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大学におけるジェネリックスキル育成の事例

「第2回 キャリアの広場LIVE」実施レポート Vol.2

2021/01/20  タグ: ,  

当リアセック「キャリアの広場」編集部では、2020年12月21日、オンラインセミナー「キャリアの広場LIVE 第2回」を実施した。好評を得た第1回(8月開催)に続き、従来のweb上の記事企画を、Zoomによるウェビナーでライブ講座にし、Q & A 機能で参加者からの質問を受ける双方向型オンラインセミナーで、全国から50名以上のご参加をいただいた。

本セミナーのレポート[Vol.1]では

卒業生調査から見るコンピテンシー開発の必要性
キャリアの広場編集部 編集長 角方正幸

を紹介した。引き続きこの[Vol.2]では、以下の2つの講演を紹介する。

3年次必修PBL科目『企画表現演習5』における汎用的能力の育成
明星大学 デザイン学部 准教授 池谷 聡 氏
学科間の交流を促進するオンライン型 大学生活スタートアッププログラム
実践女子大学・実践女子大学短期大学部
学生総合支援センターキャリア・生活支援課 係長 中山 尚人 氏

Q & A 機能で参加者からの質問を受け付けた

■ジェネリックスキルを育成するPBL科目、明星大学「企画表現演習5」

当「キャリアの広場」の連載記事「学ぶと働くをつなぐ授業拝見」は、ジェネリックスキル育成に成果を上げている「授業」を紹介するもので、その中でも読者の関心を集めたのが、2019年5月に掲載したClip Number 006「明星大学デザイン学部3年次必修科目『企画表現演習5』」だ。

 必修授業でのPBLであり、全体的に基礎力の成長が確認できる

 授業内でさまざまな仕掛けを施して、意図的に能力開発を実現している

 同一内容の授業を複数の教員によって複数クラスで同時に行っている

などが、読者・セミナー参加者、とりわけ大学におけるジェネリック育成にかかわる方には、非常に参考になる点だろう。

セミナーでは、この授業を含む「企画表現演習1~6」全体のカリキュラムコーディネートを行う池谷聡准教授に、科目概要、学習成果、成果を高めた要因と課題を中心に解説いただいた。なお、データや事例は「授業拝見」にも掲載した2018年度の授業に基づいている。

■DP「統合力」「コミュニケーション力」を育成する授業設計

「企画表現演習5」は、地域からの依頼内容に基づいた企画提案を、コース横断型のグループワークによって行うPBL型の科目で、デザイン学科3年次前期の必修科目である。明星大学デザイン学部のディプロマポリシーのうち、主に統合力(DP6)、コミュニケーション力(DP9)を育成する科目と位置づけられている。


小写真上:明星大学池谷聡准教授/小写真下:リアセック酒井(モデレーター)

授業前の時期・授業後の時期のPROGスコアを見ると、ジェネリックスキル(コンピテンシー)が全体に伸長予測を大きく上回って伸長している。特に「対人基礎力」の伸長はPBL型授業の成果と推測できるという。また、対人基礎力の中でも大きく伸びているのが「協働力」だが、これはディプロマポリシー「コミュニケーション力」の育成に軸足をおいて設計した授業の狙いが、成果として表れていると説明された。

 

授業の流れとしては、半期(4月~7月)をかけて企画アイデアをブラッシュアップしていき、最終的にはプレゼンツールや模型を用いて学外に向けて発表するが、15回の授業のうち、3回、7回、10回に、中間的なプレゼンが設定されている。プレゼンの機会があることで、「だいたい分かってきた」ことを「人に説明するレベルでしっかりとまとめる」ことを学生に促し、問題に対する理解や認識を深め、プロジェクトが前に進むようにする仕掛けだ。

池谷准教授は、科目の特徴として以下の5つを挙げた。

1)PBL型授業

このうち「グループは最初から最後まで固定」は、解決すべき課題がある一方で、グループのメンバーは選べない・変えられない、という、たとえ苦手な相手であってもコミュニケーションをとらざるを得ない状況を作り出す授業設計だ。
「社会で求められるジェネリックスキルとしての協働力は、協働して何かを成し遂げていく力のことです。ですから、この授業で育成しようとする力は、学生が持っているコミュニケーション力に対するイメージ、例えば、誰とでもすぐに仲良くなる力とはまったく違います」と池谷准教授は説明する。

2)リアルな社会課題がテーマ


2018年度にクライアントの日野市から与えられたテーマ。クラスごとにA~Dを割り当てた

3)企画の実現が目標
課題を解決する具体的なデザイン企画を、コンセプトにとどまらず、完成度の高い試作まで行う。その企画には教員が「容赦ないダメ出し」を行い、最終的に、クライアントに採用された企画のみが実現する。


