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同床異夢のインターンシップ拡大

2014/04/30  タグ:  

角方正幸(リアセックキャリア総合研究所所長/「就業力の広場」責任者)

文科省(厚労省、経産省)は4月8日に「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」の一部改正を発表した。これは16年前に取りまとめたインターンシップに対する基本的考え方を、近年の社会環境の変化、大学教育への社会的要請を踏まえ見直したものである。
「産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業」においても今年度から「テーマB」としてインターンシップ事業の取組拡大が図られ、ここにきてインターンシップ拡大への期待が俄かに高まっている。

文科省・大学側のインターンシップへの期待

そこでまず、「基本的考え方」の今回改正されたポイントから、インターンシップ拡大への変化を見てみよう。

インターンシップの意義として、キャリア教育・専門教育を一層推進する観点が加わる。
中小企業の魅力発信として有益な取組。とりわけ企業にとってのメリットを考慮。
インターンシップ推進の望ましい在り方として、事前・事後教育等の機会を提供するなどサポート体制の強化を重要視。
インターンシップ教育の目的として、能動的な学修を促す学修プログラムとして有意義であることを追加。
インターンシップの学生評価について、企業の負担が過大にならないよう評価要素の共通化などに留意。
中長期インターンシップ、コーオプ教育インターンシップ、有給インターンシップ、海外インターンシップなど多様な形態のインターンシップを認める。
インターンシップに係る専門人材の育成・確保が必要と指摘。

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などが大きな変更点と言える。とりわけ重要なのはインターンシップに係る専門人材(インターンシップ・コーディネータ)の育成・確保(⑦)と多様なインターンシップを認めたこと(⑥)である。
このことは必然的に、従来の大学関係者(教員、職員、OBOG)からより広範な外部人材を巻き込むことになり、大学のマネジメント能力が問われることとなる。

企業側のインターンシップへの注目

一方、企業側のインターンシップに係る動向で気になるのが2016年卒以降を見据えた際の新たな取り組みである。
最近の企業業績の回復に伴い、新卒採用が活発化し、優秀な学生の奪い合いとなってきている。このような景況のなか、採用活動の後ろ倒しが本格的にスタートする。そこで、企業は新たな取り組みを検討していて、その一つとして「インターンシップの回数を増やす」がある。採用期間が短縮されるため、学生との接触手段としてインターンシップを強化したいという採用戦略である。特に大手企業を中心にこの傾向がみられる。
したがって、学生の受入れに協力的な企業が今までよりは増えるかもしれない。ただし、企業はあくまでも採用のため、インターンシップを通じて学生の選抜をしたいためである。また、現在インターンシップの最盛期は夏休みだが、後ろ倒しスケジュールでは採用面接と時期が重なるため、冬季インターンシップや春休みを利用したインターンシップなど、時期の変更も検討されているようだ。

すれ違う意図と目標

以上、大学側と企業側の動向をみると、インターンシップ拡大を標榜する点は同じであるものの、その意図するところと目標は大きく異なっている。したがって、インターンシップ拡大の声や期待はこれから確実に増大するものの、実現はそれほど簡単とは思えない。
そこで、鍵を握るのがインターンシップ・コーディネータという専門人材の発掘、育成というわけである。専門人材は、思惑の異なる企業と大学の狭間に立ち、実現可能な解を導くという重要な役割を担う。現実的にはNPOや非営利組織・団体が果たすかもしれない。

さらに、困難なことに大学側といっても教職員と学生とでは思惑が異なっている。いくら有益なインターンシッププログラムが開発されても、参加する学生にとって魅力的でない限り、その広がりは期待できない。つまり、学生・教職員・企業の3者を同時に満足させるような取組が今求められている。

以上の難題を解決するのは容易ではないが、一つの解はインターンシップの多様性であり、地域や大学の特性によって様々なパターンのインターンシップが生まれることであろう。
いずれにしても、今般のインターンシップ拡大の機運を無駄にしないことが望ましいのは言うまでもない。そのために、産学官・地域が協調して有効な地域インターンシップモデルを作り上げていくことだ。

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