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学修成果の可視化と活用事例 vol.6

学習者中心の教育に向けたカリキュラム改革
ジェネリックスキル測定で成果を検証し、
教職協働によりさらなる改善と入試改革へ

立命館大学
本部所在地本部所在地:京都府京都市
学生数学生数:3万2467人(2021年5月1日現在)
インタビュイー
立命館大学 文学部
人間研究学域 准教授 川那部 隆司(写真左)
事務室事務長補佐  岡本 伸也(写真右)

2022/09/13

学生中心の教育を推進するため、初年次教育のカリキュラムを改革

立命館大学が2011年に定めた学園ビジョンR2020では、「多様なコミュニティにおける主体的な学びの展開」を推進。それに基づき文学部でも、自分の意志・判断に基づいて能動的に学ぶ力の育成を重視し、さまざまな改革に取り組んできました。
入試改革に伴う初年次教育のカリキュラム改革もその一つです。2012年度に複数の専攻を束ねて構成する学域制度を導入。あわせて1回生全員が受講する「リテラシー入門」を改変し、探究的学習に欠かせないスチューデントスキル、インフォメーションスキル、ライティングスキル、キャリアスキルなどのジェネリックスキルの養成を図りました。
この取組の成果を検証するに当たっては、成績評価の指標として従来用いてきたGPA(Grade Point Average)に加え、ジェネリックスキルの測定が必要ではないかと考え、17年に、社会で求められるジェネリックスキルを客観的に測定できるツールとして、PROGテストを導入しました。

GPAとPROGスコアの相関から、文学部の学びによるジェネリックスキル育成効果を検証

2017年度入学生に対し、1回生4月に1回目、3回生12月に2回目のPROG受験を行いました。結果、文学部全体として、リテラシー・コンピテンシー共に全ての能力要素において、1回生から3回生にかけて伸びていることを確認できました。
さらに、GPA低下群とGPA向上群の2つの群に分けて、GPAとPROGスコア変化の比較分析を行いました。GPAは、授業に勤勉な態度で臨み、計画的に学習する学生が高い値を示す傾向にあり、正課の授業に対する「まじめさ」の指標ととらえることができます。GPAが向上した学生ほどPROGのスコアがより伸長しているなら、文学部の学びに「まじめ」に取り組んだ学生は学びの中でジェネリックスキルを向上させたのではないかとも考えられます。
分析の結果、リテラシー総合スコアに関しては、1回生時はGPA低下群の方がやや高かったのが、3回生時にはGPA向上群の方がGPA低下群を上回りました。一方コンピテンシー総合スコアでは、1回生時・3回生時ともにGPA低下群の方がGPA向上群よりもスコアが高いものの、その差はかなり縮まりました。つまり、リテラシー・コンピテンシー共に、GPA向上群の方がよく伸びていたわけです。

GPA向上群で特に伸びていたのが、課題発見力(リテラシー、コンピテンシー)と行動持続力(コンピテンシー)です。一方、コンピテンシーの対人基礎力(特に、親和力、協働力)や実践力については、GPA向上群と低下群の伸び幅に差がありませんでした。

この結果から、文学部の学びがジェネリックスキルの向上に寄与しているのではないかという検証ができました。一方で、対人基礎力や実践力は正課内では十分に育成できていないかもしれないという課題も見えてきました。

カリキュラム改善のさらなるヒントを得るため学生インタビューを実施

文学部改革の効果は検証できましたが、もっと多くの学生のジェネリックスキルを向上させるには、さらなる改善が必要です。その手がかりを求めて、1回生時から3回生時にかけてリテラシーとコンピテンシーのスコアがともに向上した学生を抽出し、具体的な学びの実態について、インタビュー調査を行いました。
インタビュー調査から、課題発見力や行動持続力などのコンピテンシーの向上に寄与する要因が浮き上がりました。多くの情報を収集し、さまざまな角度、広い視野から減少や事実を捉える機会(レポートやレジュメの作成、課題解決型学習)が提供されていること、普段付き合いのない学生同士のコミュニケーションや協働の機会があること、小集団授業における発表の機会が多用されていること、教員からの専門的見地に基づく質問・指導・助言があること。この4点です。
これらは「そうすればジェネリックスキルは伸びるだろうな」と思える当たり前のことであり、現状でも行われていることでもあります。ただし、全員の教員が行っていることではなく、これらをいかに広げていくか、徹底するかが大切だと考えます。そのために必要になるのが、仕組み作りと教員間のさらなる情報共有です。まずは情報共有の機会を増やしていきたいと思います。

文学部の学びで身に付きにくい対人基礎力などをさらに伸ばしていくために

今後の課題は、正課内では身に付きにくい対人基礎力(親和力、協働力)や実践力をどのように育成するかです。特に対人基礎力については、他の大学平均と比較しても低い傾向にあり、この能力の育成は重要だと感じています。対人基礎力は、現代社会で広く求められている能力であり、就職をはじめキャリア形成にもかかわるからです。
対人基礎力を高める方策の一つが、すでに導入しているグループワークです。そのやり方を改善することはもちろんですが、加えて、準正課的な位置づけであるゼミナール大会の活用なども検討しています。
2022年12月に、3回生へのPROGを実施するにあたって注目しているのは、コロナ禍が学生の学びにどう影響したかという点です。今の3回生は20年度に入学してすぐにオンライン授業に切り替わるなど、最もコロナ禍の影響を受けた学年だからです。また20年度より学域や専攻などの組織変更もありましたので、それに伴う学生の変化にも注目したいと思います。
このように今後取り組むべき課題が明確になるなど、当大学のIRがうまく進んだ理由は、日々の授業や指導を通して経験的に学生理解を深めている教員や、教育・学習に関する専門的な学識のある教員、さらに日々学生に接している職員とが、それぞれ強みを発揮して取り組んだこと。いずれが欠けても成果は出なかったと思います。大学IRを推進していく上で、教職協働は欠かせない要素です。
PROGの結果は、GPAでは測れない能力について、文学部の学びでどれだけ伸ばせたのか(成果)を確認し、今後更に力を入れるべき部分(課題)を考えるきっかけを与えてもらいました。今後は、カリキュラム改革の成果を検証するだけでなく、入試でどんな力を示した学生が入学後にどんな成長を見せるのかといった観点など、入試改革を考えるヒントにもPROGデータを活用してみたいと思います。

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