2018年度の授業で採用され実現したのは、20プランのうち4案。
写真はその1つ、日野市産ワインのパッケージ・ラベルデザイン

4)学生主導で進めさせる仕掛け
教員は、企画そのものについては厳しい水準のフィードバックをする一方で、プロセスについては基本的に介入しない。


2018年度の授業で活用したスライドより

5)発表イベントの大規模開催


学生からのプレゼン、企画説明ポスターセッション、資料・模型などの展示からなる
大規模な最終発表会が行われる。写真は2016年度の会場の様子

最終発表会は、外部にもあらかじめ告知し、公開するので、最も厳格な納期となる。また、ポスターやプレゼンシナリオの一言一句に至るまで、ここでも厳しいフィードバックが行われる。

■コミュニケーション力を中心に高い学習成果

この授業の学習成果を測定するにあたっては、行動目標に到達するための学習要素、さらに具体的な取組内容があらかじめ設定され、それぞれ下表のような成果が明確になっている。授業指導やチーム・個人の成績評価も、この設定に基づいて行われているという。

学生への授業アンケートでも、コミュニケーション力の向上に関連したフリーコメントが50%以上の学生にみられるなど、特にコミュニケーション力育成への好影響が見て取れるとのことだ。

また、先に示したPROGスコアで示した汎用的能力の伸長に関して、ディプロマポリシーと関連付けて池谷准教授がまとめなおした下の図表からは、

 統合力(DP6)は期待したほど伸びていない

 コミュニケーション力(DP9)は、情報共有、役割理解、多様性理解などの項目を中心に大きく伸びている

 工夫する力(DP3)の中で、自己効力感・楽観性が大きく伸びており、対自己基礎力も伸長していることが分かる

などの成果が見えてくるだろう。

■成果を高めた3つの要因・今後の4つの課題

ここまでに説明された「成果を高めた要因」「課題」をまとめると、以下のようになる。

 

最後に池谷准教授は、これらを踏まえた新たな取組として3項目を挙げた。

 必修科目にPBL型授業を追加
→ 2020年度より、2年次前期に

 基礎力の更なる強化
→ 協働力だけでなく、問題解決力もPBLで伸ばすことを意図

 反転授業への挑戦
→ コロナ対応で遠隔授業用に作成したテキスト・映像教材を活用

■当日の質疑応答(Q & A)

時間の許す範囲でいくつかの質問にお答えいただいた。

Q. 4回のプレゼンそれぞれの聞き手はどのような人ですか。
A. リサーチプレゼンは、クライアントが加わるケースもありますが、クラスの担当の教員だけのことが多いです。プレゼンを行うこと自体で「説明しなければならない」緊張感を高める目的は達成できるからです。
Q. 「授業拝見」でもフィードバックの厳しさに触れていますが、その観点や基準はどのようなものでしょうか。
A. 授業の前半では、クライアントが本当に悩んでいることは何なのかを深掘りさせるようなフィードバックが中心です。
例えば「地域の広報サイトが活用されていない」という課題に対して学生が「動画コンテンツを追加する」という企画を出してきたとします。実はこれだけでは課題解決になりません。おそらくクライアントも、動画があれば閲覧数は伸びるだろう、やりたい、と思っているからです。ですから、教員が「ではなぜ今、動画がないのか?」とフィードバックし、深掘りさせることで、「予算がない」「作り方が分からない」といった生々しいところが出てきて、それに応える観点でデザイン企画をブラッシュアップしていくことになります。
最終的にはクライアントがそれを「やりたいかどうか」が基準になるので、実現性など、仕事で実際に企画を進めるのと同じような基準になっていきます。
Q. 2020年コロナ禍において、従来と同じように進められているのでしょうか。
A. 2020年度は、基本的にはすべてzoomで行いました。
従来どおりマイルストーンを設定して中間プレゼンもzoomで行いましたが、場の雰囲気が変わらないので、やや緊張感のないものにはなりました。その代わり、グループミーティングの議事録に対する質問をていねいにすることで、学生たちが授業外での活動をしなければという気持ちを強く喚起しました。
最終発表会も、例年の開催形式は難しかったので、zoom上で学生がプレゼンした映像をネットで配信し、ポスターセッションの代わりにホームページを立ち上げて、そこに成果物を掲載する形にしました。
Q. 学生にとって負荷の高い授業だと思いますが、脱落対策で工夫されていることはありますか。
A. 授業には来るけれどもうまく活動に入れない学生については、まずグループのメンバー内での解決を促します。すぐに教員が介入すると、授業の目的の一つである「社会で求められるコミュニケーション力をつける」機会を奪いかねないからです。授業も後半(第10回あたり)になっても折り合わないケースで、教員が介入し、その学生をグループから外して個人で活動させた例はあります。
問題なのは、グループの活動に参加してはいるが、漂っているような学生です。そのようなかかわり方をダメとも言えないので、見過ごしてしまっている実態があり、悩んでいるところです。
また、そもそも授業に出てこない学生についても、できるだけグループのメンバーから働きかけさせますが、それで効果がない学生には、明確な対策がないのが正直なところです。

■実践女子大学・実践女子大学短期大学部「大学生活スタートアッププログラム」

当「キャリアの広場」では、”with COVID-19” を前提とした各大学の取組事例を狭義の「授業」に限らず紹介し、情報共有を進める趣旨で「コロナ禍の授業拝見」の連載を開始した。その第1回として2020年11月に掲載したのがClip Number 001「実践女子大学1年次『学生生活スタートアップワークショップ』」だ。

