。PROGデータはエビデンスとしても説得力があり、高校の先生方などから「学力だけでなく、汎用的能力もよく伸ばしてもらえる大学」という評価をいただきつつあります。
一方、学内でもデータ活用が始まっています。例えば、ある学科では、汎用的能力の各要素について、平均スコアや伸びの度合いを他の学科と比較するなどの分析をしています。そうした知見はカリキュラム見直しの議論にもヒントを与えており、教学改革を進める上でのエビデンスとしても活用しています。

システムをさらに有効活用し、学生指導やキャリア支援をさらに充実していきたい

DSシステムにより学生は大学生活を通じた自身の成長を実感できますが、現時点ではまだ期待するほどは積極的に利用されていないと感じています。PROGの解説会の後、ほとんどの学生が「この力を伸ばしたい」と意欲を高めてくれますが、その後の積極的な行動に繋がっていない学生も少なくないと思います。実際に行動を起こす学生をどれだけ増やせるか、またそのための環境をどれだけ充実させることができるか。今後に向けての重要な課題だと思っています。
もう一つの課題は、AP事業の最終年度に完成した「IR分析システム」の活用です。このシステムは、PROGを含めDSシステム上の学修成果やその他の基礎データを統括的に分析し、優良企業への就職が望める学生や大学院に進学する可能性が高い学生などを抽出できるものです。コロナ禍の影響もあって活用はまだ十分ではありませんが、今後、学生指導やキャリア支援などに積極的に活かしていきたいと考えています。

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