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●緊急記事●「就業力」という言葉は消えるのか?

2012/02/13  タグ:  

角方正幸(リアセックキャリア総合研究所所長/「就業力の広場」責任者)

「大学生の就業力育成支援事業」が廃止となり、文部科学省の予算から「就業力」の言葉は消えた。では、大学教育の世界から、この言葉・概念はなくなってしまうのだろうか。

逆風下にある「就業力」

最近、ある大学からの講演依頼があった。FD(Faculty Development)で就職問題やこれに関連した授業方法などについて話してほしいというものだった。ただその際、就業力という言葉は極力使わないでほしいという。何故かと尋ねてみると、就業力は仕分けで廃止になった言葉なので……ということらしい。

仕分け人は、就業力という言葉を警戒――ゾンビのように形を変えて復活しないか!
仕分けられる官僚や大学側も、就業力という言葉に過敏――また仕分けられてはたまらない!
そしてもともと大学教員は、就業力という言葉にアレルギー反応――大学は専門学校ではない!

そんなわけで、今、大学関係者の間では「就業力」の響きが良くないらしい。
これはいささか行き過ぎではないか。

大学設置基準の改正で登場した言葉

文部科学省は平成23年度に大学設置基準を改正するにあたり、その理由を以下のように述べている。

(理由)
学生の資質能力に対する社会からの要請,学生の多様化に伴う卒業後の職業生活等への移行支援の必要性等を踏まえ,大学は,生涯を通じた持続的な就業力の育成を目指し,教育課程の内外を通じて社会的・職業的自立に向けた指導等に取り組むこと,また,そのための体制を整えることが必要である。
このような観点から,文部科学省において,別紙のとおり大学設置基準及び短期大学設置基準を改正するため,学校教育法第94条の規定に基づき,標記の諮問を行うものである。

第一 大学設置基準の改正
大学は,当該大学及び学部等の教育上の目的に応じ,学生が卒業後自らの資質を向上させ,社会的及び職業的自立を図るために必要な能力を,教育課程の実施及び厚生補導を通じて培うことができるよう,大学内の組織間の有機的な連携を図り,適切な体制を整えるものとすること。

この改正の狙いは、大学において学生の社会的及び職業的自立に向けた能力の育成を図ることで、その能力を「就業力」と呼んだわけである。
類似概念として、社会人基礎力、ジェネリックスキル、基礎力、(人間力、学士力)など複数の言葉が使われてきたものの、現行の大学設置基準の趣旨にはっきりと「就業力の育成」と定められていることに留意したい。

教育改革の方向性を示す重要なキーワード

「就業力」は、企業に雇用される意味で使われることの多い就職力よりも広い概念で、自営業やNPO、起業など幅広い進路を含んで使うことのできる言葉である。その育成は、今後とも大学にとって教育改革の方向性を示す重要なキーワードになるはずだ。とりわけ「幅広い職業人養成」を謳った大学群にとっては重要である。
言葉の定着は教育改革の定着にもつながる。この概念・言葉が敬遠されたり拒絶されたりすることなく、大学関係者の間で普通に使われるようになってほしいものだ。

 

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