 オンライン上で学生同士のつながりを作り出した

 一過性ではない継続的な関係構築を意図して、学内コミュニティへの参加を促した

 レクリエーションではなく学びのあるセミナーとした

など、コロナ禍において学生同士の関係性の希薄さが課題となる中、参考にしていただけることが多いだろう。
この日3つめの講演では、このワークショップを企画・運営した、同大学学生総合支援センターの中山尚人氏に、企画の背景や事後の学生の反応などを含めてお話しいただいた。

■新入生の孤独感を拭い、大学生活への期待感を高めるプログラム

実践女子大学は、短期大学部を含む全学部の1年次学生を対象に「学生生活スタートアップワークショップ」を企画、2020年9月にオンラインで実施した。そのきっかけとなった思いは、「一過性で終わることなく、今後につながる友人づくり、コミュニティへの参加ができる企画を新入生に届けたい」というものだった。


小写真上:実践女子大学中山尚人氏

当初は、効果がより高いと考えられる対面形式での実施を考えていたが、新型コロナウィルス感染症拡大防止の観点から、zoomによるライブ配信形式を選択。学部・学科ごとに7回に分け、9月中旬に4日にわたって実施した。
企画・運営は(株)リアセックと共同で行い、メイン講師・アシスタント講師の2名体制の講師は、各回ともリアセックのキャリアコンサルタントが務めた。

第1部「メイン講座」は、zoomのブレークアウトセッションを利用した「自己紹介」「ソーシャルスタイルチェック」「協力ゲーム」の3つのグループワークを主体に90分間。第2部「サークル紹介」(55分間)は別途3つのzoomミーティングルームを設け、グループごとに順次訪れる方法で行われた。

 
第1部のうち、「ソーシャルスタイルチェック」「協力ゲーム」の画面イメージ

■2部構成の狙いと、4つの工夫

中山氏は第1部・第2部それぞれの狙いについて、「第1部は横のつながりづくり。第2部は学内コミュニティへの参加」と言う。

新学期から登校する機会も少なく、友達づくりのできないまま「個」として孤立していた1年次の学生たちを、チームビルディングを通じて、ある程度の集団にすることが第1部の主眼となる。「平たく言うと、お友だちになってほしいということ」(中山氏)。
第2部は先輩学生との交流が用意されているが、仮に第1部なしに第2部の内容のみを実施すると、図の左側のように1人では踏み出せない1年生が多くいることが想定された。そのため、図の右側のように第1部で形成された集団でコミュニティに飛び込んで行ってもらおうと考えた。

実施にあたって工夫したことは以下の4つだった。

■成果と2021年度に向けての計画

対象学生の12.5%という参加率が想定を下回った点に課題は残ったが、学生アンケートで「大変満足」+「満足」が87%、大学で話ができる友人が「増えたと思う」が61%と、参加学生からは高い評価が得られた。また、フリーコメントから見ても「まずは友だちづくり」という目的はある程度達成したと言えそうだ。

不参加の学生にもアンケートを行ったところ、「オンラインでの開催に魅力を感じなかった」という不参加理由が一定数あり、また約6割が希望の開催形式を「対面型」と回答した。このことから、コロナ禍の有無にかかわらず、対面でのスタートアップイベントを行う意義はあるのではと感じている。

これらを踏まえ、2021年度の実施に関しては、プログラムの大きな変更は考えていないものの、以下のような改善点を想定している。

新型コロナウィルス感染症拡大の状況を見ながらではあるが、よりニーズに応え、より効果のある方法で実施できればと考えて準備中である。

■当日の質疑応答(Q & A)

Q. リアセックに業務委託したとのことですが、大学側との役割分担はどのようなものでしたか。
A. 第1部については内容の企画から当日の運営まで、ほとんどリアセックに委託しています。第2部に入るところからは、各グループのファシリテーションなども含め、大学職員が行いました。ただ、そのように切り分けはしましたが、お互いに打合せを重ねて意見交換をし、2部構成のそれぞれを改善していきました。
Q. 新入生同士の横のつながりだけでなく、学内コミュニティへの参加までを企画に組み込んだのは、どのような思いからだったのでしょうか。
A. 本学では課外活動も学生にとって重要な成長の場だと捉えています。学生生活の充実にも自身の成長にもつなげてもらいたいという思いで、あくまで学内コミュニティの1つではありますが、サークルへの参加に少しでもつながる機会を作れればという考えがありました。サークル団体側の学生から、コロナ禍で思うように新入生の獲得ができていないといった声もあり、第2部の企画としました。

■第2回「キャリアの広場LIVE」を終えて

第1回に続き、このコロナ禍においても、ジェネリックスキル育成やキャリアサポートに腐心されている皆様のご参考になる2つの事例をお届けした。第3回以降の開催に向けて、皆様のご意見ご希望などをお寄せいただきたい。

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