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[新Vol. 38]駿河台大学

全科目をキャリア教育と位置づけて育む「駿大社会人基礎力」

2023/01/18  タグ:  

駿河台大学基礎DATA

本部所在地 埼玉県飯能市
設置形態 私立
学部 法学部/経済経営学部/メディア情報学部/スポーツ科学部/心理学部/現代文化学部
学生数 4239名(2022年5月1日現在)

社会(企業)が学生(新入社員)に求める能力レベルが高まる傾向にあるなか、大学が取り組むべき教学改革は、学生(学修者)本人に対しては学修成果を可視化し、社会に対しては卒業時質保証を行うことだろう。その取組があってこそ、学生は最終学歴となる「学びのゴール」に到達すると同時に、「働くことのスタート」に立つことができるのだ。
このシリーズでは、「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目し、学長および改革のキーパーソンへのインタビューを展開してきた(リクルート「カレッジマネジメント」誌との共同企画)。今回は、全科目を「キャリア教育」と位置づけ、学生の目を社会に向ける教育を実践している駿河台大学で、大森一宏学長と梅村慶嗣学長補佐(キャリアセンター准教授)にお話をうかがった。

1.地域活性化プロジェクトから始まった社会人基礎力強化


学長
大森一宏 氏

学長補佐
キャリアセンター
准教授
梅村慶嗣 氏

埼玉県飯能市に所在する駿河台大学では、全科目を「キャリア教育」と位置づけ、かつ、社会に出るまでに身につけるべき基本的な能力を「駿大社会人基礎力」として明確化している。ディプロマ・ポリシーでも「『駿大社会人基礎力』と専門的知識・技能の活用力を身につけることを目標」としている。
取組のきっかけとなったのが、2004年度文部科学省現代GP採択の「学生参加による〈入間〉活性化プロジェクト」、通称「いるプロ」だ。大森一宏学長は、「飯能市に隣接する入間市と連携して、学生・教職員がまちづくりに加わり、地域の人たちを先生にして学ぶ経験をした。これが、社会人基礎力を鍛える試みの始まりだったかもしれません」と語る。

2.5つの力と15の能力要素からなる「駿大社会人基礎力」

2013年度に導入した「駿大社会人基礎力」は、「基礎的な力・考える力・行動に移す力・協働する力・総合的な力」の5つの力・15の能力要素(それぞれの力に3要素ずつ)からなる。「全学年で必修のゼミはもちろん、多くの授業でアクティブラーニングを積極的に取り入れています。また、複数のキャリア科目を1年と3年で必修にして、一つひとつの社会人基礎力を養成しています」(大森学長)。
梅村慶嗣学長補佐(キャリアセンター准教授)は「キャリア教育に『全体で』取り組んでいることがポイント」と言う。「全体で」とは、一部の部署・教員だけではなく全学・全教職員、そして全科目を意味する。キャリア教育に大きく「領域的」「機能的」の2つの側面があると見たときに、その両方に取り組んでいるということでもある。

3.領域的・機能的なキャリア教育と客観指標による把握

_“領域的なキャリア教育”とは、キャリア発達、進路選択、職業的レリバンスなどを学ぶ科目。「キャリア基礎」「キャリア発展」などの講義に、「まちを教室に、まちの人々を教師」にして実践的に学ぶアウトキャンパス・スタディ(校外体験授業)が加わる。「まちプロ」は2004年度現代GPの「いるプロ」の発展版。「森林文化」は2007年度現代GPで始まった、市域の約75%が森林という地元飯能市の活性化に貢献する取り組みだ。「地域インターンシップ」は3年生を中心に例年100人近くが履修している。
_“機能的なキャリア教育”としては、「駿大社会人基礎力」のいずれかの能力要素を到達目標としてシラバスに組み込むことで、全ての科目にキャリア教育機能を与えている。「全科目をキャリア教育と位置づける」ことの具体的な形ともいえるだろう。

キャリア教育の成果は、客観指標が得られる外部テスト「PROG」を活用して可視化。1年生と3年生が受験し、その結果(スコア)を「駿大社会人基礎力」に読み替えて「駿大成長チャート」というシートにまとめたものを、3年生ゼミでフィードバックして、学生が自己の成長を確認できる仕組みだ。「配りっぱなし・測りっぱなしにしないよう、ゼミで教員が説明していますが、まだ改善の余地のあるところです」(梅村学長補佐)。

4.就職先の7割からは「協働する力」が身についている

取組定着のキーとなったのが教職の協働だ。3年生の各ゼミをキャリアセンターの職員がキャリアアドバイザーとして1人ずつ担当し、教員と連携してゼミ生の就職を支援しているという。「学生たちの就職をキャリアセンター任せにせず、教員もかかわる。そのなかで、キャリア教育では社会人基礎力を身につけさせることが重要だ、就職だけの狭い話ではないと、体得していったと思います」(大森学長)。
「駿大社会人基礎力」を掲げて約10年の成果は、例えば就職先へのアンケートで、「協働する力」が「身についている」との回答が7割弱、という形で表れてきた。「『協働する力』は、領域的な科目だけで伸びるものではなく、機能的なキャリア教育の成果が出たと見ています」(梅村学長補佐)。

5.「学生支援ガイドブック」を作成して教職員がスキルを磨く

課題の一つは教職員のスキルアップだと大森学長は言う。「特に教員の場合、面談でも自分が話すことを優先して、学生が何を言いたいかを理解できていないこともあると思います」。そこで2020年から教員職員参加の全学研修を実施、そのテキストを兼ねた「学生支援ガイドブック」も作成した。「駿大学生対応力」をまとめたこのガイドブックには、教職員が自らのスキルの状況を確認するためのICEモデルに基づくルーブリックも収録している。教職員のスキルアップに向け、ICEルーブリックに基づく研修計画があるほか、eラーニングコンテンツも開発中という。

キャリア教育の今後の展開としては、授業手法などに関する暗黙知をライブラリー化・形式知化して各教員が自由に共有できる「駿大メソッド」の構築がある。大森学長は「教職員みんなで情報共有しながら大学として教育力の向上に結びつけていきたい」と力を込める。中期計画にも盛り込まれ、計画期間内(2026年度まで)の完成を教職協働のプロジェクトで目指すという。「アットホームな大学」の教職の一体感が、ここでも伝わってきた。

※ICEモデル…ideas、connections、extensionsを活用したモデル。本連載Vol.37、東日本国際大学の事例紹介の中に詳しい

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