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学ぶと働くをつなぐ授業拝見[Clip Number 016]成城大学

成城大学「ピアサポーター」

2024/03/22  タグ: ,  

成城大学では、自律的な学習者の育成を目的に、2017年度から「学生による学生のための学習支援団体」であるピアサポーターの活動に「教職学協働」で取り組んでいる。参加者数や活動量において非常に活発である上、ピアサポーターへの充実した研修や、全国の学生サポーター団体が交流するイベントの開催でも注目され、学習支援活動の成功例として評価が高い。
今回は「授業」とも「拝見」ともやや異なるが、学ぶと働くをつなぐ「活動」として、成城大学ピアサポーターの1期生で団体の代表(3代目)も務めた増田紗斗さんへのインタビューを中心に紹介する。

学生主体のピアサポーター活動

学生による学生のための学習支援団体である「成城大学ピアサポーター」は、教員のもとで授業の中に入る「授業サポート」、新入生向けの「時間割相談」「入学準備プログラム」などの活動を行っている。コンセプトは「学生同士の『学び合い』の促進」で、教員・職員は学生の自主性を尊重する活動支援を行う。
毎年30人前後のピアサポーターたちは、コーチングやファシリテーションなどの研修を受け、学生自身のニーズを考えながら主体的に活動内容を決め、毎年改良を加えている。また、以前から活動していた「国際交流」「キャリア」「ライブラリー」「バリアフリー」の4つのサポーター団体との横の連携に端を発して、全国の学生サポーター団体が参加する「サポーターズフォーラム」も2017年度から毎年開催している。


「成城大学ピアサポーター(学生スタッフ)募集要項」(2023年4月)より抜粋

最大の特徴は、学生主体の活動であること。それは、「ピアサポーター」という学生スタッフの呼称にも表れている。学習面を支援する学生は一般的には「ピアチューター」と呼ばれ、成城大学でも2017年春の制度発足時には「ピアチューター」として募集を開始した。しかしそれに応募した第1期の学生たち自身から、チューターには何かを『教える』イメージがあり、自分たちの名称としてふさわしくないという声が上がり、同年秋に「ピアサポーター」へと変更した経緯がある。

学生発案の活動の好例が、2018年度に始まった「時間割相談」だ。ピアサポーター1期生で3代目代表も務めた増田紗斗さんは、大学の教務課が設けている「履修相談」との違いをこう説明する。
「履修相談は、2年生から4年生で『本当に履修に困っている人』が行くもの。私たちの『時間割相談』はそれとは違って、新1年生向けに『そもそもシラバスってどうやって見るんですか』というところから始まるサポート内容です。その場でポータルサイトを使ってもらい、取りたい授業が問題なく取れているか一緒に確認したり。
あとは、『大学ってお昼は、お弁当持ってくるんですか』みたいな、1年生の最初のお悩み相談のきっかけの場にもして、どういう学生生活にしたいかまで含めて、先輩に話を聞けるようになっています」(増田さん)。教務課ではなく先輩にこそ相談したい・答えてほしいという学生視点のニーズに応える内容で、2023年度には相談数が600件に達したほどの大好評も納得だ。



時間割相談

また、時間割相談に限らずサポートを受けて、役に立った・ありがたかったという経験をした学生が、ピアサポーターになって活動するという好循環も生まれている。支援を受けた学生にとってその内容が有用であり、学生視点に立てていること。当たり前のようだが、それこそがピアサポートが継続するいちばんの秘訣なのだろう。

職員も学生と「一緒に作り上げる仲間」

増田さんが2017年に入学してすぐにピアサポーターに応募したのは、1期生として新しい活動に最初から携われることの魅力が大きかったという。
「高校までの学校生活に不満があり、大学では『何かやってやるぞ』という思いがありました」。その一方で活動内容には、興味はあっても期待はなかったという。「期待どおりにこなしていくとかではなく、期待値を自分たち自身で作っていく感覚でした。期待したものが得られたかどうか以上に、結果として面白いことに関われました。実は成城はいちばん行きたかった大学ではなかったんですが、最終的には『成城大学に来てよかった』と思えているんです」と語る。


増田紗斗さん。現在、成城大学大学院 文学研究科 日本常民文化専攻 博士課程前期に在籍しながら、株式会社FoundingBase(教育事業部)で北海道安平町の教育事業に携わっている。

