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効果的な「卒業生調査」についての「よくあるご質問」

「キャリアの広場LIVE 第3回」実施レポートVol.2

2022/06/30  タグ: ,  

効果的な質問文に関して

Q4単に自由記述欄があるだけでは書いていただけないことが多く、定性評価のための効果的な質問文について教えていただければ助かります。

紙でのアンケート調査がネットでの調査に切り替わり、自由回答が大変活用しやすくなりました。また回答者も、ときに辞書など引きながら手書きで記入する時代と違い、簡単に意見を示すことが可能となっています。数字の集計に比べればまだまだ分析作業は大変ですが、定性分析もアンケート調査では大変価値があるのでぜひ積極的に活用してください。
そこで、そのための効果的な質問文作成の注意点です。自由記述を求める場合、本当に何を書いても自由ということもありますが、多くの場合は質問の意図があります。したがって、その意図が明確に回答者に伝わるような工夫が必要でしょう。一つの工夫としては、自由記述欄の質問文の中に、「例えば・・」と代表的な事例や理由などを加える方法があります。ただし欠点として、例えば・・の事例に引きずられることがあります。一般的に自由記述は、分析者側で回答者の選択肢(理由や分類など)を予見できないケースに有効な手段ですから、全く予想しないような記述が失われては本末転倒なのです。一長一短ですから、どんな意図で自由記述欄を設けるのかを吟味する必要があります。
なお、自由回答の分析手法としてはKJ法などが有効です。ぜひ研究して活用してください。

リカレント教育との連携に関して

Q5卒業生のリカレント教育との連携の検討についてもご意見を伺いたい。

社会人になった後、社会人向け講座や教育機関などを必要な時に活用し、学び直すことを一般的にリカレント教育と言います。女子大の卒業生調査ではかなり以前からリカレント教育へのニーズを把握したケースがありました。それは、子育て以降の再就職に向けてのニーズが女性に多かったことによります。現在は、男女を問わず継続就業が前提となっているので、リカレント教育も意味合いが変わってきました。また、最近よく耳にするリスキリングはリカレント教育とは異なる概念なので、ここではあくまでリカレント教育との連携として考えてみます。

卒業生調査とリカレント教育との連携についてですが、リカレント教育の対象を卒業生にする意味が薄れてきていると個人的には見ています。というのも、以前は大学のキャンパスを利用する前提で社会人教育(リカレント教育)への拡大をマーケティングする大学が中心でした。しかしながら多くの場合、社会人が働きながら大学へ通って学ぶという需要はそれほど顕在化しませんでした。その中でも、母校の大学よりは勤務先あるいは自宅付近の大学へ通うのが一般的です。さらに、昨今のDXの進展などでリモートでの通信教育がより発展しています。したがって、卒業生調査をもとに、卒業生を対象にリカレント教育へのマーケティングをしても効果的ではありません。
ただ、社会人へのアンケート調査は大学にとって簡単に出来ることではないので、卒業生を対象に社会人全般の学びへのマーケティング調査をすると位置付ければ、それなりの意味はあるでしょう。
例えば私が今後有望と考えている社会人教育市場があります。それはシニアの学習市場です。これはいわゆる現役世代の卒業生ではなく、老後を迎える卒業生を対象にした市場です。
一億総学習時代ともなれば、リスキリング(職業能力の再開発)だけでなく、人生を豊かに過ごすために知識、教養、芸術を学ぶシニアも増えるのではないでしょうか。

回収率の高まる時期に関して

Q6調査の回収率が高まる時期はあるのか? 例えば、帰省していそうなGWの時期やお盆、年末年始を狙った方がよいのか? などがあればご教示いただきたい。

調査を実施する時期は、自由に設定できるのであれば、ご質問にあるように卒業生が帰省していそうな時期が良いと思います。卒業生調査の難点は何といってもアンケートの宛先不明のケースが多いことです。宛先不明を最小限にとどめられるのが、卒業時の自宅住所に送り、転居の場合はご両親に調査の依頼状を転送していただくようお願いする、白書の卒業生調査でも実施した方法です。卒業生のご両親はラインで家族と連絡を取っていることが多く、写メなどをうまく活用して、即時に情報が伝わります。さらにコストもかかりません。
蛇足ですが、大学によっては同窓会が送る定期刊行物に依頼状を含めるという方法で卒業生調査を実施することがあります。過去の経験からすると、この方法はあまり効果的ではありません。卒業生調査は単独で依頼状を送付した方が注目され、結果として回収率も上がると思います。

少数回答時の結果解釈に関して

Q7本学は規模が小さいため、回答率は平均的でも、回答数が40件前後と少なく、本日のお話しでサンプル数が最低100欲しいとのことであったため、結果の解釈についてアドバイスをいただきたいと思います。

サンプルサイズの問題ですが、ライブでお話しした「最低100サンプル欲しい」というのは一般的なお話です。確かに小規模大学では、卒業生の人数が少なく対象者数が400人程度の場合があり、回収率が10%であれば回収数が40人です。
この場合の工夫ですが、発送する対象人数を出来る限り多くすることをお勧めします。例えば、卒後3年~4年(2年間)の卒業生への調査を企画したのであれば、卒後3年~6年(4年間)に対象者を拡大します。他調査との比較が正しくできないなどの不都合も生じますが、例えば、卒後3~4年と卒後5~6年のデータ比較を分析することによって結果の解釈がより多面的に行えます。
また、毎年継続的に卒業生調査を実施することもお勧めします。毎年の回収データを集積して(プールデータとして)分析することが可能となります。小規模であれば卒業生の卒後の動向を把握しやすいといった利点もあるはずです。

■第3回「キャリアの広場LIVE」を終えて

第1回・第2回とはやや趣向を変え、第3回のキャリアの広場ライブは、リアセック内の「調査のエキスパート」による解説セミナーとした。第4回以降の開催に向けて、皆様のご意見ご希望などをお寄せいただきたい。

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