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学ぶと働くをつなぐ授業拝見[企業編]株式会社オリエンタルランド
(株)オリエンタルランド準社員(アルバイト)向け「OLCキャリア・カレッジ/カレッジプログラム」
2019/10/08 タグ: 事例紹介, 学ぶと働くをつなぐ授業拝見
株式会社オリエンタルランドの準社員(アルバイト)向け「OLCキャリア・カレッジ」では、登録メンバー向けに6か月の「カレッジプログラム」を提供している。その主要プログラムである主体性向上ワークショップは、「タクナル」をベースとし、ジェネリックスキル伸長の成果は「PROG」で測定・評価している。大学生向けとして始まった「タクナル」「PROG」は、企業でどのように活用されているのだろうか。
準社員(アルバイト・パート)対象の「キャリア・カレッジ」
株式会社オリエンタルランドの準社員(アルバイト・パート)向けキャリア支援策として2018年10月にスタートした「OLCキャリア・カレッジ」では、登録メンバー向けに6か月の「カレッジプログラム」を提供している。受講資格は5段階ある社内グレードの3段階以上で、在職5~8年の受講者が多い。会社の補助があるため受講料は格安だが、プライベートの時間を割く自由参加のプログラムで、受講意欲は高い。2018年10月からの1期生は65人。現在、2期生50人が受講中だ。
カレッジプログラムの冒頭では、社会人基礎力アセスメントPROGを受検。その事前分析をもとにメンターのアドバイスを受け、「PROGの強化書」、パークの準社員から社員になったロールモデルを紹介する副読本「キャリアBOOK」なども参考にしながら、自分の強みを把握し、伸ばす力と伸ばし方のプランを考える。ロジカルシンキング、自己表現、課題解決など、リテラシーを上げるビジネススキル学習(オープンプログラム)や外部公開講座を受講するメンバーもいる。
メインのグループ演習(ケースメソッドPBL)で使用する教材「タクナル」の名称は「学びたくなる」「問題解決したくなる」などからきており、「主体性向上ワークショップ」らしさを見せている。通常版は大学の授業15回分だが、OLCキャリア・カレッジでは、5時間×3回の「3Days版」にカスタマイズして実施している。「さまざまなダイエット法を紹介する」「住む街をすすめる」など、正解のない課題について、アウトプットまでの協働を複数回体験することで、ディスカッション力、情報収集力、情報分析力をつけるプログラムとなっている。
次に取り組む「タクナル実践編」は個人プロジェクトだ。「『ホスピタリティ』に優れている企業を調べて紹介する」「SV(スーパーバイザー)3人にインタビューを行う」などの自分のキャリアを考えるためのテーマ(チャレンジカード)が用意されており、くじ引きで決まったテーマを、準備回から発表回までの4週間、バディでアドバイスしあいながら各自実践する。
人事本部キャストディベロップメント部の天野明朗氏は、プログラムの成果について「『人生100年時代における人生計画』のカードを引いたメンバーは19歳ですが、『これからは100年生きるんだから、キャリアも1回こっきりでなく、いろんな経験をしていかなくてはいけない。また世の中の変化に合わせて常に新しいことを学ぶことが大切』という素晴らしい発表でした」という例を挙げた。
6か月のメンバー期間終了後は、現場で自分なりに課題感をもって取り組み、1年ほど経ったら振り返りをする仕組みとなっている。
職場で得にくい成長機会をワークショップで設定
準社員個人の成長支援という「OLCキャリア・カレッジ」のコンセプトが固まってからも、プログラムを具体的に決めるのは容易ではなかった。企画に携わった天野氏が「PROG」にヒントを見出したのは2017年春ごろのことだ。
