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就業力を高めるインターンシップのありかた

新卒の就職実態と課題への対応策(2)

2013/06/17  タグ:  

角方正幸(リアセックキャリア総合研究所所長/「就業力の広場」責任者)

大手でも有名でもない企業と、銘柄大学でない学生のマッチング精度を高めるには、やはりインターンシップが有力な方法であると思う。企業と大学が「役割分担」ではなく「協同・連携」するインターシップを考えたい。

インターンシップ事業の新たな試みと成果検証

企業が評価する人材と大学での成績との間には乖離が存在し、大学の学業成績を高める努力は、こと就業力育成においてはほとんど役に立たないことがわかっている。

公開シンポジウム「今、大学教育を考える-職業との関連から-」
http://www.riasec.co.jp/hiroba/archives/4608

学生の就業力育成に効いてくるのはインターンシップのほうである。筆者の現場での経験からも、特に偏差値50前後の大学の学生の基礎力を高める効果が高い。その例として「インターンシップ神奈川」を挙げておく。
県内71の大学がいわゆる大学コンソーシアムを作り、地域雇用、学生の就職支援、そのためのインターンシップを連合体として推進していくというのが基本コンセプトである(図表:クリックすると拡大)。具体的には、初年度である平成23年度には、東海大学、神奈川大学、関東学院大学の3大学合同でのインターンシップ事業からスタートした。3大学から100名の学生を募り、地元の中堅・中小企業30社の企業先を開拓し、それらのインターンシップを手がけた。

(出所)「神奈川力∩大学力」シンクタンク神奈川機関誌No1、2011.3

参加した学生の基礎力評価を分析したところ、対人、対自己、対課題の基礎力のうち、対人基礎力がかなり向上するという結果が出た。ただし、インターンシップを実施すれば必ず基礎力が伸びるとは一概に言えない。例えば従来の短期間の職場体験的なものでは効果が少ない。基礎力が伸びるためには、適切なプログラム・内容であることが重要である。

効果的なインターンシップのための5か条

1.個別大学ではなく、地域の大学・企業・自治体が参加した組織が運営する
小規模の大学や中堅・中小企業が複数のインターンシップ案件を個別に管理・運営するのは、大きな負担である。
大学コンソーシアムが、大学と地元の中堅・中小企業とをうまく結びつけるプラットホームをつくり、インターンシップをオーガナイズすることが、大学にとっても企業にとっても、もちろん学生にとっても有益である。

2.インターンシップ期間中のプログラムを企業任せにしない
企業・大学は職業教育・訓練の内容について一層連携する必要がある。例えば大学の授業にインターンシップを組み込む仕組みを設定し、教員/職員が積極的に関与して教育プログラムとしての内容を充実させる。

3.体系的な事前・事後の研修プログラムの必要性
インターンシップ期間中だけでなく、事前・事後のプログラムによって学生の基礎力を評価し、各自の課題を明確にする。これによって教育の効果が飛躍的に高まる。

4.インターンシップの長期化
2、3日というような短期のインターンシップに、基礎力向上の効果は期待できない。最低でも1カ月間、できれば半年間のプログラム作りを目指す。

5.インターンシップ・コーディネーターの養成・確保
地域の中小企業の中には新卒採用を毎年行わない企業もあり、教育担当者を配置する余裕もなく、人材を育成する余裕や育成プログラムを有さず、職業教育・訓練の態勢が整備されていない企業も少なくない。大学での職業教育・訓練と就職後の職業教育・訓練を一貫して支援するには、インターンシッププログラムの開発や指導のできる「インターンシップ・コーディネーター」と呼べるような人材を養成し、確保することが必要である。

役割分担から協同・連携へ

以前は、企業が仕事をさせながら育て、大学が学術教育を行うという役割分担がなされていた。これからは、企業と大学が連携を強化して、協同で若者を育成しなければ、若年者の働く場は喪失されてしまう。そこで大事なのはインターシップの実質化で、それがまた「役割分担」ではない「協同・連携」の実体となるだろう。
「協同・連携」のもう一つの形として、大学自らが雇用創出機能を担うことも重要である。これからは、スモールビジネスでの起業、NPOでの就業支援などを大学が主体的に行うことが求められる時代であると考える。

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