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大学の就業力育成を担うのは「外部の人材」。ただし理由は消極的?
みなさんのご意見から

2012/02/16  タグ:  

現在いる教員の教育力を高めたり、職員の専門性を高めたり、あくまで「学内の人材」によって就業力育成に取り組んでいくのか。あるいは、「外部の人材」の活用を図るのか。原則としてどちらの立場をとるのがよいだろうか。
――という点についてみなさんのご意見を伺った。

「就業力育成に関する学長調査」をもとにした「大学の就業力育成を誰が担うか」についての記事はこちら。

「学長調査」とは異なる結果


みなさんのご意見はグラフのとおり、B「外部の人材」がやや多かった。
「就業力育成に関する学長調査」では、「現在いる教員の教育力の向上」を半数以上(57.5%)の大学が重要な対策とみなしていたのに対し、「民間企業経験のある教員の採用」を重要視する大学は23.7%、「外部専門機関へのアウトソーシング」は11.6%にとどまるなど、「就業力育成を担う人材については、極力自前で」という傾向が出ていたから、それとは異なる。

ただし、B「外部の人材」が選ばれた理由を見ると、積極的な意見は極めて少なかった。
「学内教職員だけでは、大学生の就業力を育成することは不可能」
「教職員の限られた枠の中で実施していくのは、偏った人材育成になりかねない」
このように、外部の人材が優れているからではなく、学内人材が劣っている(と言っては失礼だが……)から仕方ない、外部の人材のほうが「マシ」(これまた失礼だが……)という消極的なコメントが多かったのだ。

一方、A「学内の人材」への投票理由には、確信を持った強い調子の言葉が目についた。
「学内の人材が担うのが原則」
「まずはAをきちんと確立した上でBを実施すべき」
「特に全体のコーディネートは学内の人材が行うべき」

Bのご意見が多かったのは、「学内の人材やその言動を見ていると、就業力対策を担うのは難しい」という現場の判断が反映されたものと思われる。一方、前述した「学長調査」では、外部の専門家を活用すればそれだけコストがかさむという資金面の理由も、「人材自前主義」の数字を押し上げた可能性がある。このような理由で、異なる傾向が表れたのではないだろうか。

それぞれの理由

AB双方の投票について「その理由」の代表的なものを一つずつ紹介しておこう。

原則としてはA「学内の人材」の代表的な意見
「大学の就業力育成とは、大学の独自性そのものだと思うから。各大学の理念に基づき、輩出したい人物像を明確にし、責任を持つことが出来る教職員が直接学生に教育する。また地域や産業界から大学に求められることを教職員が情報共有していくことが重要である。外部講師はそこまでの責任を負えないので、もし活用するならばその範囲内で活用する。」(赤坂武道さん/北海学園大学就職部)

原則としてはB「外部の人材」の代表的な意見
「民間企業での経験が少ない学内教職員だけでは、大学生の就業力を育成することは不可能。大学生に直接携わる教職員の専門性を高めていくためにも、社会が求める人材を理解し、その能力育成に必要な方策を検討・実施していく必要を感じる。」
(中込寛さん/神奈川工科大学 学生支援本部教務担当(就業力育成支援担当))

単なる「出口問題」ではない就業力育成

「大学の就業力育成とは、大学の独自性そのもの」とした上記の赤坂さんのコメントのほかにも、就業力育成は大学の本質に迫る問題と認識する意見が目立った。

「教職員の意識の変化、業務内容や評価制度の見直しなども必要」
「(就業力育成への対応を)誤ると大学機関自体の特色・特徴が薄れ、目的意識を持った学生をきちんと確保(入学)出来なくなる」
「私立大学は、建学の精神に基づいて人材を育成するため、就業力(社会が必要としている能力)と各学部学科の学問(専門性)を統合的に育成することが求められている」

これらのコメントからは、大学関係者の間に「就業力育成は就職(内定)率向上策や就職活動支援よりも大きな取り組みで、それぞれの大学のアイデンティティにかかわるものだ」という意識が広がっていることが、確かに感じ取れる。

「大学の就業力育成を誰が担うか?」という問いは、単に「業務の振り分け」で済む話ではない。「教員の教育力向上」「職員の専門性向上」など人材育成(この場合の「人材」は、学生ではなく教職員を指している)、広く言えば大学の人事制度改革に取り組まなければならない。
問題の一つに、教職員の流動性の低さがある。教員も職員も、民間企業で働いた経験がない、あるいはキャリアのごく初期にほんの数年、ということが多い。そのため、社会の状況に疎い「大学人」となり、産業界のニーズを吸収するためには消極的ながら外部人材に頼らざるを得なくなっている。民間企業と大学との間を行き来するキャリアが一般的になり、「学内か、外部か」という問い自体がもはや無意味という状態が、望ましいのではないだろうか。 

角方正幸(リアセックキャリア総合研究所所長/「就業力の広場」責任者)

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