初期メンバーは25人ほど。「私もそうですが、学園外から進学してきて、何かやるぞとメラメラしている人が多かったんです。その中で、学年とか学部とか関係なく、どういう目的を作って、どういうゴールを達成するか、ピアサポーターとしてどうありたいかを語り合えたのは、とても楽しい思い出です」(増田さん)。


ピアサポーター第1期の団結式(2017年10月)

成城大学のピアサポーターの特徴を改めて増田さんに聞くと、こんな答えが返ってきた。
「サポーターズフォーラムなどで他の大学のサポーターの話を聞くと、『レポートの書き方支援をするサポーターを3、4年生で募集します』というふうに、目的や活動内容が大学側から具体的に提示されている団体が多い印象です。何をどう支援するか自体を決める主導権がわりと学生側にあるのは、成城大学の特徴かもしれません」。

活動内容を学生が決めるとはいえ、大学側の要請や、教職員のアドバイスが加わることはある。誰が言い出した、誰が重要な変更を加えたなどにこだわる意識はないようだ。フラットに「みんなで作る」という理解で活動していると増田さんは言う。学生同士の場に職員が加わって、いつしか共同作業になる場面も多いそうだ。
「最終的に、どのニーズにどの活動をあてるのかは自分たちで決めていました。けれどもそこまでには、こんな困り事があるよ、と職員さんから情報提供をいただいたり、こういうニーズがありそうだ、みたいな学生同士での話の種を職員さんが忘れずに取っておいて、実現しそうな機会に出してくださったりしていました」。
このように、学生と職員との「仲がいい」点も、成城大学ピアサポーターの特徴だ。「お友達的に仲がいいというのではなく、私たち学生と同じ高さにいて、話をしてくれる。学生を持ち上げるのでもなければ、上から指示をするのでもなく、一緒に作り上げる仲間という雰囲気を作っていただいています」(増田さん)。

大学側の役割としては、ピアサポーターに対するコーチングやファシリテーションなどの研修の充実ぶりも見逃せない。ピアサポーター公式サイトでは、卒業後にも役立つこれらのスキルが研修で身に付くことを特徴の1つに掲げている。増田さんも、サポーター活動にはもちろん、日頃の学生生活や学びにも、習得したスキルが活用できていたという。「それぞれがスキルを磨くだけでなく、研修を通してサポーター間で共通言語ができ、お互いに理解し合えるという意味でも役立ちました」。


ピアサポーター研修風景

ピアサポーターの経験や活動が学生のどのような能力を育成するかについて、増田さんがまず挙げたのが「推進力」だ。「指示待ち人間でいたら何も活動できないのがピアサポーターなので、自分でやっていく『推進力』は強化されると思います」。団体の活動の中での「役割意識」や「責任感」と、自分がやりたいことを自分で進めていく「主体性」との両方が培われているように見受けられる。

増田さん自身はピアサポーターの活動で身に付けた力を、社会に出てどのように活用しているのだろうか。
「今の仕事も、自分で進めなければことが起こらないような事業なので、そこへの『しがみつき力』みたいなものは、ピアサポーターの活動で培われたようにも思います。
わりと問題を自分で抱えがちなんですけれど、そこで諦めずに、解決するために誰かに相談するとか、これだったらこの人の方が得意だったなとか、人を巻き込む思考みたいなものは、ピアサポーターの仲間や職員さんとの関わりで身に付いたのかもしれません」。

協働力、実践力の高さが際立つ


ピアサポーターが身に付けている能力を確かめるため、2年生から4年生のピアサポーターの一部にPROG受験のご協力をいただいた。人数が少ないため参考値とはなるが、私大文系全体のスコアと比較できるグラフの形にしてみると、リテラシー、コンピテンシーとも全般的に高く、特に「協働力」「実践力」はかなり高いように見える。
「協働力」の小分類では「役割理解・連携行動」「相互支援」という、サポーター団体で「みんなで」活動することと関係の深い力が特に高かった。「実践力」の高さは、増田さんが「推進力」を挙げていることと符合しているだろう。

ピアサポーター活動によって能力が伸長したとは言い切れないが、ピアサポーターの基礎力の高さは十分うかがえた。それは増田さんが共に活動したピアサポーターに「推進力」「自主性」「責任感」を、自身に「しがみつき力」「人を巻き込む力」を体感したことから裏付けられるのではないだろうか。

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