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[新Vol. 48]鳥取短期大学
地域の経済団体が支援、「地域から信頼され、頼りにされる短大」に
2025/07/05
鳥取短期大学基礎DATA
本部所在地 鳥取県倉吉市
設置形態 私立
学科 地域コミュニケーション学科/生活学科(情報・経営専攻、住居・デザイン専攻、食物栄養専攻)/幼児教育保育学科
学生数 417名(2025年5月現在)
社会(企業)が学生(新入社員)に求める能力レベルが高まる傾向にあるなか、大学が取り組むべき教学改革は、学生(学修者)本人に対しては学修成果を可視化し、社会に対しては卒業時質保証を行うことだろう。その取組があってこそ、学生は最終学歴となる「学びのゴール」に到達すると同時に、「働くことのスタート」に立つことができるのだ。
このシリーズでは、「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目し、学長および改革のキーパーソンへのインタビューを展開してきた(リクルート「カレッジマネジメント」誌との共同企画)。今回は、地域の支援と期待に応える人材の育成を目指す鳥取短期大学で、松本典子学長にお話をうかがった。
鳥取県唯一の私立短期大学
鳥取短期大学は、鳥取県中部の倉吉市にある、鳥取県唯一の私立短期大学だ。保育士や栄養士を養成する学科・専攻を1971年の開学当初から備える一方、短大ではやや珍しい情報・経営専攻や住居・デザイン専攻を含め、現在「5つの学科・専攻」となっている。キャリアの志向について松本典子学長は、「地域性もあるのか、幼稚園教諭、保育士、栄養士、建築士などの資格を目指す学生が多い」と言う。
「資格を生かしたそれぞれの専門職につく比率が非常に高いのが本学の特色です。例えば幼児教育保育学科に入る学生は、約95%が資格を持って卒業し、およそ92%がその道に就職します。比率ではおそらく全国でもトップレベルだと思います」。
地域の経済団体が大学・短大の活動を支援
松本学長は教育の特徴として「特別研究」「地域連携の強さ」の2つを挙げる。
「1つ目の『特別研究』は、2年生の1年間をかけて個人またはグループで研究活動を行う、4年制大学の卒論に当たる科目で、5つの学科・専攻のうちの4つが開講しています。特徴の2つ目は、地域との連携が強いことで、ほぼすべての学生が、2年間のうちに少なくとも1、2回は、PBL、正規の授業の地域課題研究、中高生との交流事業など、何らかの地域活動を経験します」。
地域の支援には蓄積がある。倉吉商工会議所を中心として県中部の経済団体による支援組織ができたのは1994年。2015年開学の鳥取看護大学(鳥取短期大学と同じ学校法人)も加わり、現在は「鳥取看護大学・鳥取短期大学と地域の発展を推進する会」となっている。
「大学を応援する組織が30年も前にでき、今も続いているというのは珍しいと思います。ご寄付、インターンシップや地域での活動へのさまざまなご協力など、長年、物心両面で地域に支えていただいています」。
キラリと光る教育力「地域貢献マイスター」の育成
こうして取り組んできた地域連携をベースとした「『地域貢献マイスター』の育成」事業が、2024年度文部科学省「少子化時代を支える新たな私立大学等の経営改革支援 メニュー1 キラリと光る教育力」に採択された。
2028年度卒業生からの「地域貢献マイスター」称号授与に向けて、企業や関係機関、高校の校長会、県の教育委員会などを通じて、制度を地域に浸透させていく計画だ。
松本学長は事業の趣旨を「学生時代の体験を地域に目を向けることにつなげ、大学で学び取った専門性を生かして卒業後も地域課題に取り組む人材を育てること」と説明する。ほとんどが地元に就職する卒業生は、すでに地域から高く評価されている。「ただ、就職先に毎年依頼している『雇用主アンケート』では、『地域社会の一員として積極的に行動しようとする態度』や『情報を収集、整理、分析する力』についての評価がやや低くなっています。これらの力や態度を養っていくことは、『地域貢献マイスター』育成事業の達成目標にも盛り込んでいます」。
自信につながる経験で「やればできる」を醸成
松本学長は「本学の学生は『何だか自信がない』んです」と言う。「おそらく高校までで、自分がリーダーになって皆を引っ張っていくような経験をした学生はほんの一部で、その他大勢が『その他大勢の経験』しかしていない。自分の立ち位置はこの辺、と自分の見切りをつけがちで、『がむしゃら感』が出てこないんですね」。
しかし、できる力は持っている、発揮したことがないだけ。松本学長はそう考えているという。「誰にも負けないという得意なことを見つけたり、やればできるんだという思いを持ったり、自信につながるような経験をさせようというのが、特別研究をはじめさまざまな科目や事業の狙いです。実際、多くの学生が本当に感心するくらいに力をつけていきます」。
国の補助金獲得努力に加え、ふるさと納税も開設
私立大学の最大の収入源は当然学費だが、高校生の数が減り続けるなか、特に地方では入学者を増やすことは難しく、外部資金の獲得が経営上の課題となる。国の補助金獲得に加え、松本学長が「いま力を入れている」というのが、ふるさと納税だ。鳥取短期大学と鳥取看護大学、1法人の持つ2大学を「応援する」項目を選んだふるさと納税から、その半額が大学に入る仕組みだ。「地元の倉吉市で2023年から、隣接の湯梨浜町で2025年4月から始まりました。今年度内にもう1つ、鳥取県中部のある町でも開設の見込みです」。
今後の展望について松本学長は、「資格を取ることへの意識が高い」という地域特性を踏まえて「資格に見合うだけの学力をつけて、資格を取得させて、卒業させる。そしてその道に就職させるということを続けていかなければと思っています」と言う。
「より大きな目標としては、地域から信頼され、頼りにされる短大にしたい。鳥取短大に入れたら絶対きちんと教育してくれるという信頼を、高校や地域の人に持ってもらいたい。学生は、経験さえ積めば、信頼される人材に絶対なれるはずです。そのために、現場でいろいろな体験をして、自信をつけることが大事だと思っています」。