「PROGコンピテンシーの3つの基礎力『対課題』『対自己』『対人』が、オリエンタルランドが求める人財像として掲げる『より良く』『やり切る』『一丸となって』の3つにちょうど対応していると思いました」。個人の基礎力向上に取り組めば、組織の求める人財像に近づき、組織力の強化につながるという道筋が見えてきたのだ。「パークで働く準社員は、対人基礎力は高いだろうな、対課題は少し強化が必要かもしれないな、といったイメージも湧きました」。
2017年7月、PROGを試験的に導入、約150名の準社員(希望者)が受検した。その結果、統率力はやや弱いが、対人・対自己の基礎力は全般的に高く、対課題基礎力の中では実践力が強いといった傾向が確認できた。
「親和力、協働力、実践力や対自己基礎力はパークで働きながら育成されたが、正社員の指示に従って働く性質上、準社員は自ら課題に取り組む機会が少ないため、対課題基礎力が弱い、と分析しました。また、リーダーシップ的なものを発揮する機会も少ないので、統率力もやや弱い。従来の社員登用の選考でも、『一段高い視点が弱い』『対課題の意識が低い』などの指摘がありましたが、PROGによって課題がいっそう明確になりました」(天野氏)。
個人のキャリア支援を考えても、あるいは社員登用という観点でも、対課題基礎力と統率力が、強化したいポイントに定まり、それに沿って「タクナル」導入・カスタマイズへと進んでいった。
「『タクナル』というプログラムを使うことで、課題に主体的に取り組んだり、交代でグループワークのリーダーになってみんなをまとめたり、現場では得にくい機会を作れるのが、カレッジの意義として大きいと思います」(天野氏)。
現場で得られた親和力、協働力、実践力がカレッジ参加でさらに伸長
PROGスコアの伸長からプログラムの効果を考察した(メンバー期間終了後のPROG受検は希望者のみなので、サンプル数は限られる)。
リテラシーのグラフからはまず、伸長した項目が多く、伸長度もかなり大きいことが分かる。現場の実務より「学び(大学でいえば講義・研究・リサーチ)の充実」で身につきやすい力なので、職場を離れたカレッジ受講の効果が顕著と考えられる。
コンピテンシーでは、親和力、協働力、課題発見力、実践力の各中分類が伸長。「他者と協働して課題に対処する経験」(大学でいえばインターンシップなどの体験型学習)で伸長する力であり、カレッジでの学びをきっかけに日常の現場での経験が「学び」として自覚されたことが、能力伸長につながったと推測できる。
最も大きく伸びたコンピテンシー小分類は役割理解連携行動だった。グループワークで「職場とは違う役割を担う」ことの効果があったのではないか。
リテラシーの中で情報収集力、情報分析力の伸びが特に大きい。コンピテンシーでも小分類の情報収集、本質理解は伸びている。この2つを考え合わせると、情報を取り入れる(いわばインプットの)力は伸びたが、それを活用してアウトプットし、課題解決するような実践的な力を伸ばすには、現場との接続が課題と考えられる。
この結果について天野氏は「もともとパークで働くことで身についている力が、キャリア・カレッジで学ぶことでさらに伸びたと評価しています。ただ、これは『タクナル』などのプログラムだけの効果とは考えていません。成長実感を得て意識が高まったことで、日常の仕事の中で基礎力が伸長したと考えられます」と言う。受講者アンケートにも成長実感と意識の高まりを示すコメントが多数見られるという。
“「内容」そのものよりも、タクナル5回を通じて、カレッジでの学びを通じて、そして今回の調査を通じて、大切だと思うことに気付けたことで、そのことを、たくさんの人に伝えたいと思い、苦手だった発表も、楽しんですることができました。マインドって、こんなにも関わる人や環境で変わっていくんですね。”
“興味を持てる内容だったので。仕事に活かせることが、たくさん見つかったので。時間的に厳しい面はありましたが、なかなか共有できない場での経験は、とても価値があるのものだと実感しています。”
といったものだ。
「ここでの半年間で、基礎力というものを知り、自分でそれを伸ばしたいと意識したこと、現場にはもともと、協働して働きたい、よりよく協働したいという文化があり、改めてそれを意識したことが、能力の伸長につながったのではないかと思います」(天野氏)。